WRC2019/07/15

タナクが母国エストニアで2年連続優勝

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 WRC公式プロモーショナルイベントとして初めて開催されたラリー・エストニアは14日に最終日を迎え、トヨタGAZOOレーシングWRTのオイット・タナク(トヨタ・ヤリスWRC)が最終日に行われた6つのステージすべてにおいてベストタイムを奪い、2位のアンドレアス・ミケルセン(ヒュンダイi20クーペWRC)に1分3.5秒という大きな差をつけて圧勝を飾り、2週間後に開幕するラリー・フィンランドにむけて完璧な準備を整えることに成功した。

 前夜に降った雨によって水を含んだやわらかなグラベルステージが舞台となったラリー・エストニアの最終日も、タナクのベストタイムで幕を開けることになった。初日にコースオープナーを務めたにもかかわらず、2位のミケルセンに33.4秒の差をつけて最終日を迎えたタナクは、オープニングSSでは2番手以降に1kmあたり0.86秒もの差をつける、まさしく飛ぶような速さをみせた。

 だが、タナクは続くSS11をフィニッシュ後、あわててマシンを下りてタイヤをチェックする。「クルマはどこも悪くないが、パンクをしてしまった。タイヤがリムから外れそうだったのでタイムのロスがあったよ」。だが、このトラブルにもかかわらず、彼の速さを妨げるライバルが現れることはなかった。タナクはここでもベストタイムを奪うや、続くSS12でも連続ベストタイムを出してミケルセンとの差を52.8秒へと広げてサービスへと帰ってきた。

「朝からいいスタートになった。マシンの調子もいいね。ここはフィンランドではないが、僕らがほしいマシンに非常に近づいている。僕らは今日も常に改善しようと思っているし、このサービスでもすべて変更するつもりだ」とタナクはラリーをリードしていることより、マシンの仕上がりが重要だと語った。

 タナクは残された3ステージでも3連続のベストタイムを奪取。とくにSS14サベルナではWRCではここ20年間記録されたことがなかった平均速度140km/hを超える141.4km/hというとてつもないステージ最速記録をマーク、このエストニアのハイスピードステージで誰もが届かない速さを見せつけて勝利を飾ることになった。

 昨年もエストニアの勝利のあと、ラリー・フィンランドで初勝利を飾っているだけに、タナクはフィンランドの連勝にむけて手応えを感じたようだ。

「素晴らしい週末になった。エストニアは素晴らしい観客がいる、素晴らしいラリー王国だね。チームはこのラリーまでに裏舞台ではさまざまな作業を行ってきただけに、この結果を持ち帰ることができてよかったよ。もちろんフィンランドは別のラリーだし、難しさはあるが、マシンはとてもいい仕上がりだと自信を得ることができた」

 2位で最終日をスタートしたミケルセンがセットアップに自信がもてずにペースに苦しむなか、エサペッカ・ラッピ(シトロエンC3 WRC)は朝から連続して2番手タイムでミケルセンまで8.9秒差まで迫ったが、彼はSS13でジャンプで横むきになって着地した際にタイヤがリムから脱落してしまったために15秒近くをロス、セッティング変更によって自信をとりかえしたミケルセンが終盤で2番手タイムを奪ってラッピの追撃をしのいで2位を守り切っている。

 初日の朝にスロットルのトラブルで8位まで後退したあと4位まで挽回したエルフィン・エヴァンス(フォード・フィエスタWRC)だが、最終日の湿った路面ではペースを上げられずに4位、初めてのヒュンダイi20クーペWRCでの参戦となったクレイグ・ブリーンは「ミスをしないで経験を積む週末にする」という誓いどおりに最終日もクリーンな走りで5位でフィニッシュしている。

 また、エストニアのレジェンドドライバーでもあるマルコ・マルテイン(フォード・フィエスタWRC)は連続するジャンプの着地で首を痛めながらも総合6位でのゴールを迎えている。

 17歳のオリヴァー・ソルベルグ(フォルクスワーゲン・ポロGTI R5)は最終日、SS13でパワーステアリングのトラブルに見舞われてヒヤリとすることになったが、地元エストニアのライナー・アウス(シュコダ・ファビアR5)に1分28.5秒という大差をつけてRC2クラスを制している。

 アウスは、フィンランド・チャンピオンのエーリック・ピエタリネン(シュコダ・ファビアR5)の猛列なプッシュから逃げ切り、1.1秒差をつけて2位を死守している。

 昨日のSS1のパンクでRC2クラス最下位の14位まで後退したニコライ・グリアジン(シュコダ・ファビアR5)は、ソルベルグを上回る9SSでベストタイムを奪う快走を見せて追撃、最終ステージで新しいフォード・フィエスタR5 Mk2でのペースに苦しむテーム・スニネンを2秒差で逆転して4位でフィニッシュした。

 トヨタGAZOOレーシング・ラリーチャレンジプログラムの勝田貴元にとっても新しいフィエスタR5 Mk2のデビュー戦は予想外のトラブルに苦しい戦いを強いられることになった。初日のオープニングステージ後にラジエーター破損でリタイアとなった彼は、最終日もジャンプの着地でラジエーターにダメージを負うとともにファンベルトが断裂するトラブルに見舞われて、SS11のあとでリタイアとなっている。