WRC2020/02/15

エヴァンス、雪なしのスウェーデンをリード

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 2020年世界ラリー選手権第2戦ラリー・スウェーデンは金曜日を終えてトヨタGAZOOレーシングWRTのエルフィン・エヴァンス(トヨタ・ヤリスWRC)がリード、ワールドチャンピオンのオイット・タナク(ヒュンダイi20クーペWRC)が8.5秒差で続く展開となっている。

 ラリー・スウェーデンは異常な暖冬のために多くのステージがキャンセルとなり、前夜に行われる予定だったSS1カールスタッド・スーパーSSも完全にグラベルがむきだしのコンディションのためにキャンセル、シェイクダウンという名のデモンストレーションランと位置づけられ、金曜日が事実上の競技初日となった。

 この日は国境を越えてノルウェーのSS2ホフ-フィンスコグ(21.26km)、SS3フィンスコーゲン(20.68km)、スウェーデンに戻ってSS4ニッケルヴァットネット(18.94km)をいずれも1回のみを走行、午後に予定されていた同じ3ステージのリピートは土曜日の朝に持ち越しとなっており、この日の最終ステージとして行われる予定だったSS8トースビー(8.93km)は距離を短縮してトースビー・スプリント(2.80km)として行われる。

 残念ながら雪が降らなかったものの、昨夜のヴェルムランド地方は−11度まで冷え込み、8時の時点での気温−3度と、この一週間でもっとも寒い朝となった。事実上のラリーのオープニングSSとなったホフ-フィンスコグのコースは、前日のシェイクダウンのようなグラベルが露出したようなコンディションではなく、コース全域がほぼアイスに覆われており、ドライバーを安心させることになった。しかし、最高速が190km/hに迫ったこのハイスピードステージもけっしてベストなコンディションにあるわけではなく、グリップレベルがコーナーごとに変化してドライバーたちを惑わすことになった。

 このステージでトップタイムを奪ってラリーをリードしたのはエヴァンス。「まずまずだった、場所によっては苦労してブレーキングが少し早過ぎてしまうところもあった。グリップが結構変わりやすかったからね」。これに前戦モンテカルロのクラッシュで8番手という後方からポジションでスタートしたタナクが有利なポジションを味方にして1.1秒差で続き、2秒差の3番手にWRカー参戦2戦目のカッレ・ロヴァンペラ(トヨタ・ヤリスWRC)が続く展開でラリーは始まることになった。

 7年ぶりに一番手ではないポジションでスウェーデンに挑むセバスチャン・オジエ(トヨタ・ヤリスWRC)は「最後の方は少し慎重になった、すでにタイヤのグリップをいくらか失っていたからね」と2.9秒遅れの4番手スタート。スタッドはそれほど失われているわけではないが、このあとロングステージを連続して走るには困難だ。

 こうした状況を予測していた主催者は悪化傾向にあるコンディションを考慮して、急遽、SS2のあとにナムナ・タイヤフィッティングゾーンを設けており、全ドライバーたちはフレッシュタイヤを含む6本を搭載してSS3フィンスコーゲンへと向かう。

 フィンスコーゲンは序盤には氷に覆われて部分もあるが、ステージの後半になるとかなりグラベル状態になっており、流れるようなステージはスノーバンクがないことでいっそう高速でトリッキーなステージとなっていた。

 ここでベストタイムを奪ったのはタナク。首位のエヴァンスは2番手タイムもそのリードは0.2秒となった。ロヴァンペラはジャンクションでエンジンストールをするも3番手タイム、首位から5.3秒差の3位につけており、オジエは若きチームメイトから2.9秒後方だ。

 しかし、続くSS4ニッケルヴァットネットは朝のループのなかでもっとも良好なウィンターコンディションにあるとみられていたが、走行によって薄いレイヤーとなって路面を覆っていたアイスが剥がれ落ち、後方からスタートしたタナクはペースアップを阻まれ、8.5秒もの遅れを喫してポジションを一つ落として3位へと後退することになった。

 快調なペースを刻み続けるエヴァンスはSS4ではこの日2つめのベストタイム、ロヴァンペラが7.9秒差で続き、トヨタが1-2態勢を築くことになった。

 DAY1の最終ステージとして行われたトースビー・スプリントも路面に雪やアイスはなく、完全にグラベルがむきだしとなった。

 ここではタナクがベストタイム、スタート直後のヘアピンでSS3に続いて2度目となるエンジン・ストールを喫したロヴァンペラを抜いて2位でこの日を終えることになった。エヴァンスは0.2秒差の2番手タイム、難しい1日を終えてタナクに対して8.5秒のリードを築いて首位でこの日を終えている。

「マシンのフィーリングは本当に良かった。不満のない一日だったよ。明日も同様にやらなければならない。コンディションがどうなるかは誰にもわからないが、僕たちは目の前のものに順応しなければならないだろう」とエヴァンスは語っている。

 順位を落としたとはいえ、ロヴァンペラは14.3秒差の3位と引き続き初のポディウムが狙えるポジションにつけている。「トースビーのスプリントで2回目のストールを喫した。本当にバカなミスだったが、僕たちは速くて一貫していたのでいい1日だった」。

 3.5秒後方の4位につけたオジエは、初日のコンディションはそれほど悪くなかったと振り返りながらも、二人のチームメイトに差を付けられたことに刺激を受けたように、「グラベルが多すぎる場所もあったが、マシンに少し変更を加えて、ペースを改善したい。悪い一日ではなかっただが、チームメイトが良い仕事をしたので、それは僕たちがもっと改善できることを示している」と語っていた。

 オジエの3.1秒後方の5位にはエサペッカ・ラッピ(フォード・フィエスタWRC)、2.7秒後方にはモンテカルロに勝利して選手権リーダーとしてスウェーデンをスタートしたティエリー・ヌーヴィル(ヒュンダイi20クーペWRC)、さらに0.6秒差の7位でスポット参戦のクレイグ・ブリーン(ヒュンダイi20クーペWRC)が続き、表彰台まで10秒差圏内に4台がグループとなってひしめいた状態で初日を終えることになった。

 ヌーヴィルにとっては、コースオープナーとして後方のドライバーのために道路をクリーニングする役目の1日となった。彼はオープニングSSで4.4秒遅れの5番手タイムでスタート、SS3でも8.4秒、SS4でも10秒をロス、首位から23.6秒遅れの6位でこの日を終えることになったが、むろん走行ポジションが改善する明日は巻き返しを狙いたいところだ。「もちろん一番手で走ることはトリッキーだったが、ノーミスでトラブルフリーで1日を終えることができた。だから僕らのループには満足しているよ。ややタイム差はついたが、明日は少しましになるだろう」

 5位につけたチームメイトのラッピとは対照的にテーム・スニネン(フォード・フィエスタWRC)はトリッキーなコンディションでタイムが伸びない。一年前の初日にはラリーリーダーを争った彼だったが、木曜日のシェイクダウンでヒヤリとさせるスピンを喫したことが原因なのかペースが上がらず、金曜日を終えて8位につけている。また、WRカーによる初のスウェーデン参戦となった勝田貴元(トヨタ・ヤリスWRC)が18秒後方の9位で続いている。

 スウェーデンは初日、トップ4に3台のヤリスWRCが占める展開となったが、プライベーターとして5台目のヤリスを駆って今季初参戦を迎えたヤリ-マティ・ラトバラにとっては期待に反して試練が待っていた。

 コドライバーのユホ・ハンニネンとともに初のWRCをスタートした彼は、オープニングSSから11.9秒遅れと精彩を欠き、続くSS3ではなんの変哲もないコーナーでリヤが突然グリップを失う形でスピンを喫して50秒をロスしてしまう。彼はその後のSS4ニッケルヴァットネットでもペースが上がらずに2分27秒もの遅れとなってしまった。「技術的な問題があって、エンジンが何度もカットしたんだ。何なのかは分からないが、常にリブートしてスタートを繰り返さなければならなかった。・・・・どちらにしても、僕たちのラリーは終わった、あまりにも多くのタイムを失ってしまった」と、肩を落とすことになった彼は、このトラブルを解決できずにSS8の前でリタイアを選んでいる。

 明日の土曜日は、当初はコリンズ・クレストで有名なスウェーデンの象徴的な存在となっていたヴァルゴーセンなどの伝統的なステージが予定されていたが、いずれも十分なウィンターコンディションにないことからキャンセル、金曜日と同じ4ステージをループする1日となる。