WRC2021/02/28

タナクが首位キープ、ロヴァンペラが2位浮上

(c)Hyundai

(c)Toyota

(c)Hyundai

 2021年世界ラリー選手権(WRC)第2戦アークティック・ラリー・フィンランドは2日目を迎え、ヒュンダイ・モータースポーツのオイット・タナク(ヒュンダイi20クーペWRC)が首位をキープ、トヨタGAZOOレーシングWRTのカッレ・ロヴァンペラ(トヨタ・ヤリスWRC)が24.1秒差の2位で続いている。

 青空の朝を迎えたロヴァニエミ。8時の時点での気温は−4度とそれほど冷え込んだわけではなく、日中の気温も3度まで上昇するだろうと天気予報は伝えている。昨夜は小雪が舞ったとの情報もあったが、この日のオープニングステージとなったSS3ムスタランピ(24.43km)の路面には新雪が積もった様子はない。

 ここでベストタイムを奪って、この日も快調な走りをみせたのはラリーリーダーとして土曜日を迎えたタナクだ。しかし、彼が無敵な速さを見せたというわけではなく、16.2秒差の2位につけていたチームメイトのクレイグ・ブリーン(ヒュンダイi20クーペWRC)はワイドになってスノーバンクにオフ、トップから23.6秒差遅れとなってしまった。ブリーンはストップコントロールで昨日までとは違うナーバスな表情をみせることになった。「多くのミスがあった。いくつかのスノーバンクの中に入ってしまったし、その中で立ち往生しそうだった」

 3位につけるカッレ・ロヴァンペラ(トヨタ・ヤリスWRC)もセットアップ変更が裏目にでてしまつてペースが上がらず、タナクから5.7秒遅れの4番手タイム。首位のタナクから26.1秒もの遅れとなっただけでなく、4位のティエリー・ヌーヴィル(ヒュンダイi20クーペWRC)に4.7秒差に迫られてしまった。「あまり良くなかった。アンダーステアが多くて、正直言って思うようなペースで走ることができなかった」とロヴァンペラは不満そうに語る。しかし、ヌーヴィルもまた、タイムは良かったかに見えたが、「インカムシステムをいくつか変更したんだけど、うまくいかない。(ペースノートを)いくつか聞き間違えてしまったし、躊躇するところがあった」と少し苛立っているようだった。

 この週末でもっともハイスピードになると予想されたSS4カイワヴァーラ(19.91km)で速さをみせたのはトヨタ勢だ。平均速度130km/hオーバーのスピードで駆け抜けたエルフィン・エヴァンス(トヨタ・ヤリスWRC)がこの週末初めてヒュンダイの牙城を破ってベストタイムを獲得、2番手タイムのロヴァンペラがブリーンを抜いて首位のタナクに21.2秒差の2位に浮上することになり、それまで1-2態勢を築いてきたヒュンダイを切り崩すことに成功する。

 首位のタナクもここではヒヤリとした瞬間を経験した。15.4km地点の右コーナーでバンクに接触、弾かれた彼は雪煙で視界を失って連続する左コーナーのスノーバンクにつっこんでしまうが、幸運にもコースに復帰、「ワイパーが作動しなくて何も見えなかった!スノーバンクから外に出て良かったよ!」とステージエンドで笑顔をみせている。

 このステージで金曜からの連続ベストタイムの更新はストップしたタナクだが、何事もなかったかのようにSS5シーカカマ(27.68km)ではエヴァンスに0.1秒差の最速タイムを奪い、ロヴァンペラとの差を23.6秒に広げて朝のループをご機嫌で終えることになった。「ステージの前にいくつかの変更を行ったが、マシンの挙動はとても良かった。すべてのコーナーはブラインドだし、自信を持つのは難しいが、最高のステージの一つだったよ」

 2位のロヴァンペラは、高速右コーナーでワイドになってスノーバンクにリヤを激しくヒットしたことについて、「小さな瞬間はあった」と語ったが、マシンの左後部に残るはっきりとしたダメージが危うく難を逃れたことを物語っていた。「もっと改善しなければならない。速いステージでは速いが、テクニカルセクションではスピードが必要なんだ」とロヴァンペラはにこりともしないが、
3位のブリーンとの差は5.3秒差に広げている。

 ペースが上がらないブリーンの後方、5.3秒差にはヌーヴィルが迫ってきたが、彼の背後には2つのステージで連続して速さをみせたエヴァンスが2.6秒差で続いている。

 ヌーヴィルは雪に覆われたラリーの暖かいコンディションでのピレリの新しいウィンタータイヤのフィーリングはまずまずだったとしながらも、「ツイスティなステージでは、トヨタに対しても競争力があったが、高速ステージでは、トヨタから少し遅れてしまった。今日の午後に向けて、3つのステージすべてでペースを上げるためにいくつかの改善をしていきたい」と気を引きしめていた。また、新しいコドライバーのマルテイン・ウィダーゲとのコンビネーションに小さな不満が蓄積し始めているせいか、「ノートが聞き取りにくく、コーナーをイメージするためにペースを落とさなければならなかった」と少し苛立ちをみせていた。

 サービスをはさんだあと、ムスタランピ2回目の走行では、朝の1回目の走行ではヒュンダイ勢が1-4番手タイムを占めることになったが、ここでもヒュンダイ勢が速さをみせてタナクがベストタイム、ヌーヴィルが2番手タイムで続くことになった。

 1回目の走行のあと50台のマシンが走行したあとだけにコーナーのあちこちにグラベルが露出しており、多くのドライバーたちが早くも終盤ではスタッドへのダメージからグリップを失うことになったと嘆くことになったが、3位につけていたブリーンもその一人だ。「終盤にはすべてのスタッドを失った。なんとか速く走ろうとしたが、フロントタイヤを完全に殺してしまった」。ブリーンは総合順位でヌーヴィルに抜かれて4位に落ちてしまった。

 ロヴァンペラは3番手タイムでタナクとの差は25秒へと広がってしまったが、朝のステージで苦戦したハンドリングに満足しているとコメント、SS7カイワヴァーラでは初めてのベストタイムを奪ってタナクとの差は23.3秒へとわずかに縮まることになった。「たぶん他のドライバーは賢くて、タイヤをセーブしているんだろうね!」

 暗闇となった土曜日の最終ステージ、SS8シーカカマではロヴァンペラが予想したとおりに前ステージでタイヤをセーブ、フレッシュタイヤを1本残していたヌーヴィルが素晴らしい速さをみせてベストタイムを獲得、ロヴァンペラに1.8秒差まで迫ることになった。

「ティエリーはこのステージのために新しいタイヤを1本取っておいたので、タイヤの選択は正しかったと思う」とロヴァンペラは語った。「明日はプッシュして、何ができるか見なければならない」

 また、タナクもストレートが長い前ステージではあえてダメージのあるタイヤを使用し、ここではヌーヴィルに続く2番手タイム、ロヴァンペラに対して24.1秒という大きなリードをキープしたまま2日目を終えることになった。
「計画通りだ。タイヤはかなり摩耗しているので、ミス無しにここに辿り着くことが重要だった」とタナクは最終ステージを終えて語っている。

 土曜日を2位でスタートしたブリーンは首位からは53秒遅れとなってしまったが、ヌーヴィルから27.5秒差の4位をキープ、背後に迫ってきていたエヴァンスとの差を10.1秒へとわずかに広げている。

 この日もっともホットなバトルとなったのは6位争いだ。SS3の3番手タイムなどこの日も速さを発揮したオリヴァー・ソルベルグ(ヒュンダイi20クーペWRC)は、ワールドチャンピオンのセバスチャン・オジエ(トヨタ・ヤリスWRC)と激しいバトルを繰り広げていたが、SS7でオーバーシュートしてしまい、オジエに6位を譲ることになった。だが、この日の最終ステージでのオジエのミスによって再び逆転して6位でこの日を終えている。

 オジエは最後のコーナーで大きくはみ出してしまい、ステージ最後の左コーナーでラインを外してスノーバンクに激突、深い雪から脱出できずに20分近くを失い、総合22位まで後退してしまった。

 難しいコンディションのなかで堅実なペースをみせていた勝田貴元(トヨタ・ヤリスWRC)はSS8ではスノーバンクにはまってしまってポジションを落としたが、Mスポーツ・フォードのテーム・スニネン(フォード・フィエスタWRC)に7.6秒差をつけた7位でこの日を終えている。

 明日の最終レグは、ロヴァニエミの南にあるアイッタヤルヴィ・ステージの2回の走行、44.96kmが残されたのみとなっている。現地ではこの日のゴールを迎えたころから雪が降り始めており、明日のステージにもうっすらと新雪を積もらせているはずだ。