WRC2021/10/17

ヌーヴィルがDAY2を席巻、エヴァンスは16.4秒差

(c)Hyundai

(c)Toyota

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 2021年世界ラリー選手権(WRC)第11戦ラリー・デ・エスパーニャのDAY2が行われ、ヒュンダイ・モータースポーツのティエリー・ヌーヴィル(ヒュンダイi20クーペWRC)がリードを広げ、2位のエルフィン・エヴァンス(トヨタ・ヤリスWRC)に16.4秒差をつけて2019年に続く2度目の勝利にむけて快走している。

 DAY2の舞台はおなじみのタラゴーナ東北エリアとなり、サヴァヤー(14.08km)、ケロール〜レス・ポブレス(19.17km)、エル・モンメル(24.40km)の3ステージのあとサービスをはさんで午後も同じ3ステージをループ、最後にホストタウンのサロウに戻って2.24kmのサロウ・スーパーSSで1日を締めくくる7SS/117.54kmの一日だ。

 すべてのドライバーがハードタイヤを5本選択してこの日の朝のループにむかったが、オープニングステージのSS7サヴァヤーはグラベルノートクルーが走ったときにはドライだったものの、路面は濃霧によってかなり湿り気を帯びており、このステージだけならソフトタイヤをミックスさせたほうが良好なグリップが得られたかもしれないとも思われるコンディションとなっていた。

 多くのドライバーたちが視界とグリップに苦しめられるなか、このコンディションにも臆することなくベストタイムを奪ってスタートしたのはヌーヴィルだ。前日の午後の3ステージを制して、エヴァンスを逆転して0.7秒差をつけて土曜日を迎えたヌーヴィルは、ここでリードを2.4秒差へと拡大してみせる。

「スタートは良かったよ。予想以上に路面はカットで汚れていて、さらに霧があったので視界も悪かった。簡単ではなかったが、いいステージが走れたと思う」とヌーヴィルは語った。

 前日は選手権のランキング順でのスタートティングオーダーだったが、この日、金曜日の順位でのリバースとなる。WRカー最後尾の10番手で走ったヌーヴィルと同様に9番手で走ったエヴァンスもまた前車が走るたびにカットによって土や小石がまき散らされたコーナーでは苦しんだと告白、そのパフォーマンスには満足していないと語った。「走りに満足できない。ちょっと慎重になり過ぎて、コミットが足りなかった。思いきりの良さが欠けていたよ」

 ヌーヴィルはSS8ケロール〜レス・ポブレスでさらにペースを上げたかのようにエヴァンスに4.3秒の差をつけるベストタイムを奪ってリードを6.7秒へと拡大するや、SS9エル・モンメルでも3連続ベストタイム、朝のすべてのステージを制してエヴァンスに9秒差をつけることになった。

「このステージでもカットされたコーナーでの汚れがかなりあるため、僕らはパンクのリスクを避けるために、賢いアプローチをしようとした。それがなければもっと速く走れたと思う」とヌーヴィルは語った。「昨日は3番手スタートだったので路面がきれいだったが、10番手になった今日の朝のループは本当に汚れていて、正直なところ予想を超えるものだった。何が起こっても不思議ではない」

 ヌーヴィルはカットでダーティになった路面で慎重になったと言いながらも、際立つ速さをみせたが、対照的にエヴァンスは前日とはまったく異なる路面にセットアップをうまく合わせることができずにマシンにコミットできなかったと認めている。

「マシンのフィーリングが合わなかったんだ。いくつかの微妙な変更を行ったが、昨日のようにスイートスポットを見つけるのに苦労している。走行順の違いによって昨日の朝と今朝の路面はかなり違っている。これが昨日の朝の速さと今朝の違いになっていると思う。後方を走っていると明らかに汚れが多く、昨日の朝のコンディションよりも僕たちにより合ってないように思う」

 朝のループを終えて3位にはセバスチャン・オジエ(トヨタ・ヤリスWRC)が続いているが、この日もペースはけっしていつもの彼らしくないものだ。5.4秒差あった4位のダニエル・ソルド(ヒュンダイi20クーペWRC)との差は朝のループを終えて0.2秒差へと縮まってしまった。

「いくつかの点は改善されたが、全体的にスピードがあまり上がっていないので、そこが問題だ。全体的なバランスには少し満足しているが、より汚れた場所で苦労したよ」とオジエは語っている。ドライバーズ選手権のためにもポジションは落としたくないところだが、そのために危険なダーティな路面でどれだけリスクを負えるかどうか彼は悩んでいるようだ。「ダニと戦いたいと思っているが、もっと努力して、もう少しリスクを受け入れる必要があるということだ」

 初日にクラッシュしたオイット・タナク(ヒュンダイi20クーペWRC)はシャシーにダメージがあるため、土曜日のリスタートを断念しており、ヒュンダイのマニュファクチャラー選手権にむけた戦いはますます後がない状況となったが、ヌーヴィルとともに4位につけるソルドもまた前日よりも明らかにペースを上げており、SS5エル・モンメルの2番手タイムをはじめ、朝の奮起によってオジエを表彰台から引きずり下ろすところまで迫ってきたかにも見えた。

 それでも、午後のループが始まると、オジエがやっと目を覚ましたかのようにペースをアップ、SS10サヴァヤーではベストタイムを奪ったヌーヴィルから1.4秒遅れの2番手タイム、さらにSS11ケロール〜レス・ポブレスではヌーヴィルと並ぶベストタイム、さらにSS12エル・モンメルでもベストタイムを重ねてソルドとの差を5.6秒へと広げてみせた。

 ソルドは午後のロングステージで引き離されたものの、この戦いを楽しんでいるかのようにふり返っている。「今日の午後は、ちょっと大変だったね。オジエが『セバスチャン・オジエモード』でプッシュしている! 僕たちもプッシュしたが、今日の午後は彼がタイムを奪っていってしまったよ」

 ヌーヴィルはSS12エル・モンメルでは、この日、初めてベストタイムを奪うことはできなかったものの、この日のすべてのステージでエヴァンスを抑えきってレースを完全にコントロール、土曜日の恒例となった最後のSS13サロウ・スーパーSSも制してリードを16.4秒へと拡大してこの日を終えることになった。

 ヌーヴィルは満足そうにここまでの流れをふり返っている。「すべてがうまくいっているときは、もちろん気持ちがいいし、ドライブするのが楽しい。朝のコンディションは悪く、ステージが非常に汚れていたので、簡単な一日ではなかったが、ルートノート・クルーからの情報を信頼して走ることができた。僕たちは今日も最速タイムを6回記録できたんじゃないかな。なので、悪くないと思う」

 エヴァンスはステージごとにいくつものセットアップを見直しながらも、ヌーヴィルを打ち破る突破口を見いだすことができなかったとクヤしそうに語っている。「正直なところ、満足していない。これは僕らが望んでいた結果ではない。今日の午前中は、あまりいい感じではなかったが、午後になるとさらに悪くなった。苦戦していたいくつかのエリアは改善されたが、クルマの全体的なバランスが悪くなってしまった」

 オジエは3位を死守するために3つのロングステージでは渾身の走りをみせてソルドに5.7秒差をつけたが、最後のサロウ・スーパーSSでエンジンをストール、ソルドとの差は1.2秒となってしまった。

「エンジンがストールした。いつものようにクラッチを踏んでいたのに、ストールしてしまったんだ」とオジエは不満そうに語っている。しかし、彼はやっと期待どおりのセットアップに仕上がりつつあると認め、最終日の3位を守る戦いには自信をもっているようだ。「ラリーの序盤は、僕たちにとって厳しいものだったが、マシンにずっと取り組んできて、ようやく調子が上がってきた。ラリー中にこれほどマシンを変更したことはないが、少なくともペースは良くなってきている」

 カッレ・ロヴァンペラ(トヨタ・ヤリスWRC)はSS7で3番手タイムを奪って4位のソルドまで11.7秒後方まで迫ったが、SS8でスピン、さらにSS9ではフロントグリルに雑草をつまらせてフィニッシュするという苦難に見舞われており、ソルドとの差は32.4秒へと拡大して2日目を終えている。

 Mスポーツ・フォード勢は、プレイベントテストを行わないでスペインに臨んでいたが、アドリアン・フールモー(フォード・フィエスタWRC)はSS8で2番手タイムを叩き出してふたたび才能の片鱗をみせることになった。しかし、彼は、SSケロールでガードレールに接触してパンク、さらにステアリングアームを曲げてドライブシャフトを失ったことで20位まで後退して土曜日を終えることになった。

 チームメイトのガス・グリーンスミス(フォード・フィエスタWRC)は朝のループのパンクのために9位にポジションを落としていたが、午後のループではフールモーのセットアップを取り入れてペースアップ、6位で土曜日を終えている。

 絶対完走を目指していたヒュンダイ2Cコンペティションのオリヴァー・ソルベルグ(ヒュンダイi20クーペWRC)は6位につけていたが、終盤のクラッチトラブルで7位に後退している。また、WRカーデビュー戦となったニル・ソランスはSS7で6番手タイムを出すなど素晴らしいペースを見せ、終日素晴らしいおもちゃを手に入れた子どものように嬉々としてi20クーペWRCをはしらせており、チームメイトから7.9秒差の8位につけている。

 また、金曜日のSS1でガードレールにクラッシュしてリタイアとなった勝田貴元(トヨタ・ヤリスWRC)は土曜日にリスタート、ダートがでている難しいコンディションのなかで自信をとりもどすために手探りでペースを上げることになったが、SS12エル・モンメルでは5番手タイムを奪ってみせた。

 明日の最終日は、サンタマリアとリウデカニエスという2つのおなじみのステージをノーサービスで2回ループする4SS/50.90kmの1日となり、リウデカニエスの2回目の走行がパワーステージとして行われる。オープニングステージのサンタマリアは現地7時(日本時間14時)のスタートが予定されている。