WRC2020/08/24

タナク、WRC前哨戦の南エストニア・ラリーで圧勝

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 8月22-23日にエストニアで行われたロウナ・エースティ・ラリー(南エストニア・ラリー)においてオイット・タナク(ヒュンダイi20クーペWRC)が8ステージのうち7ステージを奪って圧勝を飾り、2週間後に行われるラリー・エストニアを前にしてライバルたちに「タナク本命」を強く印象付けた。

 ロウナ・エースティ・ラリーはエストニア選手権の一戦として9年の歴史をもち、毎年100台近いエントラントを集める盛大なイベントだが、今回ばかりは雰囲気はいつもとはまったく異なったものだっただろう。世界ラリー選手権のシーズン再開イベントとして9月4-6日に開催されるラリー・エストニアのためにWRCのレギュラーメンバー7人が特徴的な高速グラベルステージの偵察のために参戦しており、まさしくWRCのための前哨戦としての興奮と緊張に包まれることになった。

 ロウナ・エースティ・ラリーはコロナウイルスの影響によって土曜日のアイテナリーがキャンセルされてシェイクダウンへと変更され、日曜日のワンデーイベントとして8SS/101.50kmで行われることになった。

 朝からの雨でモーニングループの多くのステージがウェットコンディションとなり、大きなわだちと水たまりが残ったオープニングステージを走りきったタナクは「道が柔らかすぎる」と不満を漏らしながもベストタイムで発進、カッレ・ロヴァンペラ(トヨタ・ヤリスWRC)が1.8秒差の2番手タイムで続くことになった。

 タナクはさらにSS2からSS4まで連続してベストタイムを奪って朝のループを完璧な走りでまとめたが、同じく4ステージ連続して2番手タイムを並べたロヴァンペラが7.5秒差の2位で続く展開だ。

 3位には前日のシェイクダウンでトップタイムを奪ってステージをコースオープナーとして走るセバスチャン・オジエ(トヨタ・ヤリスWRC)が16.2秒差の3番手で続き、さらにエルフィン・エヴァンス(トヨタ・ヤリスWRC)がチームメイトの2秒背後にぴたりと続いている。ティエリー・ヌーヴィル(ヒュンダイi20クーペWRC)はわだちとともに速さにマッチしていないペースノートに手こずって20.9秒差の5位と苦しいスタートだ。

 トップ6がリバースの走行ポジションでスタートした午後のループは、エヴァンスのひやりとさせるクラッシュで始まることになった。エヴァンスはSS5の9.96km地点の高速右コーナーのインをカットした際に切り株にヒットして横転しながらコースオフしてしまう。後続のオジエがエヴァンスのマシンを見なかったとコメントしたことで現場は緊張感に包まれるが、エヴァンスのマシンは数回転したあとコースサイドの森の中まで転がって大破していたが、幸いにもエヴァンスとコドライバーのスコット・マーチンにはケガがなかったと発表されている。
 
 このステージではタナクが5連続でのベストタイムを奪って、ロヴァンペラとの差を10.1秒差へと拡大してみせたが、続くSS6ではなんとロヴァンペラが初のベストタイムを奪い、タナクとの差を9.5秒へと縮めてみせた。

 しかし、タナクは残りのステージとなるSS7とSS8ではともにベストタイムを奪い、最終的にロヴァンペラとの差を13.7秒へと広げてフィニッシュすることになった。

「僕らはこれまで長い時間をかけてマシンのセットアップに取り組んできたが、今は僕らとマシンをさらに研ぎ澄ませる時がきたよ。素晴らしいイベントを開催した主催者に感謝したい。今までに出場したラリーの中で最も競争力のあるラリーだった」

 
 朝のループでは「かなりのアンダーステアに苦しんでいた」と語っていたロヴァンペラだが、サービスでセットアップを変えたあとはマシンもより自信をもってコントロールできたようだ。「良いテストイベントだった。(最終ステージではオジエに負けたため)すべてのステージで最速のトヨタではなかったので、少し残念だが、マシンの進歩は良かったよ」とロヴァンペラは語っている。

 オジエにとってはモーニングループを一番手のポジションで走ることは本番にむけた絶好のシミュレーションになったが、水分を含んで表面のグラベルが固く引きしまったコンディションでのソフトタイヤのグリップは彼の思いどおりのものではなく、さらに高速ステージでのペースノートに自信をもつことができなかったようだが、タナクに29秒差をつけられながらも、3位でのフィニッシュを迎えたオジエはリラックスした表情だった。「少し慎重になりすぎたスタートだったが、いい一日になった。2週間後に少しでも良いコンディションになることが重要だ。チャンピオンシップのトップ5がここにいたから、最高の準備になった」

 エヴァンスがリタイアしたため、ティエリー・ヌーヴィル(ヒュンダイi20クーペWRC)は4位でフィニッシュすることになった。しかし、デイサービスのあとのステージでウォーターポンプが作動しないトラブルに見舞われた彼は、ロードセクションで修理を行い、タイムコントロールに9分遅れていたことから1分30秒のペナルティが課され、最終的には5位でラリーを終えることになった。

「午後の最初のグループでトラブルに見舞われるなど、僕らにとってはチャレンジングな週末だった。一日中、いろいろなセッティングを試していたが、それはラリー・エストニアのためには良いことだったと思う。エストニアの道路は思っていたよりもずっと速かったよ」とヌーヴィルは語っている。

 4位でフィニッシュしたのは、エサペッカ・ラッピ(フォード・フィエスタWRC)。8月初旬にフィンランドで開催されたヤムサン・ラリーでラリー・メキシコ以来となるラリーに挑むはずだったが、プレテストでターボを壊し、今回が久しぶりのラリーとなった。Mスポーツ・フォードのファクトリーマシンではなく、ヤンプロ・レーシングのカスタマースペックのマシンだが、本番にむけたパーツのテストも行っている。

「本物のラリーでスピードを上げてみたことは、本当に大事なことだったと思う。今は(上位から)かなり遠いところにいるので、WRCでペースを見つけられたらいいなと思うよ。ファクトリーカーがあれば、もっと速くなるだろうしね」

 また、OTレーシングのゲオルク・グロス(フォード・フィエスタWRC)が総合6位、エストニア選手権ではタナクに続いて2位でのフィニッシュとなっている。

 Rally2/R5カテゴリーはヒュンダイ・モータースポーツNの二人による激しい優勝争いが最後まで続き、ヤリ・フットゥネンが最終パワーステージでセンセーショナルなパフォーマンスを披露してヒュンダイ・ジュニアドライバーのニコライ・グリアジン(ヒュンダイi20 R5)を逆転、3.3秒差で勝利を飾っている。

 3位にはエーリック・ピエタリネン(シュコダ・ファビアRally2)、4位にはオーレ・クリスチャン・ヴェイビー(ヒュンダイi20 R5)が続いている。

 また、プライベートチームのR5マシンでの参戦となったMスポーツ・フォードのテーム・スニネン(フォード・フィエスタR5)はオープニングSSでのパンクのあと、ジャンクションでエンジンパワーを失うトラブルにも見舞われたが、追い上げて6位となっている。