WRC2019/09/16

オジエが今季3勝目、シトロエンが1-2達成

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 2019年世界ラリー選手権(WRC)第11戦のラリー・トルコは、9月15日、全行程を終了し、シトロエン・トタルWRTのセバスチャン・オジエ(シトロエンC3WRC)が第3戦メキシコ以来の今季3勝目を獲得した。2位にも同チームのエサペッカ・ラッピ(シトロエンC3WRC)が入り、シトロエンは荒れた展開のラリーで1-2フィニッシュを果たした。

 高い気温、荒れた路面、視界を遮るダストなど、まさに消耗戦となったラリー・トルコの最終日は、4SS/38.62kmと走行距離こそ短いが、ノーサービスで走り切らなくてはならない。最初のステージは7.05kmのマルマリス。11.32kmのギョクチェが続き、昨年使用された13.20kmのチチェックリはリバース走行となる。パワーステージとなる最終SSはマルマリスの再走だ。

 最終日はラリー2に回ったオイット・タナク(トヨタ・ヤリスWRC)を先頭に、2.ポントゥス・ティデマンド(フォード・フィエスタWRC)、3.ティエリー・ヌーヴィル(ヒュンダイi20クーペWRC)、4.クリス・ミーク(トヨタ・ヤリスWRC)、5.ヤリ-マティ・ラトバラ(トヨタ・ヤリスWRC)、6.ダニ・ソルド(ヒュンダイi20クーペWRC)、7.テーム・スニネン(フォード・フィエスタWRC)、8.アンドレス・ミケルセン(ヒュンダイi20クーペWRC)、9.エサペッカ・ラッピ(シロトエンC3WRC)、10.セバスチャン・オジエ(シトロエンC3WRC)のオーダーとなる。

 この日はサービスなしで最後のステージまで走り切らなければならないが、すでにトップ10位内のゴールが絶望的なタナクはパワーステージのポイント獲得に勝負を掛けてスペアタイヤを積まず、ミディアム4本だけを選択してスタートしていった。ラリーをリードするオジエとラッピはともにハード3本+ミディアム2本。ヌーヴィル、ミケルセン、スニネンはハード5本。ティディマンドはミディアム5本。ソルドはハード4本にミディアム2本。ミークはハード2本+ミディアム4本。ラトバラがハード2本+ミディアム3本。それぞれに思惑を抱いたタイヤ選択でステージに臨む。

 日曜日最初のステージ、マルマリスは、前半はラフでツイスティな狭いグラベルの登りが続き、後半はハイスピードなダウンヒルが待ち受ける。ここでベストタイムを奪ったのは勝負に出たタナクだ。スペアをもたないにもかかわらず、彼はパワーステージに備えてハイスピードレッキしたというより予行演習のアタックを行った。とはいえ、首位を走るオジエは落ち着いた様子。「フィーリングをたしかなものにするのはプッシュが足りなかった。速く走る必要があるのは2回目のループだ。できるだけ多くのポイントを取りたいね」と語る。

 続くSS15ギョクチェではラトバラがベストタイムを奪った。「現実的にはソルドを抜くチャンスはないだろうが、プレッシャーを掛け続けることは悪くない」。一方のソルドは4.6秒落ちのサードベスト。「(ラトバラ)とのギャップを維持するように努めた。良いステージだったけど、とにかくミスをしないようにとばかり考えていた」とコメントした。

 オジエとラッピ、1-2体制で首位を走る2台のシトロエンは同タイムの5番時計。「後続からのプレッシャーは感じない。でもここは今季もっともラフなラリーなので、安全に走る必要がある。楽しむ余裕はないよ」とラッピが言えば、オジエも「非常にゆっくりドライブした。パワーステージのためにタイヤを温存したいからね」と気を引き締める。

 SS16のチチェックリは、ツイスティで比較的スローなコースだ。キャンバーのついたコーナーが連続し、ここの走り方でタイムに大きく影響する。また森の中を走る区間では光と影が交錯してトリッキーなコンディションを生み出している。ミケルセンがベストタイムを奪ったが、多くのドライバーは最終のパワーステージを意識してタイヤを温存する作戦に出た。そんな中、ラッピがスタートから8.6km地点でスピンを喫して10秒余を失ってしまった。

 最終SSを前に、首位のオジエは僚友ラッピに19.9秒差。スピンを喫したラッピは3位のミケルセンに詰められたもののタイム差はまだ38.3秒ある。31.3秒差の4位はスニネン。5位にソルド、6位ラトバラ、7位ミーク、8位ヌーヴィル、9位ティデマンドと続くがそれぞれ30秒以上のタイム差があり、ポジションを入れ替えるのは難しそうだ。それだけにパワーステージはポイント獲得を掛けた真剣勝負が期待された。

 注目のパワーステージ、タナクはベストタイムを刻んだ1回目の走行よりもさらに10秒余り速い4分55.2秒でゴールした。「どうなるか見てみよう。まだ何があるか分からないからね。ぼくたちはミディアムタイヤを使わざるを得なかった。ハードタイヤではうまく働かなかっただろうからね。けれど、それは柔らか過ぎたようだ」と後続のランナーのパフォーマンスを静かに待つ。

 選手権でなんとか一矢を報いたかったヌーヴィルは2.6秒及ばない。「力を尽くした。これ以上は無理だったが、仕方がない。今週末は難しかった。しかし、まだラリーは3つ残っているので、そこで何ができるかみてみよう」とコメントを残した。後続のランナーもこのふたりのタイムを凌ぐことはできない。最終ランナーのオジエもヌーヴィルに遅れること0.6秒の3番手タイムだ。パワーステージの順位は1位タナク、2位ヌーヴィル、3位オジエ、4位ラトバラ、5位スニネンとなった。

 オジエは最終日も危なげなく走り切り、メキシコ以来の今季3勝目を得る。「今週末の計画通りだ。この勝利が本当に必要だったんだ。ここは非常にトリッキーで、何でも起こり得ると分かっていた。チームにとって難しい時期に、勝利できてよかったよ。僕たちは前進し続ける必要がある。まだ改善すべきことがあるが、今週末、チームに勝利を持ち帰ることができて本当にうれしい」とその重さを噛みしめる。2位の金星を上げたラッピは最終ステージであわやのシーンがあった。「ラインを辿っていただけなのに、パンクした! 幸運にもなんとか2位を維持できたので、本当に良かった」と緊張を解いた。

 3位にはミケルセン。「良いラリーだった。ヒヤリとする瞬間を避けることを目標とし、それを成し遂げた。ステージの1回目の走行は常に良かったが、2回目のペースを改善する必要があるね。全体的に は満足している。ステディな走りができたと思う」と振り返った。4位のスニネンは「安定して走ることができた。このコンディションでペースをコントロールすることができたのは収穫だ。チームに心から感謝したい。メカニックたちはすべてのサービスで、マシンを直すために懸命に働いてくれた!」とチームの献身を口にした。

 5位にはソルド。マニュファクチュアラー選手権での貢献を果たす。「これが僕たちの今日の目標だった。ポイントを取ること、そしてそれを達成した」と自身の走りを評価した。一方のトヨタ勢には反省点が残った。6位のラトバラは「厳しい週末だったが、トラブルを抱えることなくフィニッシュしたことが重要だ。マシンは頑強だったが、ペースを欠いていた。テストでセットアップを間違えたことは僕の責任だ。ウェールズは大きく異なるだろう」と課題を口にすれば、7位のミークも「僕たちは上位を争うペースを持っていなかった。土曜日のロングステージで後退したが、こういったタイプのラリーではマシンにまだ多くの作業をしなくてはならないと思う」と反省の弁だ。

 タナクはパワーステージで5ポイントを獲得し、210点とした。追うオジエは193点まで挽回。ヌーヴィルが180点で続く。マニュファクチュアラー選手権は、ヒュンダイ・シェル・モビス・WRTが314ポイントでリードを拡大、2位トヨタGAZOOレーシングWRTが295ポイントで追う。3位シトロエン・トタルWRTが259ポイント、4位Mスポーツ・フォードWRT184ポイントとなっている。

 次戦はウェールズ・ラリーGB。難易度の高い伝統の森林ステージは10月3日にスタートする。