ERC2019/09/29

アル-アッティーヤ、ERCキプロス初日をリード

(c)ERC

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 ヨーロッパ・ラリー選手権(ERC)第7戦キプロス・ラリーは28日に初日を迎え、カタール出身のナッサー・アル-アッティーヤ(フォルクスワーゲン・ポロGTI R5)が6つのスペシャルステージのうち5つのステージでベストタイムを奪い、2位で続くロシアのアレクセイ・ルクヤヌク(シトロエンC3 R5)に25.4秒差を築いている。

 15回目の中東ラリー選手権チャンピオンという偉大な記録をめざすアル-アッティーヤは、慎重なペースで走りきることを目指すのではないかという予想は土曜日の朝に行われたオープニングSSから裏切られることになった。

 これまでにキプロス・ラリーで5度の優勝を経験している彼は、SS1ポリティコでベストタイムを奪ってスタート、さらに23.23kmというラリー最長となるSS2のレフカラでもルクヤヌクに15秒差をつける圧倒的なタイムを叩き出し、昨年のERCチャンピオンに早くも20.3秒をリードすることになった。

「僕らは死にものぐるいでプッシュしていたよ。リヤタイヤを見たらわかるだろう、完全に終わっているだろうからね。しかし、プッシュすることはそう簡単ではない。道はラフで長く、それを走り切って良いステージにしなければならないからね」とアル-アッティーヤはステージエンドで語った。

 アル-アッティーヤは大きなリードを築いたにもかかわらず、SS3のフィニッシュ近くではギヤシフトに問題を抱え、恐怖を味わうことになった。「残り1km地点で、ギヤボックスのリンケージのピンが落ちたんだ。僕らはサンプガードに落ちたピンを見つけて、それで修理できたのは幸運だった。本当に幸運だったよ」

 それでも彼はこのステージでもベストタイムを奪い、2位で続くルクヤヌクに26秒差をつけて朝のループを終えることになった。

 ルクヤヌクのペースはアル-アッティーヤに及ばなかったが、昨年のキプロス・ラリー勝者であるサイモス・ガラタリオティス(シュコダ・ファビアR5)に55.5秒差をつけており、さらに「セーフティな戦略」を続ける選手権リーダーのクリス・イングラム(シュコダ・ファビアR5)はさらに16秒後方となっており、選手権の逆転を目指す彼のターゲットはここまでのところ順調に推移している。

 朝のループでハイペースをみせてリードを広げたアル-アッティーヤだが、SS4では0.6秒差でベストタイムを並べるも、長いレフカラの2回目の走行となるSS5では荒れて石が転がる路面コンディションを前にして少しペースを落としてクレバーな走りを続けることになる。

 彼はこのステージではルクヤヌクに2.8秒差でベストタイムを譲ったものの、最後の3.52kmの短いニコシア・スーパーSSではこの日5つめのベストタイムを奪い、ルクヤヌクに25.4秒差をつけて初日を終えることになった。

「今日は良い一日になった。SS5は本当にハードだった。コンディションが非常にタフだったため、僕らはリスクを冒すことなく、適切な速度を守ることになった。ルクヤヌクにはここでは負けたが、良いリードを築いて初日をゴールできたので満足しているよ」とアル-アッティーヤは語っている。

 ルクヤヌクのビハインドは午後のループでは25.4秒差までわずかに減ったが、依然として首位との差は大きいものだ。しかし、彼はERC王者のチャンピオンシップのディフェンスをしっかりと念頭に置いており、ラフなセクションではかなりペースを落としたと強調した。「アル-アッティーヤとのトップ争いは重要ではなく、ここまでは戦略通りに行っている」とルクヤヌクは満足そうに一日をふり返った。3位で続くガラタリオティスとの差は1分45.7秒と大きく広がっている。

 ガラタリオティスは午後のループが荒れることを承知でスペアタイヤ1本のみを搭載するというギャンブルを敢行、上位勢とのタイムは広がってしまったものの、ピタリと背後に続いていたイングラムとの差を24.2秒へと広げてみせた。

 選手権のリードを守るためにクラウドファンドを募ってキプロスへの参戦を実現させたイングラムは初日を4位でフィニッシュ、「午後のループも同じ戦略で走った。もっと速く行けることはわかっているが、マシンとタイヤを守ることが目的だった。でも、明日はもっとプッシュしてみるよ」と、ここまでの戦いが計画どおりに行っていると語っているが、彼の後方9.4秒差には選手権3位につけるウーカシュ・ハバイ(シュコダ・ファビアR5)が迫っている。

 MMスポーツのフォード・フィエスタR5を駆って参戦した元WRCドライバーのミッコ・ヒルボネンは、SS2を4番手タイムでスタートしたが、レフカラの長いステージでのパンクを警戒してペースを落としたが、それでもハバイからは14秒差の6位で続いており、現役のドライバーに引けを取らない印象的なペースをみせている。

 また、ペトロス・パンテリ(三菱ランサーエボリューション)がERC2のプロダクションカテゴリーをリードし、ERC3はすでに前戦でERC3ジュニアの王座を決めているラリー・チーム・スペインのエフレン・ヤレナ(プジョー208 R2)がリードを築いている。