ERC2019/07/21

地元バッソが波乱のERCローマをリード

(c)ERC

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 ヨーロッパ・ラリー選手権第5戦のラリー・ディ・ローマ・カピターレは20日に初日を迎え、イタリア選手権リーダーのジャンドメニコ・バッソ(シュコダ・ファビアR5)がトップに立っており、2位のアレクセイ・ルクヤヌク(シトロエンC3 R5)に36.3秒差のリードを築いている。
 
 金曜日の夕方にローマ市街のサンタンジェロ城でスタートセレモニーを行なったラリー・ディ・ローマ・カピターレは、土曜日の朝、ローマ郊外のターマックステージで二日間にわたる戦いの幕が開ける。ラリー・ディ・ローマのステージは、ところどころアスファルトのイン側が深くえぐられているためインカットによってグラベルが路面にかき出されており、例年、多くのドライバーがトラブルに見舞われることでも知られている。ドライのコンディションになったこの日も数え切れないほどのドラマが朝からトップランナーたちに襲いかかったが、最初に波乱に見舞われたのは、昨日の予選ステージでトップタイムをマーク、SS1をトップタイムで発進したニコライ・グリアジン(シュコダ・ファビアR5)だった。

 ターマックでの経験を積むためにローマに参戦してきた昨年のジュニア王者は、SS2のゴール目前の左コーナーでブレーキした瞬間に路面のグラベルでスライド、激しく立ち木にヒットしてリタイアとなってしまった。

「僕らは全開でプッシュしていたが、路面には奇妙な汚れがあり、僕らはそこに至る前にブレーキを踏んだが4輪を完全にロックさせてしまった。スライドが止まらずに立ち木の間にオフしてしまった・・・僕たちにとってのラリーはこれで終わりだ」

 グリアジンのマシンは右サイドの後部は衝撃で大きくへこんでおり、ロールケージに修理不能のダメージがあるためここでラリーを終えることになった。彼は昨年のローマでも予選トップ、オープニングSSでもベストタイムで奪ってみせたが、SS4でダートにのってステアリングをヒットして優勝争いから完全に脱落して20位に終わっており、一年前の悪夢の再現となってしまった。

 グリアジンのクラッシュによって朝のループを首位で終えたのは、イタリア・ターマック・チャンピオンのアンドレア・クルニョーラ(シュコダ・ファビアR5)だ。SS2、3で連続してベストタイムを奪ったクルニョーラの7.3秒後方には2度のERC王者のバッソ、さらに7.6秒後方には3度ERC王者を経験しているルカ・ロセッティ(シトロエンC3 R5)が続き、昨年のローマ勝者であるルクヤヌクは22.7秒遅れの4位に甘んじている。ルクヤヌクはポップオフバルブに問題があることを認めながらも、SS2では昨年より8秒も遅かったのは「石けんのように滑る」と語り、それ以上にペースが上がらないのはマシンのセットアップに問題があることを認めていた。

 猛暑となったこの日、午後のループになると気温が30度を超えるとともに、路面はいっそう荒れ、かき出された土や大きな石が転がり、最初のステージから上位陣にタイヤ・トラブルが続出することになる。

 首位のクルニョーラが荒れた路面でパンクに見舞われ、タイヤ交換のために11位まで後退してしまった。これによって首位にはバッソが浮上することになったが、彼の後方3位につけていたロセッティも4km地点でのクラッシュのためにリタイアとなり、このステージでパンクに見舞われたルクヤヌクが36.4秒差の2位に付けることになった。

 これでローマは昨年も最後まで優勝を争ったバッソとルクヤヌクという二人の対決という図式となる。昨年、鮮やかな勝利を飾ったルクヤヌクもここまではけっして本来の速さをみせてなかったが、やっとSS5で2番手タイムを奪って4秒あまりを縮めてみせた。だが、すでにスペアタイヤを使い果たしている彼はタイヤの摩耗とともにブレーキにも問題を抱えてしまい、この日最後のSS6では7.7秒あまりもの遅れを喫して、バッソから36.3秒遅れの2位にとどまることになった。

 イタリア選手権を争う最大のライバルであるロセッティが消えたことで、首位のバッソにとってはラクな展開となっている。波乱の初日を大きなトラブルもなく首位で終えた彼は、「すべてがOKだ。マシンもとてもよかったし、マシンも快調だ。あとはサービスに帰って明日のためにマシンのプリペアをしてもらうよ」と語っている。

 ドラマは最後のステージまで続き、最初の2つのステージで3回のスピンを喫した選手権リーダーのウーカシュ・ハバイ(シュコダ・ファビアR5)は、困難な朝を5位で終えたあと3位までポジションを上げていたが、最終ステージでクラッシュのためにリタイアになっている。

 ハバイのリタイアで3位で初日を終えたのは、新しいフォード・フィエスタR5のERCデビュー戦に臨んでいるオレンジ1/Mスポーツ・ラリーチームのシモーネ・カンペデッリだ。彼はSS2のパンクで10位まで落ち、明らかにニューマシンのペースに苦しんでいるが、ライバルたちの波乱でルクヤヌクの25秒後方の3位まで順位を上げている。

 先週のチェコ選手権のラリー・ボヘミアでマシンを大破させたACCRチェコ・ラリーチームのフィリップ・マルシェ(シュコダ・ファビアR5)は、修理がどうにか間に合ってどうにかローマへの参戦が実現している。慎重なスタートを切った彼も総合4位、ERC1ジュニア選手権で首位に立っている。5位にはMOLレーシングチームのノルベルト・ヘルツィグ(フォルクスワーゲン・ポロGTI R5)、ERC1ジュニア選手権リーダーのクリス・イングラム(シュコダ・ファビアR5)は朝のループでリヤのブレーキを失う問題で11位に終わったが、6位まで浮上してきた。

 ローマでは過去2回の優勝している実績を買われて、ヒュンダイ・モータースポーツNに抜擢されたウンベルト・スカンドラ(ヒュンダイi20 R5)はタイヤの摩耗に苦しみながらも6位につけていたが、最終ステージのパンクで10位となっている。

 また、チームSTARDからERC1ジュニア選手権に挑んでいる新井大輝(シトロエンC3 R5)は、この日最初のステージでパンクしてスペアを使い果たしているなかでタイヤのデラミネーションに見舞われて朝のループでは20位にとどまることになった。さらに午後のループでもふたたびパンクに見舞われており、12位で初日を終えている。

 ERC3ジュニア選手権は最終ステージでサンテロック・ジュニア・チームのシンドレ・フルーセット(プジョー208 R2)がクラッシュ、ラトビアとポーランドで2連勝しているケン・トルン(フォード・フィエスタR2T)がリードを奪っている。