WRC2021/06/27

オジエがサファリで逆転優勝、勝田が2位初表彰台

(c)Toyota

(c)Hyundai

(c)Toyota

 2021年世界ラリー選手権(WRC)第6戦サファリ・ラリー・ケニアは、6月27日にゴールし、セバスチャン・オジエ(トヨタ・ヤリスWRC)が前戦に続き今季4勝目を獲得。2位には勝田貴元が入り、自身最上位となるWRC初ポディウムを獲得。トヨタGAZOOレーシングWRTは22年ぶりに帰ってきたサファリ・ラリーで1-2勝利を達成することになった。

 ラリー最終日は、再びナイバシャ湖周辺のステージが設定されている。11.34kmの距離を持つSS14のロルディアは森林ステージで、今回用意された他のサファリステージとは異なる趣きを持っている。続くSS15はグレートリフトバレーの底を走る雄大なロケーションを持ったヘルズゲート。当初、このステージは10.56kmの距離で設定されていたが、レッキ時に路面のダメージが酷いことが指摘され、5.63kmに短縮された。リグループ後に、今回のラリーで唯一1回だけの走行となる9.17kmのマレワを走り、ロルディアとヘルズゲートを再走する2回目のヘルズゲートがパワーステージとなる。

 走行順は、前日の順位のリバースで4分間隔のスタート。1.ダニエル・ソルド(ヒュンダイi20クーペWRC)、2.エルフィン・エヴァンス(トヨタ・ヤリスWRC)、3.ロレンツォ・ベルテッリ(フォード・フィエスタWRC)、4. カッレ・ロヴァンペラ(トヨタ・ヤリスWRC)、5.アドリアン・フールモー(フォード・フィエスタWRC)、6.ガス・グリーンスミス(フォード・フィエスタWRC)、7.オイット・タナク(ヒュンダイi20クーペWRC)、8.オジエ、9.勝田、10.ティエリー・ヌーヴィル(ヒュンダイi20クーペWRC)の順番だったが、朝のサービスで燃料系のトラブルによってソルドが20分遅れでサービスアウト。これによってエヴァンスが1番手で走行することになり、ソルドはベリテッリの後方、3番手スタートとなった。

SS14ロルディアは森の中を何度も折り返していくステージで、一見、ヨーロッパ風のシンプルなステージに思えるが、サファリのステージは一筋縄ではいかない。さらに路面は雨で湿っている。

 ここでラリーをリードしていたヌーヴィルが路面に転がっていた岩を引っ掛けてスローダウン。57秒あったリードを一気に吐き出し、2位の勝田との差は11.7秒となる。ヌーヴィルにとって致命的だったのは、パンクだけで済まず、サスペンションにもダメージが及んだことだ。右リヤサスペンションは傍目から見てもシリアスな状況でヌーヴィルは無言でステージを後にした。

 ベストタイムを刻んだのはオジエ。「2位を獲得するためにプッシュしなければならなかった。完璧なステージではなく、コーナーでストールしてしまったが、プッシュし続ける必要がある」と語り、勝田の4.6秒後方まで迫ってきた。勝田はオジエより13.5秒遅い6番手タイム。「SS16がラフなので、どんなことも起こり得る。マシンとタイヤへのダメージを避けなければならない。そうした戦略なので、ここではタイヤは良くなかったが、リスクを負ってポジションへのストレスを感じる必要はない。できるだけプッシュしたいが、リスクを避けるこの方が大事だ」と冷静だ。オジエは4本ともソフト、勝田はハードとソフトを2本ずつクロスに使用している。この差が今後、パフォーマンスにどう影響するだろうか。

 セカンドベストはインのグラスを大幅にカットしてプッシュしたフールモーが獲得。「ラフなステージではないので、本当にプッシュできるのはここだと思った。しかし、目標はいつも同じで、完走することだ」とコメント。5位のグリーンスミスとの差は6秒と迫ってきた。

 SS15ヘルズゲートのスタートを前に異変が起こった。ヌーヴィルは破損したリヤサスペンションを修理できないためにリタイアとなり、このステージで4番手タイムを刻んだ勝田がリーダーに躍り出る。「驚いているが、まだ3ステージ残っている。このラリーでは何でも起こる可能性がある。とにかく集中を切らさないことだ。このステージでもプッシュしなかったが、コース上にはたくさんの岩があった。(ヌーヴィルに起きたようなことは)簡単に起こる可能性がある」とラリーへの展望を語る。

 一方のオジエは「2位のポジションを目指して戦うことが今日のプランだった。ティエリーがラリーを去ったことで、それはすなわち勝利のための戦いになった。それにしてもこのステージは酷いコンディションだったよ」と0.8秒前の勝田に照準を合わせる。

 リグループを経てラリーカーはSS16マレワへと挑む。丘陵を行くストレートとジャンクションが特徴的で、大きなジャンプもいくつかあるが、注意すべきはルースな路面と点在する岩の存在だ。「このステージはサバイバルでしかない。極めてラフだったのでクルマをセーブすることに気を使った」と語るオジエが、「マシンにダメージを負わないようにとても慎重になる必要があった」という勝田より0.8秒速いタイムで、ふたりは同タイムの首位に並ぶ。

 ロルディアの2回目の走行となるSS17はオジエがベストタイムを奪い、勝田に8.3秒差をつけて単独首位に浮上する。3位にはタナク、4位にはSS16でキャリア初のベストタイムを刻んだフールモーがグリーンスミスを逆転してポジションを上げてきた。

 通常のラリーならば、大勢は決まったというところだろう。だが、勝田がコメントしたように、ここではどんなことでも起こり得る。最終ステージ、ヘルズゲートの2回目の走行は、当初予定されていた10.56kmの距離で行われる。

 パワーステージの掛かったヘルズゲートでベストタイムを刻んだのはタナク。「このラリーでは6割から7割のアタックで、ミスをしないことを重視した。ティエリーがうまく行かなかったのは残念だ。エストニアに期待しよう」と語った。セカンドベストを記録したロヴァンペラは「クロスタイヤで、タイムは悪くなかったと思う。難しい週末だったけれど、チームが大きな仕事をしてくれたおかげで走らせ続けることができた」と感謝を捧げる。

 注目の首位争いは、オジエが4番手タイム、勝田はしっかりとタイムをセーブして、初のポディウムを獲得することになった。「とても良い気分です。問題はあったけれど、生き残ったからこそ、ここにいる。チームとマシンにとても満足している。ありがとう」とリザルトを噛み締めた。

 19年ぶりにWRC復帰を果たしたサファリ・ラリーでの勝利についてオジエは「素晴らしい体験だった。ここでは多くの人のサポートを得た。ロードセクションでは大勢の人が応援してくれた。たしかに金曜日にトラブルはあったが、そこからは良いペースでこの週末を過ごすことができた。そしてタカさん、おめでとう。彼は本当によくやった。彼を捕まえるのはそれほど簡単なことではなかった。チームにとっても素晴らしい結果になった。たしかに昔のサファリ・ラリーよりも距離は少し短いかもしれないが、この挑戦はいまだタフだったし、我々はそれを楽しんだ」と振り返った。

 ドライバー選手権ポイントは今季4勝目を得たオジエが133ポイントとなり、初日のサスペンショントラブルのため10位に終わったエヴァンスは99ポイントと、その差は34ポイントへと拡大した。勝田は66ポイントで5位に浮上した。マニュファクチャラー選手権では優勝したトヨタが44ポイントを加え273ポイント、ヒュンダイが214ポイントにとどまったため、リードは59ポイント差へと拡大しており、Mスポーツ・フォードが109ポイントとなっている。

 次戦ラリー・エストニアは7月15日にスタートする。全12戦で争われる世界ラリー選手権は早くも後半戦へと突入する。