WRC2019/09/14

シトロエンが初日1-2、トヨタに波乱が連続

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(c)Hyundai

(c)Toyota

 2019年世界ラリー選手権(WRC)第11戦のラリー・トルコは、波乱の展開となったレグ1を終えてエサペッカ・ラッピ(シトロエンC3 WRC)がトップ、セバスチャン・オジエが17.7秒差の2位で続き、シトロエン・レーシングが1-2態勢を築いているものの、ティエリー・ヌーヴィル(ヒュンダイi20クーペWRC)もオジエの0.7秒背後にぴたりと続いている。

 ラリー・トルコの金曜日は、イチメレル(24.85km)を走ったあと北に向かい、ラリー最長ステージのチェティベッリ(38.15km)、ウラ(16.57km)の3ステージを午前と午後に2回ループする6SS/159.14kmというもっとも長い一日となり、ラフな山岳ステージがトップドライバーたちに容赦ない試練を与えることになった。

 オープニングステージのSS2イチメレルがスタートする8時の時点ですでに気温は25度まで上昇、日中は33度まで上がると天気予報は伝えており、マシンにとっても人にとっても厳しい戦いが始まった。先頭ランナーたちが路面を覆う石混じりのグラベルの掃除でタイムを落とすなか、ヤリ-マティ・ラトバラ(トヨタ・ヤリスWRC)がベストタイムを奪い、昨夜のマルマリス・スーパーSSでオーバーナイトリーダーとなったアンドレアス・ミケルセン(ヒュンダイi20クーペWRC)とヌーヴィルの二人のヒュンダイ・ドライバーを抜き去って首位で発進することになった。

 1.1秒差の2位にはミケルセン、2番手タイムのラッピが3位へと浮上、テーム・スニネン(フォード・フィエスタWRC)が4位で続くなど、後方スタートのドライバーたちがラリーの上位を占め、早くもトルコの凶悪なステージがフロントランナーたちに牙をむくことになった。

 ラリーカーが走行するたびにかき出された無数の石が早くも道路の真ん中へとかき出されており、ダニエル・ソルド(ヒュンダイi20クーペWRC)は右フロントタイヤをパンクして47秒をロス、9位へと後退する。「序盤はいい感じだったが、ダッシュボードの空気圧の警告ランプが点灯してパンクだとわかった。本当に悔しい、何もできなかったよ!」と無念の表情で首を横に振る。

 いつ誰の目の前に石が現れるかはギャンブルのようなものだ。首位に立ったラトバラも、SS3チェティベッリであまりに荒れたコンディションでのリスクを避けるためにペースダウン、23秒あまりを失って4位へと後退するなか、このステージでベストタイムを奪ったラッピが、ミケルセンに2.1秒差をつけて一気に首位へと浮上する。

 ラッピは続くSS4ウラではグリップに苦しむミケルセンとの差を9秒へと広げ、朝のループをトップでフィニッシュすることになったが、彼は無理してこのポジションをキープする考えはないと淡々と答えている。「僕らは大きなプッシュはしてないが、クリーンになった道路の利点があったと思う。このペースをキープしたいと思っているが、大それたことをする野心はないよ。安全であることが、ここでは速いペースだ。今日を終えてリードしていなくてもがっかりしないよ」

 朝のループを終えて、トップがラッピ、9秒差でミケルセンが2位、SS4で2つめのベストタイムを奪ったラトバラが13秒差の3位で続き、オープニング SSの残り6km地点でパンクするというヒヤリとした朝を迎えたオジエも7位から15.1秒差の4位まで挽回してきた。

 一番手スタートで路面掃除を強いられたオイット・タナク(トヨタ・ヤリスWRC)は朝のループを終えて21.6秒差の6位。ほかのドライバー全員が2本のタイヤを選ぶなかで1本のみのスペアで朝のループへと向かったが、彼はこのトライはけっしてギャンブルではないと語った。「最高のタイヤチョイスだった。一番手ではまだ路面も壊れていないため、1本のタイヤでもリスクは高くなかった。長いステージは厳しかったが、まだそう荒れていたわけではない。一年前よりマシンもかなり改善されている」と語り、午後のループでのさらなる追い上げに自信をみせた。

 また、2番手のポジションでスタートしたヌーヴィルはタナクから8.6秒遅れの7位、「非常に悪い朝だった」と失望の表情を浮かべることになった。「ロングステージで追い上げる計画だったが、路面は掃除されておらず、ハードタイヤではグリップもトラクションもなかった。かなり頑張って走ってみたが、タイムはついてこなかった」

 朝のループでは路面を多くのグラベルが覆っているが、徐々に掃除されていくとその埋まっていた岩盤や尖った石が露出し、さらに路面には大小無数の石がかき出されており、2回目のループではタイヤとマシンにはいっそうの試練となった。

 SS5イチメレルでは、「おそらく15回くらい、マシンに大きな衝撃を受けた! ディスプレイは空気圧が失いつつあることを示しているが、でも僕たちはここにたどり着いたのだから、オーケーだ!」と、パンクのピンチを切り抜けたラッピが首位をキープ、2位につけているミケルセンも慎重なペースで12.4秒差の2位をキープするなか、3位につけていたラトバラが岩にヒットして右フロントタイヤをパンク、さらにリヤのバンパーを大きく壊して50秒を失い、8位へと後退してしまう。

 トヨタ不運は続く。SS5ではスピンをしながらもその後はハイペースをみせてベストタイムを奪ってみせたクリス・ミーク(トヨタ・ヤリスWRC)が、突然の雷雨によって道路に水たまりが生まれるほどのコンディションとなったSS6チェティベッリではラトバラと同様にリヤバンパーを大きく壊してフィニッシュ、トップ3のチャンスをみせていた彼は首位から1分29秒遅れの6位となってしまった。

 更にこのステージではタナクもフロントタイヤをバーストして1分あまりをロス、5位から7位へと後退する波乱が発生する。ステージエンドでパンクの理由を聞かれたタナクは、憮然とした表情で「わからない。ただパンクしただけだ」と言い残して走り去っている。

 雨が呼んだ終盤の波乱もあったが、グリップ不足のハードタイヤに苦しみながらもラッピが首位をキープして金曜日をフィニッシュ、フロントのリップスポイラーを壊してハンドリングに問題を抱えながらも2位へと浮上したオジエが17.7秒差で続き、シトロエンがまさかの1-2態勢でラリーの主導権を握ることになった。

 朝からフラストレーションが溜まる展開となっていたヌーヴィルもSS6のベストタイムで3位にポジションアップ、タナクが遅れたことでタイトル争いの可能性を残している彼にとってはポイント挽回のチャンスだけに最終ステージでも3番手タイムを奪ってオジエの0.7秒後方にぴたりとつけてこの日を終えている。

 トップ3からは26秒遅れも、すべてのステージで5番手以内のタイムにまとめたスニネンが初日の4位。午後のループを2位でスタートしたミケルセンは、雨となったSS6と7をハードタイヤとボロボロにすり減ったミディアムタイヤの組み合わせで苦闘、瞬く間に首位から1分近い遅れを喫して5位まで後退することになった。「まるで氷の上だ。僕たちはもうタイヤが残っていない。間違ったタイヤチョイスだったよ、アイスラリーのようにツルツル滑った」
 
 6位には最終ステージでトリッキーなこの日を象徴するように5人目のステージウィナーとなったソルドが続き、トヨタのミーク、タナク、ラトバラが7-8-9位と不本意なポジションで初日を終えている。

 明日の土曜日は、昨年、ヌーヴィルとオジエが首位に立った矢先に相次いでリタイアしたダッチャ半島の試練のステージが舞台となる。オープニングSSとなるイェシルベルデ・ステージは現地時間8時43分(日本時間14時43分)のスタートが予定されている。