RallyCross2019/11/11

ティミー・ハンセン、悲願の世界RX王者獲得

(c)FIAWorldRallycross.com

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 FIA世界ラリークロス選手権の今季最終戦である南アフリカの世界RXがキラーニー・インターナショナル・レースウェイで行われ、チーム・ハンセンMJPのティミー・ハンセン(プジョー208 WRX)が史上もっとも拮抗したバトルを制して世界チャンピオンに輝いた。

 ティミー・ハンセンは決勝に進むにあたってノルウェーのアンドレアス・バッケルド(アウディS1)を2ポイントリードし、チームメイトでもある弟のケヴィン・ハンセン(プジョー208 WRX)に対しては11ポイントの差をつけていた。

 ファイナルでは素晴らしいスタートを切ったバッケルドがポールポジションのティミー・ハンセンをストレートでパス、首位で1コーナーをクリアし、まさしくタイトルを争う二人の一騎打ちの展開でレースは始まることになった。

 ティミー・ハンセンはバッケルドを後ろから攻め立ててコーナーごとにプレッシャーを激しく掛け続け、グラベルセクションのターン6でワイドになったバックルドのインを付いてトップに立つかに見えたが、姿勢を乱したバックルドと接触してしまい大きくスピンして5位へと転落してしまう。

 ケヴィン・ハンセンもまた巻き添えをくってしまいスピンしてしまい最後尾の6位に転落したため彼の逆転タイトルの可能性は消えたが、バッケルドは首位をGRXチームのニクラス・グロンホルム(ヒュンダイi20)に譲ったものの幸いにも2位でコースへと復帰、タイトルにむけてチャージを開始する。

 グロンホルムが快調なペースで首位をキープ、バックルドは1秒以上差をつけられた2位となっているため逆転は厳しい展開となってしまったが、ティミー・ハンセンは5位に沈んでいる。タイトルを争う二人がこのままのポジションでゴールを迎えれば、バックルドが選手権で211ポイント、ティミー・ハンセンが1ポイント差の210ポイントとなるため、バックルドのタイトルが決まることになる。

 だが、3周目に4位につけていたティモ・シャイダー(セアト・イビーサ)がステアリングを壊してしてマシンストップ、ティミー・ハンセンが4位へと浮上してきたためタイトル争いはふたたび混沌とする。このままゴールすれば、バックルドが211ポイント、ティミー・ハンセンも同じく211ポイントだ。

 レースはそのままグロンホルムがトップでチェッカーフラッグを受け、バックルドが2位、グロンホルムのチームメイトであるティムール・ティメルジャーノフ(ヒュンダイi20)に続いてティミー・ハンセンは4位でフィニッシュした。

 レース結果によって、ティミー・ハンセンとバッケルドはどちらも211ポイントとなったが、2019年の勝利数においてティミーが4勝に対してバッケルドが1勝であったことから、ティミーのタイトル獲得が確定した。ケヴィンは総合3位を獲得した。

 ティミーは、ターン1でドーナツターンを披露した後、マシンから降り、感情を露わにした。FIAヨーロッパRXの14回の王者であるケネス・ハンセンの長男であり、27歳のティミーにとって、これは厳しいシーズンと激しい週末の完璧なフィニッシュとなった。

「信じられない気持ちだ。今週末、僕の人生すべてのパフォーマンスを投入した」と彼は語った。「なんというシーズンだったんだろう。素晴らしい気分だ。これは僕が望んできたすべてだ」

「すべてが整い、今年の最後のレースに出場できたことをとても嬉しく思っている。僕は自分がいかに冷静さを保ち、集中し続けたかを非常に誇りに思う。レースごとに強いパフォーマンスを発揮できたので、ここでもそうしたいと願っていた」

「このようなプレッシャーの中では、僅かなミスも犯す余地はない。これは僕のキャリアの中で最高のパフォーマンスの1つだ。世界チャンピオンと呼ばれることは夢のようだ」

「決勝戦では、アンドレアス(・バッケルド)のクラッシュの後、チャンピオンになるためには1つ順位を上げなければならないと無線で言われた。ティモ(・シャイダー)を懸命に追いかけたところ、彼が問題を抱えていることに気付き、4位になることができた」

「タイトルを獲得するのに理想的な方法ではないが、1つのレースですべてが決まるわけではない。1年にわたる戦いだ。今シーズンは僕のキャリアの中で最高だった」

「チームのタイトルを獲得することは、一生懸命働く小さなチームにとって素晴らしい結果だ。僕は皆をとても誇りに思っている。マシンは毎回完璧でなければならず、それはチーム全体のおかげだ」

 レース後、二人のターン6の接触が、レースの結果とタイトルの行方に大きな影響を果たしたとしてスチュワードは長時間にわたって審議を行うことになったが、接触の直接のきっかけになったバッケルドのミスが原因との判断からレース結果の変更なしとの最終決定を下し、ティミー・ハンセンのタイトルが確定している。

 バッケルドは、タイトル争いで2位となったことを祝福する気分ではなかった。「自分の中のベストを尽くしたことを誇りに思っている。決勝戦のスタートで最高の反応ができて、タイトル争いに勝ったと思った。だが、あのクラッシュだ。それについてこれ以上コメントするつもりはないよ・・・」