WRC2021/03/01

タナクが今季初優勝、ロヴァンペラが選手権首位に

(c)Hyundai

(c)Toyota

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 2021年世界ラリー選手権(WRC)第2戦のアークティック・ラリー・フィンランドは28日に最終日を迎え、金曜日のオープニングステージから一度も首位を譲らずに最終日を迎えていたヒュンダイ・モータースポーツのオイット・タナク(ヒュンダイi20クーペWRC)が今季初勝利を飾ることになった。

 最終日は高速ステージとして名高いアイッタヤルヴィ(22.47km)の2回の走行のみが残された短い1日となる。首位のタナクは24.1秒という大きなマージンを得て最終日を迎えているが、2位のカッレ・ロヴァンペラ(トヨタ・ヤリスWRC)と3位のティエリー・ヌーヴィル(ヒュンダイi20クーペWRC)の二人の差はわずか1.8秒。4位のクレイグ・ブリーンと5位のエルフィン・エヴァンスの差も10.1秒、6位のオリヴァー・ソルベルグ(ヒュンダイi20クーペWRC)と7位の勝田貴元(トヨタ・ヤリスWRC)の差も7.6秒にすぎないため、最終順位がどうなるのかまだまったくわからない状況だ。

 オープニングSSで素晴らしい速さをみせたのはエヴァンスだ。この週末最速となる平均速度133.3km/hの最速タイムでステージを駆け抜けた彼は、4位のブリーンに3.6秒差に迫ってプレッシャーを掛けることになった。

「本当に高速のステージだった。序盤はグリップの高さに非常に驚いた。おそらく昨日のことを思い出したんだろうけど、恐らく僕は慎重にスタートしすぎたね。でもその後はうまく適応し、良いペースを掴むことができた」とエヴァンスは語った。

 一方、ブリーンは、昨夜のサービス終了間際にギヤボックスからオイル漏れが見つかったが、時間がないため修理を断念、最終日の朝の15分のサービスでメカニックたちがギヤボックスの交換作業を見事に行い、見事、TCへ遅れることなくステージに臨んでいた。早朝のドラマをうまく生き延びたブリーンは、「チームの皆に相応しい方法で恩返しができればいいが・・・。彼らは今朝、素晴らしい仕事をしてくれたが、僕はまだ彼らに報いてない」とステージエンドで語ったが、エヴァンスが迫ってきた今、少しプレッシャーを感じているようにも見えた。

 ロヴァンペラとヌーヴィルの2位争いもさらにヒートアップしている。ロヴァンペラは最初のスプリットではヌーヴィルに0.7秒の遅れを喫してのスタートとなったが、終盤に挽回して2番手タイムを奪うことになった。それでもヌーヴィルも0.1秒差の3番手タイムで続き、ロヴァンペラの1.9秒リードで残すところ最終ステージのみとなった。

「このステージはあまり良くなかった。今週末はかなり難しかった。思うようなペースではなく、マシンに苦労した場所も多かった。最終ステージで挽回したい」とロヴァンペラは語る。一方のヌーヴィルはペースノートのペースに不満があることを認め、逆転できるかどうか確信を持てないでいるようだった。「どうかな。僕たちは良い走りができたが、ペースノートは少し遅かった。ペースノートに集中するのが難しいので、少し慎重な走りになったかもしれないが、ここではベストを尽くした」

 首位のタナクはここではトップタイムのエヴァンスから5.9秒遅れの6番手タイムにとどまったが、19.2秒のギャップを保っている。ノーサービスで連続して最後のパワーステージを走るためにここではスタッドを温存するためにペースをコントロールしたのだろう。「ギャップのことは考えないで走る方が楽だね。次のステージをやり遂げることがもっと重要だ」と彼はステージエンドで語っていた。

 ステージのあとには長いインターバルがあり、ドライバーたちはロードセクションでタイヤを入れ替えて空気圧をチェック、最後のパワーステージへと向かう。気温はじわじわと上昇し、昼過ぎの気温は3度に達している。ステージの雪は緩み、1回目の走行によって深いわだちが刻まれ、ライン上のアイスは削りとられて凍結したグラベルがそこらじゅうで露出した難しいコンディションとなっており、波乱のドラマで始まることになった。

 6位につけていたオリヴァー・ソルベルグ(ヒュンダイi20クーペWRC)が中間スプリットまでは暫定トップタイムで駆け抜け、驚くべき野心の高さをみせたが、ステージゴール目前でハイスピードでスピンしたためにポジションを1つ落とすことになった。この結果、勝田貴元(トヨタ・ヤリスWRC)が昨年のスウェーデンでの9位を上回り、モンテカルロで達成したパーソナルベストリザルトに並ぶ6位でフィニッシュ、ここでも着実な成長をみせることになった。

 エヴァンスとブリーンの4位争いは、終盤にかけてタイヤのグリップを失ったエヴァンスが安全なペースに切り変え、2番手タイムを奪ったブリーンがそのポジションを守きることになった。「今週末は精神的にかなり厳しかった。エストニアで多くを達成できたことから、目標点は突如高いものとなった。もちろん、本当は僕は勝利を達成したかった」と、ブリーンはヒュンダイでの今季初イベントで高い野望があることを告白した。

 最終日のハイライトともいえるロヴァンペラとヌーヴィルの2位争いは、プレッシャーをものともしない走りでパワーステージを制したロヴァンペラが2位を守りきってみせた。「今週末は当然首位争いをしたかったが、ミスをしてしまってペースが上がらなかった。週末の間は常に全力でプッシュしていた。出来ることをすべてやったので、ここで2位を獲得できて幸せだよ」とロヴァンペラは語っている。

 ヌーヴィルは2.3秒差の3位に終わることになったが、金曜日を3番手という走行ポジションで挑んだことを考えれば最高の結果とも言えるだろう。週末を通して、新しいコドライバーのマルティン・ウィダーゲとの関係がまだ完璧ではないことに彼は繰り返し不満を述べてきたが、最終ステージをフィニッシュしたあとコクピットのなかで二人はかたい握手を交わしていた。

 タナクは最終的に17.5秒差をつけて首位でフィニッシュ、パワーステージでは4番手タイムに終わったものの、フィンランドで初開催されたウィンターWRCイベントを制して今季初勝利、ヒュンダイに移籍後、昨年のラリー・エストニアに続く2勝目を飾ることになった。

「今週末はトヨタの母国に来たので、彼らがとても強いと予想していた。プレッシャーはあったし、戦いは非常に複雑になると分かっていた。とくにロヴァンペラは強いと予想されていたので、プレッシャーは確実にあったが、最終的には非常に良い週末を過ごすことができたよ!」

 また、初日は一番手でコースオープナーを務め、2日目にはスノーバンクでスタックしたセバスチャン・オジエ(トヨタ・ヤリスWRC)はドライバーズポイント圏外の20位でフィニッシュ、パワーステージでどうにか1ポイントを獲得してフラストレーションが溜まる週末を締めくくっている。

 アークティック・ラリー・フィンランドを終えて、ドライバーズ選手権ではランキングは大きく動くことになり、開幕戦でパーフェクトな勝利を飾ったオジエはトップの座を失い、今回2位でフィニッシュしたロヴァンペラが39ポイントで首位に立つことになった。2位は35ポイントのヌーヴィル、3位にオジエとエヴァンスが31ポイントで並び、開幕戦ノーポイントだったタナクが27ポイントで5位へと浮上し、トップ5が12ポイント差で拮抗した状況となっている。

 また、マニュファクチャラー選手権は、開幕戦で1-2勝利を飾ったトヨタがアークティックを終えて88ポイントを獲得して首位をキープするも、ここで 1位と3位のWポディウムを奪い返したヒュンダイが77ポイントを獲得して反撃に成功、22ポイントのビハインドを跳ね返して11ポイントへとその差を縮めている。

 次戦はおよそ2カ月のインターバルのあと4月22〜25日に初開催されるクロアチア・ラリーとなる。ザグレブ近郊で行われる未知なるターマックラウンドでライバルを出し抜くために、チームはどのような準備を計画しているのだろうか。