WRC2019/08/24

タナクがドイツをリードもヌーヴィルが2.8秒差

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 2019年世界ラリー選手権(WRC)第10戦ラリー・ドイッチュランドは金曜日を終えて、トヨタGAZOOレーシングWRTのオイット・タナク(トヨタ・ヤリスWRC)が首位に立っており、息詰まるバトルを演じたヒュンダイ・モータースポーツのティエリー・ヌーヴィル(ヒュンダイi20クーペWRC)が2.8秒差の2位に続いている。

 金曜日はモーゼル河畔のブドウ畑を中心とした昨年と同じ3つのステージで構成され、オープニングSSはシュタイン・ウント・ヴァイン(19.44km)に続いてミッテルモーゼル(22.00km)、ヴァーダーン〜ヴァイスキルヒェン(9.27km)の3ステージをボスタールゼーのデイサービスを挟んで2回ループする6SS/101.42kmの一日だ。

 雲一つない青空が広がったオープニングステージのSS2シュタイン・ウント・ヴァインで好スタートを切ったのはヌーヴィルだ。木曜日の夕方に行われたSS1でタナクに1秒差の4位と出遅れたヌーヴィルは、いきなりタナクに1.7秒差をつけるベストタイムを奪って首位に躍り出す。

 ストレートとタイトターンが連続するブドウ畑の迷路のようなこのステージをタナクは一番手で走行、まだダートがかきだされていないもっともクリーンなコンディションに恵まれていたにもかかわらず、グリップレベルが不安定だったと不満を述べたが、それはヌーヴィルも同様だった。ヌーヴィルはグリップが低かったものの、全開で攻めたことを認めた。「もちろん攻めたさ、このラリーは最初から最後までビッグプッシュになる。クルマが少しスライドしすぎるのとグリップが低いと感じたが、路面のコンディションはこんな感じなんだろうね」

 セバスチャン・オジエ(シトロエンC3 WRC)はアンダーステアの症状に悩まされてタイムが上がらず3番手タイム、クリス・ミーク(トヨタ・ヤリスWRC)が4番手、ヤリ-マティ・ラトバラ(トヨタ・ヤリスWRC)が5番手で続く。WRカーデビュー戦が注目される勝田貴元(トヨタ・ヤリスWRC)も3km地点のヘアピンでエンジンをストールさせながらも、そのあとは落ち着いた走りで13番手タイムで発進していった。

 SS3ミッテルモーゼルでベストタイムを奪ったのはタナク。ヌーヴィルを2.2秒上回った彼はここでふたたびラリーリーダーに立つことになった。さらにタナクはSS4ヴァーダーン〜ヴァイスキルヒェンでも連続してベストタイムを奪い、ヌーヴィルとの差を3.2秒に広げてみせる。

 オープニングSSで昨夜のリードを失ったタナクだったが、ヤリスにいくつかの変更を加えたことでリズムを掴みはじめているようだ。「セットアップを微修正してことで少し良くなった。リズムがよりスムーズになったし、2回目のループがもっとよくなることを期待しているよ」

 SS4のステージエンドに辿り着いたヌーヴィルはタナクのタイムを知り、自身が連続して2番手タイムにおわったことに気付くや首を横に振って失望感を露わにする。「さっきよりスピードを上げたんだが、どうしてなのかよく分からない・・・」

 オジエは3位で朝のループを終えたものの、すでにトップのタナクからは13.7秒遅れだ。バンピーで泥がかきだされているミッテルモーゼルのジャンクションでエンジンストール、ここだけで8.8秒を失った彼はSS4では3番手タイムを奪って3位を維持したものの、その表情は厳しい状況を物語っている。「何が問題なのかある程度掴んでいる。ただ僕たちがそれにどう対処すべきなのかはまったく掴めていない」

 彼の3.3秒後方には3ステージ連続して4番手タイムを刻んだ安定したペースをキープするミークが迫り、さらにその0.1秒後方にはSS3でラトバラを抜いたダニエル・ソルド(ヒュンダイi20クーペWRC)も追い上げてきた。

 朝のループではタナクがヌーヴィルを押さえて主導権を握るかにも見えたが、午後のループはヌーヴィルの反撃で始まることになった。シュタイン・ウント・ヴァインの2回目の走行となるSS5でもヌーヴィルはふたたびベストタイム、タナクとの差を1.6秒縮め、1.2秒差へと迫ってきた。「良いステージだった。マシンのフィーリングがかなり良かったので、このステージを楽しんだ。まだラリーの序盤だが、非常に速いリズムだ」

 だが、タナクはSS6ミッテルモーゼル、SS7ヴァーダーン〜ヴァイスキルヒェンで朝のループと同様に連続してベストタイムを並べ、その差を2.8秒差としてレグ1を首位で終えることになった。

 タナクは、ヌーヴィルと秒差のバトルをしているとは思えないほど汗ひとつかいてない表情で、非常にクリーンに走り切ることができたと初日をふりかえった。「もちろんかなり強くプッシュしたが、クレイジーなリスクなしで本当にクリーンに走ることができた。ティエリーとのビッグバトルは明日も続く。彼もいい走りをしているので大きな時間差を作るのは難しいが、朝からプッシュするつもりだ。もちろんミスすることなくクリーンに行くことが重要だ」

 ヌーヴィルはタナクを捕らえることはできなかったが、最終ステージでも0.2秒差という遜色のないタイムを出せたことに満足していると語った。「これ以上はできない走りだったから満足だよ。タナクに近づいたが、少しだけ彼のほうが早かったね。選手権を頭に入れて走らなければならないが、そのためには彼の前に出なければならない。多くの選択肢は残されてないが、このまま攻め続け、改善を目指す」

 オジエは、午後の最初のステージで「マシンバラスが悪く、ターンインさせるために苦労しているんだ。それでも素晴らしいとは言えないが、サービスでマシンは改善している」と語ったにもかかわらず、朝と同じくミッテルモーゼルのステージでジャンクションでミスしてストローベイルに激しく接触するなどじわじわと2人から引き離されてしまう。オジェはけっきょく、午後のループでは一度もトップ3のタイムを奪えず、3位を守ったものの、首位からは22.1秒の遅れとなってしまった。

 いっぽう、午後のループでミークを抜いて4位に浮上したソルドは、3位のオジエまで2.8秒差で迎えた最終ステージでギヤボックスのトラブルに見舞われてしまう。ジャンクションで1速にダウンシフトしたあとギヤがスタックしてしまった彼はハンドルを叩いて悔しがったが、50秒あまりを失って9位までポジションを落としてしまった。

 ソルドが後退したことでミークが金曜日を4位で終え、コースが汚れた最終ステージで2度もオフしそうになったラトバラがチームメイト2.2秒後方の5位、リズムに苦しんでいたアンドレアス・ミケルセン(ヒュンダイi20クーペWRC)が7位で続いている。

 木曜日のシェイクダウンではヌーヴィルと同タイムを出したエサペッカ・ラッピだが、期待に反してペースが上がらずにレグ1は7位となった。「昨年と同じスピードで行くことができないんだ」と頭をひねっていた彼は、SS5のスピンで抜かれることになった。

 初体験のブドウ畑のステージに慎重なスタートを切った勝田は、オープニングSSでは 1kmあたり2.2秒の遅れだったが、午後のループになると少しずつペースもアップ、SS6ではふたたびエンジンをストールさせるトラブルもあったが、最終的には 1kmあたり0.72秒の遅れまでペースを掴んで初日は11位となっている。

 Mスポーツ・フォードWRTのテーム・スニネン(フォード・フィエスタWRC)は金曜日の最初のステージで電気系トラブルのためマシンを止めることになった。彼はチームと無線でやりとりを行って、トラブルの原因となったパーツを突き止めることができたがスペアパーツを搭載していなかったためにリタイアとなってしまった。チームによれば、マシンはサービスに戻されたあとすぐに問題が解決できたため、スニネンは土曜日にリスタートできると発表している。

 明日土曜日はラリー最長の41.17kmのパンツァープラッテの2回の走行を含む157.92km/8SSのタフな1日となる。オープニングSSのフライゼンは現地時間8時9分(日本時間15時9分)のスタートとなっている。