WRC2019/02/17

スニネン悪夢、タナクがスウェーデンを大量リード

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 2019年世界ラリー選手権第2戦ラリー・スウェーデンは、トヨタGAZOOレーシングWRTのオイット・タナク(トヨタ・ヤリスWRC)が54.5秒もの大きなリードを手にして明日の最終日にスウェーデン初優勝を賭けて挑む。2位にはアンドレアス・ミケルセン(ヒュンダイi20クーペWRC)とエサペッカ・ラッピ(シトロエンC3 WRC)が同タイムで並び、熾烈な争いとなっている。

 ラリー・スウェーデンの土曜日は、オープニングSSのSS9レンメンのステージでの首位交替で始まることになった。タナクは、2秒差をつけてラリーリーダーとして金曜日を終えたMスポーツ・フォードのテーム・スニネン(フォード・フィエスタWRC)を早くも捕らえ、1.8秒差をつけて首位に立つことになった。

「速いセクションで若干慎重に走ってタイムロスした。トップタイムを出すには限界ギリギリで行くしかないようだね」と、スニネンは逆転への自信をみせたが、続くSS10ハグフォースの残り1km地点の右コーナーに早く入りすぎた彼は連続して続く次の左コーナーでコースオフを喫してしまう。

 スニネンは観客の助けを借りてやっとコースに戻るも1分29秒をロスして8位へと後退してしまった。「スノーバンクに吸い込まれてスタックしてしまった。たった1つのステージの1つのコーナーで全部フイにしてしまったよ・・・」と悔しさをにじませた。

 ライバルが消えたことで、タナクは朝のループの最後のステージであるSS12ヴァルゴーセンでは大きくペースダウン、コリンズクレストでも控え目なジャンプをみせるなど慎重な走りで9番手のタイムでフィニッシュ、2位に浮上したアンドレアス・ミケルセン(ヒュンダイi20クーペWRC)に対して33.8秒をリードして朝のループを終えることになった。「いい午前中だった。最初の2つでいい走りをして、このステージは少し着実にいった。良いリズムで行っているよ」とタナクはリラックスした表情で語っていた。

 いっぽう2位で朝のループを終えたとはいえ、ミケルセンの表情はけっして余裕があるものではない。3位のエルフィン・エヴァンス(フォード・フィエスタWRC)に16.9秒の差をつけているが、「もっと速く走りたい。スピードがないので、何かを変えないといけない」と、ミケルセンはマシンがまだ彼の完全に思い通りになってはいないことに苛立っていた。エヴァンスも同様にグリップに苦しんでいるが、7位でこの日をスタートしたあと猛烈な追い上げを敢行して4位まで浮上してきたティエリー・ヌーヴィル(ヒュンダイi20クーペWRC)がエヴァンスの後方1.1秒差まで迫り、さらにヌーヴィルに抜かれたとはいえ、ラッピも2.1秒後方に迫っているからだ。

 ヴァルゴーセンで2番手タイムを叩き出して波に乗るヌーヴィルは、「18秒差を縮めることが午後の目標だ」と語り、その照準はエヴァンスではなく、すでにチームメイトへと狙いを定めていた。

 気温は上昇しており、午後のループが始まるころには小雨が降り始める。ステージを上空から映し出す映像からもステージの路面は黒々としたグラベルが途切れることなく続いており、路面の雪と氷が溶け出して、ふたたび金曜日と同じ悪夢のコンディションが待ち受けている。

 この状況を読んで動いたのはシトロエンだ。2番手のポジションでステージをスタートするはずだったセバスチャン・オジエ(シトロエンC3 WRC)は、サービスを離れたあとロードセクションでマシンをストップさせる。金曜日のコースオフでリタイアとなっているため、この時点でも39位にすぎない彼は、ペナルティを覚悟のうえでこのリスキーなスタートポジションからヌーヴィルの後方の9番手へポジションを下げてSS12をスタートする戦略だ。

 このコンディションでは路面がクリーンになる後方になるほど有利になる。シトロエンがとったオジエへの出走順変更の戦略は、ヌーヴィルのスタート順を1つでも前にすることで、彼がこれ以上のポジションアップすることを防ぎ、さらに前のステージでヌーヴィルに抜かれたラッピを助けることを狙ったものだ。

 わずかな違いではあるだろうが、シトロエンの狙いはSS12ではっきりと効果を現す。2番手タイムを叩き出したラッピは、タイムを落としたヌーヴィルとともに3位につけるエルフィン・エヴァンス(フォード・フィエスタWRC)を抜いて3位に浮上、金曜日にあわや横転寸前のスピンを喫して「マシンもいいし、ドライビングにも満足しているが、タイムがついてこない」とこぼしていた彼だが、じょじょにペースは上がってきており、SS13であわやコースオフ寸前の危機を迎えた2位のミケルセンの7秒背後まで迫ることになった。

 はるか前方でのこうした駆け引きなど関係ないかのように、タナクはぬかるんだ雪がすっかりかき出されたクリーンなラインを悠々とトレース、それほど攻めていないにもかかわらずにSS12でベストタイムを奪ったことに彼は驚きの声を上げることになった。「驚いた。昨日に比べて、今日はまるで線路の上をドライブしているようなものだからね。非常にスムーズに行っている」

 タナクはSS13でも連続してベストタイムを奪ったあと、SS14のヴァルゴーセンでは朝と同様に大きくペースを落としながらもミケルセンへのリードを54.3秒へと広げることになった。「今日はできることすべてをやっている。だが、重要なのは昨日だった。今日は出走順を活かして、賢い走りを保つだけだった。そして僕たちは2位を大きく引き離すことができた。予定通りだよ」と彼は勝利を確信したように語っている。

 タナクがゴールにむけて余裕のクルージングをみせるいっぽう、後方のバトルはこの日の最後までもつれることになり、じわじわとミケルセンに詰め寄ったラッピが0.4秒差で迎えた最終ステージにおいてついに同タイムで並ぶことに成功、さらにはヌーヴィルも2.3秒差で続き、3台が大接戦で最終日を迎えることになった。

 ヌーヴィルから11.9秒遅れの5位にはエヴァンス。ポディウムを狙っていた彼にとっては願っていたような日にならなかったが、それでもSS14ヴァルゴーセンでは3番手タイムと速さをみせている。

 クリス・ミーク(トヨタ・ヤリスWRC)は、朝のループではペースノートが遅すぎたためにペースダウンしたセバスチャン・ローブ(ヒュンダイi20 クーペWRC)を抜いて6位で土曜日を終えている。ローブは、午後のループにむけてスペア1本のみで臨んだが、この選択は完全なミスに終わり、彼の5本のタイヤはスタッドが失われてボロボロになったが、それでも彼はミークに1.6秒差まで迫って一日を終えている。

 昨夜の最終ステージでスノーバンクでスタックしたヤリ-マティ・ラトバラ(トヨタ・ヤリスWRC)はラリー2でリスタート、オープニングSSのレンメンでベストタイムを奪うなど気を吐いたが、ヴァルゴーセンの2回目の走行でぬかるんだコーナーでラインを外してふたたびスタック、総合25位でどうにかこの日を走り切っている。

 また、朝のステージでスタックによって首位争いから脱落したスニネンはS14でもハイスピードでスピン、あわや横転の危機もあったが、立ち木にヒットして救われている。だが、彼のフィエスタのリヤ・ロールケージはダメージを受けており、彼は8位でこの日を終える目前で無念のリタイアとなってしまった。彼のマシンはサービスに戻されてメカニックたちが修理を開始しており、FIAが安全性を認めれば明日のスタートは可能となる。

 明日の日曜日はわずか3SS/51.94kmのみが残されてのみとなっており、1分近いアドバンテージを手にしたタナクがスウェーデン初勝利を飾ることになるのか注目が集まる。最終日のオープニングSSリケナスは現地時間9時51分(日本時間15時51分)にスタートする。