WRC2019/07/14

タナクがエストニアをリード、2位にミケルセン

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 WRC公式プロモーショナルイベントとして初めて開催されているラリー・エストニアは9SS/91.82kmで争われた初日、トヨタGAZOOレーシングWRTのオイット・タナク(トヨタ・ヤリスWRC)が7つのステージでベストタイムを奪い、2位のアンドレアス・ミケルセン(ヒュンダイi20クーペWRC)に33.4秒の差をつけてリードしている。

 一番手というスタートポジションからステージに挑むタナクにとってルースグラベルが覆う路面は、いかに母国ラウンドとはいえチャレンジを強いられるかとも思われたが、彼はそんなハンデをものともしない走りで14.56kmのオープニングSSマーリッツァにおいて2番手タイムのエルフィン・エヴァンス(フォード・フィエスタWRC)に5.8秒差、3番手のミケルセンに10秒差をつけてトップで発進することになった。「ルースグラベルが多かった。路面の掃除をしなければならなかったが、いい走りができたよ」とタナクは幸先のいいスタートを喜ぶことになった。

 続くSS2は平均速度が120km/hを超えた目が覚めるようなハイスピードステージ。雲間から青空がところどころ顔を覗かせるものの、小雨がときおりパラつくなか、タナクはここでも後続に1kmあたり0.74秒もの大差をつけるベストタイム、ジャンプの着地の衝撃でスロットルに問題を抱えて50秒近くを失ったエヴァンスを抜いて、ミケルセンが2位に浮上することになった。

 タナクは、小雨が降り始めたマーリッツァの2回目の走行となるSS3では後方の2輪駆動のマシンが刻んだわだちに苦戦しながらも連続してベストタイムを奪い、リードを20.6秒へと広げており、完全に逃げ切り体制だ。だが、続くSS4ではミケルセンが0.2秒差ながら初めてのベストタイムを奪って反撃を開始する。

 ラリー・フィンランドから投入される新しいエアロダイナミクスをもつフロントスポイラーのi20クーペWRCを駆っているミケルセンは、「僕らはここにはテストを目的として臨んでおり、けっしてタイムだけを狙っているわけはない。セットアップを変更しながらのチャレンジだ」と語ったものの、いいタイムとなって結果が現れたことに彼は満足したように笑みをみせた。

 しかし続く、9.30kmのSS5でタナクはミケルセンに7.6秒差をつけるベストタイム、ステージエンドでそのタイム差を知ったミケルセンは「タナクのタイムは僕には不可能だよ・・・」と首を横に振る。

 タナクは平均速度が135km/hを超えたハイスピードのSS6でもこの日5つ目となるベストタイムを奪ってみせたが、「僕らはクリーンな走りを続けている。いくつかのセットアップを試しながらやっているが、ここではそれはうまく行かなかった」と、いくつかの試行錯誤があることを認めつつも、ラリー・フィンランドにむけた実戦テストがきわめて順調に推移していることはタイムが証明している。

 午後になって降ったり止んだりしていた雨は夕方以降次第に大粒となってやわらかな路面を湿らせることになったが、タナクのスピードを鈍らせることはなく、彼はSS6、SS7のロングステージでの連続してベストタイムを奪い、2位のミケルセンに33.4秒差をつけて初日を終えている。

 ミケルセンから12.9秒差の3位にはエサペッカ・ラッピ(シトロエンC3 WRC)が続いている。スリッパリーなオープニングSSでは5番手タイムと苦しいスタートになったように見えたが、路面がクリーンになるや、彼はじょじょにペースをアップ、SS8では2番手タイムを奪うなど高速ステージでのリズムを見つけたように見える。

 ラッピの22.9秒後方にはエヴァンス。SS2のトラブルで8位まで後退した彼だが、その後は好タイムを連発、最後のSS9エルヴァ・ショートステージではトップタイムを叩きだして4位まで挽回している。エヴァンスの3秒差の5位には初めてのヒュンダイi20クーペWRCでの参戦となったクレイグ・ブリーンがパンクに見舞われながらも安定したペースを刻んでつけている。

 久々のラリー参戦で「最終ステージではもうさすがに体力を使い切った」と語ったエストニアの伝説のドライバーでもあるマルコ・マルテイン(フォード・フィエスタWRC)を押さえる総合7位につけたのは、ここでも驚く速さをみせた17歳のオリヴァー・ソルベルグ(フォルクスワーゲン・ポロGTI R5)。今季のラトビアでERC史上最年少勝者に輝いた彼は2番手で続く地元エストニアのライナー・アウス(シュコダ・ファビアR5)を1分18秒あまり引き離してR5クラスでトップとなっている。

 R5クラスの3位はフィンランド・チャンピオンのエーリック・ピエタリネン(シュコダ・ファビアR5)が続き、Mスポーツの新しいフォード・フィエスタR5 Mk2で出場したテーム・スニネンは、ぶっつけ本番のラリーながら少しずつニューマシンの走りを引き出してポディウム圏内まで3秒差の4位につけている。
 
 また、スニネンとともに新しいフィエスタR5 Mk2で参戦したトヨタGAZOOレーシング・ラリーチャレンジプログラムの勝田貴元は、オープニングSSを5番手タイムでフィニッシュ、「序盤にあった大きなジャンプでシャープな着地をしてしまい、そのあと自信をもって飛ばせなくなった」と語っていた。彼はフロントのリップスポイラーを破損しており、その結果、ハンドリングも悪化したものと見られるが、それだけでなく冷却系に問題があることが発覚、彼はロードセクションで無念のリタイアとなっている