WRC2021/05/04

ウィルソン、フールモーに翼をさずける

(c)RedBull Content Pool

 Mスポーツのマネージングディレクターを務めるマルコム・ウィルソンは、アドリアン・フールモーがWRカーデビュー戦となったクロアチア・ラリーで5位になったことを喜びつつも、最終日にコースオフしたときの彼のきわめて冷静な対処を高く評価、スーパースターの片鱗を感じとっている。

 Mスポーツ・フォード・ワールドラリーチームから今季、WRC2に参戦するフールモーを資金面で支援するのは、フランス自動車連盟(FFSA)とともに今季から彼に翼をさずけることを決めたレッドブルだが、これまでMスポーツの負担はけっして少なくはなかったことを忘れてはならない。

 ウィルソンは、フールモーがWRC初出場した2019年のラリー・モンテカルロで総合10位/WRC2 2位に入って以来、そのポテンシャルの高さに注目して少なからぬ投資を行ってきた。もちろんMスポーツにとってのラリープログラムは、徹底したビジネスであり、外れる投資はしないのがウィルソンの信条ではある。しかし、その一方ではではオイット・タナクやエルフィン・エヴァンスといったトップドライバーたちがMスポーツから育ったように、壮大な夢を買うときもある。

 レッドブル・カラーのフィエスタWRCがステージを駆け抜けるだけで、まるでMスポーツにセバスチャン・オジエが帰ってきたかのような華やかな印象を与えるが、ウィルソンは総合5位という見事なデビュー戦を飾ったフールモーが、オジエの後を継いでWRCの階段を駆け上がることを期待している。

「見事なデビュー戦だったね。かなり印象的だった。以前にも彼を見ておくべきだと言った意味がこれでわかったはずだ。でも真面目な話、僕はこの結果にとても満足している。彼がこのスポーツを始めて4年しか経っていないことを考えると、とても素晴らしい結果だし、この内容に私はとても満足している」

 ウィルソンは、クロアチアで2回の2番手タイムを記録したフールモーの速さを評価するとともに、日曜日の朝、フィエスタWRCをディッチに落としてしまったときの冷静な対応を忘れてはならないと感じている。

「彼はあのときとても落ち着いていたね」とウィルソン。「ドライバーは誰だってこのようなことが起こったとき、マシンを早く脱出させようとするだろうし、ギヤをリバースに入れて、おそらく簡単にギヤの歯がいくつか欠けてしまっただろう。しかし、彼はそうしなかった。パニックに陥ることなく、ミスを認めて対処したのだ。イライラすることもなく(観客の助けを待ち)、道路に戻ってただ走り続けたのだ」

 ウィルソンは、このようなフールモーの印象が、ポルトガルでふたたび彼をWRカーに乗せたいと思ったきっかけになったと認めた。

「リッチ(=チーム代表のリチャード・ミルナー)と私はそのことについて話したが、あの結果を受けて、彼が(ポルトガルでも)引き続き走ることになった」とウィルソンは語った。

「テーム(・スニネン)はサルディニアで復帰する。ここ数年、サルディニアでは彼の素晴らしいスピードを目の当たりにしているので、サルディニアでは彼にWRカーをドライブしてもらいたいんだ。しかし、ポルトガルでアドリアンを見るのは面白いかもしれないね」

 ウィルソンは先週、スペインで行われたRally1カーのテストでステアリングをフールモーにも任せたほど、いま26歳の彼に大きな期待を寄せている。なぜ、それほどまでのチャンスを与えるのかについて聞かれたウィルソンは次のように説明している。

「私が本当に感銘を受けているのは彼のコミットメントだ。このスポーツで成功しようとするコミットメント、つまり、医薬科の研究を4年目にしてあきらめて、何の保証もなかったラリーの世界に飛び込んだことだ。信じられるのは、これが自分にとって正しい道であるという彼自身の確信だけだった。彼らしいね。素晴らしいと思わないか?」