WRC2021/02/27

タナク、連続最速タイムでアークティックをリード

(c)Hyundai

(c)Toyota

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 2021年世界ラリー選手権(WRC)第2戦アークティック・ラリー・フィンランドは金曜日に初日を迎え、オイット・タナク(ヒュンダイi20クーペWRC)が2つのステージで連続してトップタイムを奪ってラリーをリード、チームメイトのクレイグ・ブリーン(ヒュンダイi20クーペWRC)が16.2秒差で続き、ヒュンダイ・モータースポーツが1-2態勢を築いている。

 ラリー・スウェーデンのキャンセルに伴い、フィンランド第二のWRCとしてラップランドで開催されることになったアークティック・ラリー・フィンランドは、期待どおりにフルスノーの素晴らしいコンディションのなかでスタートすることになった。

 ショートフォーマットでの開催となるラリーは金曜日の朝にシェイクダウンが行われたあと、午後からサッリオヤルヴィ(31.05km)の2回の走行が行われる。北極圏でおそらく最も美しい地形を走ると言われるサッリオヤルヴィは、流れるようなハイスピードのセクションをもち、終盤には狭くテクニカルなセクションを併せ持つ。

 このステージでベストタイムを奪って発進したのはタナクだ。朝のシェイクダウンでも最速タイムをマークした彼は7番手という走行ポジションを味方に快走、同じく9番手という後方からスタートしたブリーンに3.6秒差をつけてラリーをリードする。昨年のラリー・エストニアのリザルトを彷彿とさせる1-2態勢でヒュンダイがリードすることになった。
 
 それでもタナクはステージエンドでいまのペースに満足しているわけではないと述べることになった。「完璧とは言い難い。まだかなりアンダーステアがあったからね。とても要求が厳しいステージだったよ。コンディションは素晴らしかったし、もちろん楽しかったが、まだ先は長い」

 そのタナクより速いペースを見せたのはロヴァンペラだ。彼はステージ中盤までタナクを1.9秒上回る最速タイムで駆け抜けたが、ジョンクションでワイドになってしまい、マシンはスノーバンクに吸い込まれそうになる。マシンを止めそうになりながらも幸いにも脱出に成功した彼はここで12秒あまりも失うことになったあとも再びペースアップ、タナクから10.6秒差、ブリーンからは7秒遅れの3番手タイムをマークすることになった。

「スノーバンクの中でしばらくはまってしまったんだ。ジャンクションでワイドになり、リヤをヒットしたんだ。タイムはそんなに悪くなかったが、再びこういうミスを犯すことはできない」とロヴァンペラは悔しそうに語った。

 SS2はサッリオヤルヴィの2回目の走行となり、マシンはナイトポッドを装着して完全な暗闇のステージに臨んでいる。ステージがスタートする時点での気温は0度と予想外に暖かく、雪と氷のコーナーは走行によって深くわだちが刻まれ、ところどころはアイスのない小石混じりのグラベルが露出している。

 闇夜のコーナーではスタッドタイヤから幾筋もの火花が散り、そのたびにスタッドが耐えきれずに脱落する。そうなると瞬く間にタイヤはグリップを失うことになるため、すべてのドライバーがタイヤのマネージメントと戦うことになった。

 オープニングSSでトップタイムを叩き出したタナクは、ここでも連続してベストタイムを奪い、チームメイトのブリーンとの差を16.2秒差へと広げることになったが、もっと最悪の事態になることを覚悟したとステージエンドで告白した。「序盤はタイヤに非常に優しく走ったが、10kmを過ぎた地点で、まだ20km残っているのに、タイヤが終わったと思った。出来る限りタイヤに気を配ったが、非常に固い路面だったので、難しかった」

 2位で初日を終えたブリーンは自身のパフォーマンスを喜びながらも、タイヤの外側のスタッドをほぼ失った状態だ。「いい感じだったよ。真っ暗な森の中で時速200km/hで走るのは特別なものだ。でも、ここは少し頑張りすぎた。スタッドを失うリスクがあるとは思っていなかったので、最後の方でスタッドレスを完全に失ってしまった」

 ロヴァンペラは、ここではタナクから9.8秒遅れの2番手タイムも、フロントタイヤのグリップを失って攻められなかったと苦い表情だ。首位のタナクからは20.4秒遅れとなってしまった。「良くなかった。ステージはグラベルが多く露出し、非常に悪いコンディションだったので、フロントタイヤは完全に駄目になり、終盤でかなりタイムを落としたよ」

 ティエリー・ヌーヴィル(ヒュンダイi20 クーペWRC)は最初のステージを終えて、ロヴァンペラの1.8秒後方につけていたが、SS2の終盤でパンクを疑いペースダウン、首位からは29.8秒差、ロヴァンペラから9.4秒遅れの5位につけることになった。「終盤はアンダーステアが多くて、パンクしていると思っていたので、スピードを落としてしまった」とヌーヴィルは語った。彼は新しいコドライバーのマルテイン・ウィダーゲとの暗闇のステージでもコンビネーションがうまくいっていることを喜びつつも、「はっきりと理解するのが難しいことがあるので、そこを改善していかなければならない」と語った。

 ヌーヴィルから2.2秒差の5位には雪のなかでのコーナーに苦戦したというエルフィン・エヴァンス(トヨタ・ヤリスWRC)が続き、さらに2.5秒差にはホームイベントのテーム・スニネン(フォード・フィエスタWRC)がつけている。

 勝田貴元(トヨタ・ヤリスWRC)、SS2の終盤にイン側の大きな丸太にぶつかってパンクしてしまい、スニネンから4.2秒差の7位につけることになった。「ナイトステージは非常に挑戦的だった。クレストが多く、前方が見えないのでとても怖かったよ!ステージ終盤にパンクしたので、スピードを落とさなければならなかった。トリッキーなステージを生き延びたので、嬉しいよ!」

 一番手の走行ポジションでコースオープナーとしてステージに臨んだセバスチャン・オジエ(トヨタ・ヤリスWRC)は最初のステージを走りきったあと、「自分のステージには満足しているしが、素晴らしいタイムは出ないと思う」と厳しい表情で告白することになった。残念ながら彼は予想したとおりに最初のステージでトップから22秒差、SS2でも27秒を失って、初日は49秒遅れの8位と厳しいスタートとなった。

 オリヴァー・ソルベルグ(ヒュンダイi20クーペWRC)はSS1ではマシンを止めてリバースギヤを使うシーンもあったが、SS2では4番手タイムを奪ってオジエを抜き、WRカーデビュー戦にもかかわらず初日7位につけることになった。それでも彼はステージからは学ぶことだらけだと天真爛漫の笑みをみせている。「多くのことを学んでいるよ。最初のステージですでにフロントタイヤはすでにグリップがダメになっていたし、マシンを止めてリバースしなければならなかった。本当に楽しんで、そして少しずつ理解してきたよ」

 明日の土曜日は勝負を決めるラリー最長となる。オープニングステージのムスタランピは、現地時間9時8分(日本時間16時8分)のスタートとなる。明日の最高気温は−1度とまたしても暖かい1日になると天気予報は伝えている。