WRC2019/04/27

ヌーヴィル、大荒れアルゼンチンの首位に浮上

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 世界ラリー選手権第5戦のラリー・アルゼンチンは、数日間にわたって降り続いた大雨の影響が残るステージで数々のドラマが発生するなか、ヒュンダイ・モータースポーツのティエリー・ヌーヴィル(ヒュンダイi20クーペWRC)が金曜日をリードしており、セバスチャン・オジエ(シトロエンC3 WRC)が11.9秒差の2位で続いている。

 前日までの雨こそ上がっていたものの、オープニングSSとなったラス・ハバダス〜ビージャ・デル・ディケ(16.65km)の柔らかい砂質のコースは全域にわたってウェットコンディションとなっており、あちこちに深い泥のたまった大きなパッチや水たまりや川が生じており、曇り空の下で行われた火曜日のレッキとはまったく異なるトリッキーなコンディションにドライバーたちは苦しむことになった。

 もしもこの日のステージがほんのわずかの水分を含んだ路面であれば、一番手でコースインした選手権リーダーのヌーヴィルにとってはもっと好都合だったかもしれないが、水たまりのハイドロプレーニングと格闘しながら13秒遅れの9番手タイム、2番手のポジションでコースインしたオジエも8.2秒遅れの8番手タイムと沈むなか、5番手のポジションからラリーをスタートしたクリス・ミーク(トヨタ・ヤリスWRC)がベストタイムを奪い、木曜夜のスーパーSSで首位に立ったチームメイトのオイット・タナク(トヨタ・ヤリスWRC)に0.7秒差に迫ることになった。

 しかし、ミークはステージエンドでこのタイムはけっして果敢に攻めた結果ではなかった首を横に振る。「道路の大半は泥だらけで、オーケーな場所は数カ所しかなかった。僕たちが予想していたものとは違うよ。面白い変化だが、僕はドライバーではなく、時々、まるで乗客のように感じたよ」

 アンドレアス・ミケルセン(ヒュンダイi20クーペWRC)が3番手タイムでミークの後方2.3秒差、ダニエル・ソルド(ヒュンダイi20クーペWRC)もさらに1.3秒差の上位で続いている。

 続く、SS3アンボイ〜ヤカント(29.85km)はステージ前後にアクセスするロードセクションの路面コンディションが悪く、主催者はセーフティカーと医療用の車両の通過が困難なことからキャンセルを決めている。

 この日2つめのステージとなったSS4サンタ・ローサ〜サン・アグスティン(23.44km)は先のステージほど水たまりはなく、路面はやや乾き始めているようにも見えたが、ところどころにマディなコーナーが待ち受ける。3位につけていたミケルセンも5kmすぎで左フロントをパンクして8位に後退したほか、オジエがゴール前にリヤをスライドさせてオフしかかるなど波乱のドラマが起きるなか、ヌーヴィルがベストタイムを奪って9位から4位までジャンプアップを果たすことになる。

 タナクはステージ序盤のスプリットでヌーヴィルを1秒以上上回っていたが、後半でペースを落として10秒を失い、ここで2番手タイムを奪ったミークが7秒差をつけて首位に浮上することになった。さらにここでWRC通算出場200回を達成したヤリ-マティ・ラトバラ(トヨタ・ヤリスWRC)が3位にポジションを上げたため、ここでトヨタが1-2-3体制を築くことになった。とはいえ、2位のタナクから7位のソルドまで9秒と離れていない。

 朝のループの最後のステージは、わずか6kmにすぎないSS5パルケ・テマティコ・スーパーSSではやや乾き始めたコンディションのなか、1番手で走行したヌーヴィルが2番手タイムで5.4秒差の2位に浮上、2番手スタートのオジエもペースを上げてタナクと並び6.6秒差の3位につけることになる。6番手と後方スタートのミークは7.3秒遅れのタイムで後続に大きく詰め寄られたが、難しいコンディションのなかでラリーリーダーとしてサービスに戻って来られたことを喜んだ。「黒いマッドがある場所でクルマを走らせるのは複雑だった。今年のアルゼンチンはチャレンジングだが、ラリーをリードできているのはうれしいよ、まだ先が長いとしてもね」

 朝のループで思ったほどタイムが上がらなかったようにも見えるタナクだが、きわめて冷静だ。「問題があったわけではない。ステージの表面について正確に図るのは困難だったからね。僕らはコンディションを理解して、(午後のループにむけて)クルマのセットアップにも取り組まなければならない」と語り、トリッキーなコンディションのなかで走りもセッティングも戦略をセーフティサイドに振っていたと明かしている。

 ところどころにマディなコーナーが残るものの、コース全域で路面は乾き始めている午後のループで、タナクは素晴らしいペースをみせることになった。SS6でフロントガラスにヒビが入りながらもベストタイム、首位のミークに0.7秒差に迫った。ミークは3.8km地点でスライド、ワイドになってバンクにヒットしたため右側に小さなダメージを負っているが問題はないようだ。

 朝のループではキャンセルとなったアンボイ〜ヤカント(29.85km)はロードセクションの路面コンディションの改善から午後のループでは行われることになった。タナクはここで首位のミークを20秒近く上回るベストタイムで一気にラリーリーダーに浮上することになった。タナクはウォータースプラッシュのあとエンジンのパワーを一瞬失ったと明かしたものの、「午後は自分のベストが出せている」と自信の笑みをみせる。

 これに対して、ミークはステージエンドで柔らかい路面のコースがひどく荒れていたと遅れた理由を説明したが、タナクよりこれほどの差をつけられただけでなく、ヌーヴィルとオジエにも抜かれて4位へと後退することになったことにひどくショックを受けることになった。「コースがあまりにカットされすぎていてまるで2回目の走行のようだった。前を走る男たちのタイムに関して何も解答できないよ・・・」

 この日に残されたのはサンタローザ〜サン・アグスティンの2回目の走行のみ。首位のタナクは、11.4秒差の2位に浮上したヌーヴィルを従えており、この最終ステージを快調なペースで走りきるかにも見えたが、多くのラリーカーの走行でラフなコンディションとなっていたこのステージでまさかのドラマが待っていた。なんとタナクはドライブシャフトに問題を抱えてヘアピンでスピン、切り返しにも手間取り24.8秒を失って3位へと後退することになった。

 これでヌーヴィルが首位に浮上、11.9秒差の2位にはC3の不安定な挙動に手こずりながらもオジエが続いている。彼はSS6ではイン側のバンクに乗り上げてあわや横転の危機に見舞われている。

 タナクは首位から13.4秒差、オジエのわずか1.5秒後方の3位で金曜日をゴールすることになった。「金曜日は小さな問題もあったが、最大の問題はドライブシャフトが壊れたことだ。我々はほとんどのステージでトップタイムを出していた、しかしそのトラブルのために大きな遅れとなったが、明日はいい車を取り戻すことができるはずだよ」

 一時首位を走っていたミークは最後のステージで3速ギヤを失いながらもタナクから14.7秒差の4位で続いている。

 また、朝のパンクで3位を失ったミケルセンも、その後はペースを維持して8位から5位まで順位を戻してきており、エルフィン・エヴァンス(フォード・フィエスタWRC)はウォータースプラッシュのあとのミスファイアに悩まされながらも6位で続いている。

 エサペッカ・ラッピ(シトロエンC3 WRC)は朝のトリッキーなコンディションのなかでバンクにヒット、リヤタイヤをパンクしたために9位と出遅れており、さらに最終SSで激しくクラッシュ、リタイアとなってしまった。ラッピとコドライバーのヤンネ・フェルムには幸いにもケガはなかったが、マシンがコースを半分ふさいだため赤旗が出されることになった。そして、この赤旗に救われそうなのは後続のラトバラだ。

 ラトバラは朝のループでは一時3位につけていたが、セットアップの問題からペースを落とし、さらにSS6でのパンクで7位へと後退しており、このSS8でも左リヤをパンクしてスロー走行しながらラッピの横をパスしており、1分42秒遅れをどこまで救済されたノーショナルタイムが与えられるか気になるところだ。

 雨によって一筋縄ではいかないコンディションとなったアルゼンチンだが、明日の土曜日も33.65kmというラリー最長のクチージャ・ネヴァダ〜チャラカトが待ち受けるなど、まだまだタフなステージが残されており、最前線はまだまだ激しく揺れ動きそうだ。