WRC2021/01/24

オジエがモンテ首位奪回、トヨタ1-2-3で最終日へ

(c)Toyota

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 2021年世界ラリー選手権(WRC)開幕戦のラリー・モンテカルロは23日にDAY3を迎え、セバスチャン・オジエ(トヨタ・ヤリスWRC)が首位に浮上、チームメイトのエルフィン・エヴァンスとカッレ・ロヴァンペラが2-3位で続いており、トヨタGAZOOレーシングがトップ3を独占する展開となっている。

 金曜日の夜に50mを超える強風がギャップ地区を吹き荒れ、いくつかのチームのサービステントが吹き飛ばされたほか、サービスパークは大きな被害を受けることなり、フレンチアルプスの天候急変を誰もが知ることになった。冷え込んだ山岳地帯では雪が降り、路面は凍結しているというグラベルクルーの情報がまだ夜明け前のサービスにもたらされ、すべてのドライバーが4本ともスタッド付きスノータイヤを選択、トヨタ勢がスペア2本、ほかはスペア1本を積んでオープニングSSのラ・ブレオル〜セロネ(18.31km)へと向かって行った。

 前日のクラッシュのあと、マシンの修理を終えてどうにか一番手の走行ポジションでリスタートした2Cコンペティションのピエール-ルイ・ルーベ(ヒュンダイi20クーペWRC)は昨夜の風のすさまじさを認め、ここではマシンをふたたび壊さないよう慎重に走ったほど難しいコンディションになっていると最初に報告することになった。「路面は雪とアイスで難しいコンディションだった。激しい嵐の中で3時間もかけてマシンを作り直してくれたチームには感謝している。もちろん慎重に走ったよ」

 ほぼ全域にわたってコースが雪と氷に覆われた路面はこの週末では初めてとなり、トップドライバーたちにも容赦なく牙をむく。5位でこの日をスタートしたティエリー・ヌーヴィル(ヒュンダイi20クーペWRC)はコーナーでそのままストレートに行ってしまい30秒近くをロスすることになったが、チームメイトの悲劇に比べればまだましだった。3位につけていたオイット・タナク(ヒュンダイi20クーペWRC)は2.1km地点でスピン、その直後のコーナーでイン側にあった石にヒットして左フロントタイヤをパンク、リムだけの状態でゴールすることになった。彼はここで一瞬のうちに1分20秒を失って3位から5位へと後退することになってしまう。

 この厳しいコンディションとなったステージで衝撃とも言える速さをみせたのはオジエだ。前日のパンクで7.4秒差の2位でこの日をスタートした彼は、首位のエヴァンスを1kmあたり1秒近く引き離す信じがたいベストタイムで、チームメイトに10.4秒差をつけて首位に躍り出すことになった。

 エヴァンスはステージエンドで一気にリーダーボードをひっくり返されたことを知って、これ以上走れないと思っていた自身のペースがまだまだ慎重すぎたことに打ちのめされることになった。「僕にもっと何かできたのだろうか? 最後の最後ではそんなにうまくは行っていなかったと思う、慎重になり過ぎていた」

 ロヴァンペラは首位からは1分8秒も引き離されたものの、タナクの後退によって3位へと浮上、トリッキーなコンディションの中での自身の勇気のなさを嘆きながらも、ふたたびトヨタの1-2-3態勢を築くことに成功する。オーバーシュートのミスはあったもののヌーヴィルもロヴァンペラからは25.6秒遅れの4位へとポジションをアップしてきた。

 ヌーヴィルの4.2秒後方には5位のタナク、ダニエル・ソルド(ヒュンダイi20クーペWRC)も終盤の右コーナーでワイドに膨らみ、コースオフ寸前というヒヤッとする場面もなんとか切り抜けて6位につけている。

 続くSS10サン・クレマン〜フリシニエールはこの週末でもっともアルプスに近いところに位置しており、一晩中降り続いた雪によって完全に白銀のステージとなっている。ここでベストタイムを奪ったのは4位につけるヌーヴィル。一番手で走行したルーベが2番手タイムを奪うことになる。ラリーカーが走行するたびにブレーキングポイントやコーナリングラインの雪が削られてアイスバーンはタイヤで磨かれてさらに滑りやすくなっており、後方から走るリーダーボード上位のドライバーたちは揃ってタイムを失ってしまう。

「グリップがなく、スムーズな走りができなかった」というオジエは42.2秒をロスしながらも首位キープ、エヴァンスにとってはオジエとのタイムを縮めるチャンスもあったかに見えたが、終盤でハーフスピンとエンジンストールでタイムロスを喫したために46秒あまりを失ってしまい、オジエとの差は14秒へとじわりと広がっている。3位につけるロヴァンペラも24秒をロスしたことを知り、「グリップはなかったがなんでこんなに遅いのかわからない」と驚きの表情を浮かべる。表彰台のポジションはキープしたものの、ベストタイムを奪ったヌーヴィルに1.4秒差の背後に迫られることになる。

 昨年、このステージで衝撃スピードでクラッシュしたタナクはまたもこのステージで悪夢を見ることになる。タナクは前ステージでのパンクに続いて今度は左リヤタイヤをパンク。すでに1本しかないスペアタイヤを使い切り、2本をパンクしたのだからリタイアは避けられないようにも見えたが、彼はここでパンクしたタイヤが完全にダメージを受ける前にマシンをストップ、さきほどのステージでリムだけになったホイールをわざわざ装着してこのステージを走り切る。

 タナクはここで9分近くを失い、14位まで後退、かろうじてゴムが残ったホイールをふたたび左リヤに戻してロードセクションをギャップへと向かったが、残念ながら彼の願いは届かず、3輪走行となったためにマシンを止めることになってしまう。モンテカルロのルールで土曜日のリタイアは、最終日のリスタートを認めていない。彼はここでリタイアとなり、2年連続でノーポイントで開幕戦を終えることになった。

 ギャップにおけるこのラリーの最終サービスを挟んで、ラリーカーはこの日の早朝の暗闇の中で行われたラ・ブレオル〜セロネの2回目の走行へと向かう。

 道路に積もっていた雪は気温の上昇によってほとんど融けたが、湿ったグラベルとシャーベット状のスラッシュがコース上を覆い、ライン上にはところどころ水たまりが出現している難しいコンディションとなっている。オジエは1回目の走行でエヴァンスに17.8秒差をつけてトップに躍り出たが、こうした難しいグリップとなった路面での2回目の走行ではエヴァンスが反撃を試みる。

「とにかくクリーンに走ることに努めた」というオジエを1.3秒上回るベストタイムを奪ったエヴァンスは、最終日を前にチームメイトとのギャップを13秒にまで縮めてみせた。

「今日はフラストレーションが溜まる一日で、ずっとしっくりいかなかったので、このステージ勝利が本当に必要だった! ラインの上に留まり、トラブルを避けることに集中したんだ」とエヴァンスはステージエンドで笑顔をみせた。そして、日曜日にチームメイトを捕まえることができるかと聞かれ、「明日もプレッシャーをかけ続けるつもりだよ!」と彼は付け加えている。

 1.4秒という僅差となっていた3位争いでは、ロヴァンペラが序盤のスプリットではタイムを落としていたが、最終的にヌーヴィルに5.6秒差をつけて7秒差に突き放して3位をキープした。

「それはいいニュースだね!」とロヴァンペラはヌーヴィルに勝ったことを喜んだ。「イヤープラグに問題が起きてノートが聞こえなかったので、ヨンネ(・ハルットゥーネン)は叫ばなければならなかった」と序盤でのタイムロスを説明した。

 4位となったものの、ヌーヴィルは自身の走りに満足しており、新しいコドライバーのマルタイン・ウィダーゲとのコミュニケーションもどんどんよくなってきたとうれしそうにコメントしている。「オーケーだった。リスクは冒さなかったよ。今日もトリッキーな一日だったが、僕たちは常に向上している。大きく攻めたわけではないが、ステージで良いリズムを持てている」

 タナクのリタイアでソルドが5位へと浮上したが、チームの選手権のためにはミスを出来ない状況となったことを彼も知っている。「僕はここではとても遅かった。僕たちは2台のマシンをゴールに辿り着かせなければならないので、これまでよりさらに慎重に走るほかなかった」

 ウィンターコンディションのターマックの難しさを学ぶことをテーマとしている勝田貴元(トヨタ・ヤリスWRC)だが、SS10では5番手タイムを奪って最速のRally2マシンを駆るアンドレアス・ミケルセン(シュコダ・ファビアRally2エボ)をついに捕らえ、昨年のモンテカルロの7位を上回る6位へとポジションアップして1日を終えている。「リラックスしてドライブしようとした。僕のグラベルクルーは、このステージで素晴らしい仕事をしてくれた。次に何が起こるか想定するのが容易だったし、ペースノートにも自信を持てた。最も重要なことは、僕たちが無事にここにいるということだ。それが今日の最大の目標だったからね」

 ドライバーたちはこのステージのあとモナコへ向けて200kmを超えるロードセクションを移動することになる。最終日はノーサービスの1日となり、早朝にモナコ・ハーバーで行われるタイヤ交換のみで4SS/54.48kmというまだまだ長い一日を走ることになる。はたしてオジエがモンテ史上最多となる8度目の勝利を達成することになるのか、そしてトヨタが2017年のラリー復帰以来初となるモンテカルロ優勝を表彰台独占で成し遂げることになるのか? オープニングステージのピュジュ-テニエ〜ラ・ペンヌは現地8時30分(日本時間16時30分)にスタートする。