WRC2019/10/27

ヌーヴィル首位快走、タナクが初王座に近づく

(c)Hyundai

(c)Toyota

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 2019年世界ラリー選手権(WRC)第13戦ラリー・デ・エスパーニャのレグ2が土曜日に行われ、ティエリー・ヌーヴィル(ヒュンダイi20クーペWRC)が首位に浮上、チームメイトのダニエル・ソルド(ヒュンダイi20クーペWRC)が21.5秒差で続いているが、その後方には4連続ベストタイムを叩き出したトヨタGAZOOレーシングWRTのオイット・タナク(トヨタ・ヤリスWRC)が3位へと浮上、ヒュンダイの1-2-3態勢を切り崩し、初のワールドチャンピオン獲得に大きく近づくことになった。

 ターマック・ステージへと舞台を移すスペインの土曜日は、サヴァヤー(14.08km)、ケロル(21.26km)、エル・モンメル(24.40km)の3ステージをサービスをはさんで午後もループ、最後にホストタウンのサロウに戻って2.24kmのサロウ・スーパーSSで1日を締めくくる7SS/121.72kmの一日となる。サービスパークの上空には青い空が広がり、雨の心配はなさそうだ。

 オープニングSSのSS7サヴァヤーでベストタイムを奪ってスタートしたのはヌーヴィルだ。選手権をリードするタナクに有利な状況には変わりないが、ここで優勝すればヌーヴィルにもまだ逆転チャンピオンの可能性は残されている。ヌーヴィルは、初日トップのセバスチャン・ローブ(ヒュンダイi20クーペWRC)を抜いてここで首位へと浮上する。「良い感触が持てたよ。若干のアンダーステアはあったが、それ以外はクルマの感触はとても良くて、ステージを楽しむことができたよ」

 ここで2番手タイムを奪ったクリス・ミーク(トヨタ・ヤリスWRC)がダニエル・ソルド(ヒュンダイi20クーペWRC)を抜いて3位へと浮上、前日から続いてきたヒュンダイの1-2-3態勢に切り込むや、彼はトヨタのマニュファクチャラータイトル争いのためにさらにペースを上げることになる。だが、彼は続くSS8ケロルをスタートしてすぐの左コーナーでスライド、ワイドになったマシンはリヤからガードレールに激突、右のリヤタイヤが吹き飛んでしまい、彼のラリーはここで終えることになってしまう。

 ヌーヴィルはこのステージでも連続してベストタイム、2位のローブとの差を7.5秒に広げ。ソルドが3位を取りかえしたことで、ふたたびヒュンダイが1-2-3態勢でふたたびラリーの主導権を握ることになる。ソルドの11.5秒後方にはタナク、さらに7.8秒をおいてチームメイトのヤリ-マティ・ラトバラ(トヨタ・ヤリスWRC)が追い掛ける。

 このままゴールすれば初のドライバーズタイトルに大きく近づく可能性があるだけに、タナクはここまで着実なペースを守ってきたが、チームがミークを失ったことで戦略を変更するしかない。彼はSS9エル・モンメルでベストタイムを奪って反撃ののろしを上げる。「今のところクルマのパフォーマンスに関してはいい状態だ、あとは僕たちが良いリズムを掴んでいくことだが、いいフィーリングだったよ」

 このSS9でヌーヴィルはステージ中盤からブレーキに問題を抱えて4番手タイムに終わるも首位をキープして朝のループを終えることになる。2位につけるローブもターマックのペースを掴みかねており、ここではタナクから6.5秒も遅れた7番手タイムに終わったことを知って首を横にふる。「慎重すぎた。ダートがでていたからね。ミスをしたくなかったんだ。でも、マシンには問題はなかった」

 ソルドも9.8秒差の背後に迫ったタナクがギヤを切り変えたことに気づいているようだが、ミークのクラッシュを見たあとだけにペースを上げられない。「クリスがコースをオフしたのを見た後、集中力を少し失った。ダートがでているところではナーバスになりすぎているかもしれないが、選手権のためにもミスだけはしたくないが、タナクが迫ってきている」

 タナクがこの日の午後みせたスピードはヒュンダイ勢にとってはいっそう脅威だったはずだ。タナクはSS10、11、12と3連続ベストタイムを刻んで、ペースが上がらずに2位をソルドに譲ったローブまで1.4秒差に迫ってみせた。

 タナクはこの日最後のサロウのスーパーSSでローブを抜いて3位へと浮上、さらに2位のソルドにも3.1秒差に迫ってゴールを迎えている。「今朝は僕たちは明らかにあまり良い状況にいなかった。自信が完全に持てないときは上手く出来ないので、一歩ずつ進むしかなかったが、リズムがついてきた。明日のステージはかなり難しいが、がどうなるか楽しみだ」

 ソルドに21秒差、3位のタナクに24.6秒差をつけて首位でサービスへと帰ってきたヌーヴィルは、「タナクが後方でプッシュしているので、僕たちもプッシュを続け、このリードを持って明日を迎えられることがうれしいよ。ここまではいい仕事ができているし、このままポジションを守りきりたい」と自身の仕事に満足していると語った。しかし、ヌーヴィルとタナクが明日このままのポジションでフィニッシュし、パワーステージでヌーヴィルがタナクを上回ることができなかった場合にはタナクの初タイトルが決まることになる。それだけに、彼の気持ちは複雑だ。「・・・今日のタナクは速かった。そういうとき僕たちにできることはあまり無い」

 首位から46.8秒差の5位には、この日の朝、ブレーキのフィールに苦しみペースが上げられなかったラトバラが続いている。彼は砂がコースを覆ったサロウのスーパーSSではワイドになってコンクリート壁にリヤをヒットさせたが、幸いにもサスペンションを壊すことなくゴールを迎えている。

 6-7位にはMスポーツ・フォードのエルフィン・エヴァンスとテーム・スニネンの2台のフォード・フィエスタWRCが続き、前日の油圧系トラブルで28位まで後退したセバスチャン・オジエ(シトロエンC3 WRC)が8位まで挽回してきた。

 9位で土曜日を迎えたトヨタGAZOOレーシング・ラリーチャレンジプログラムの勝田貴元(トヨタ・ヤリスWRC)にとっては不運な朝となってしまった。オープニングSSのスタートを前にしてギヤボックス・トラブルが発生、30分あまりも遅れてスタートしたがギヤがシフトできない状態に苦しめられることになってしまう。それでもデイサービスでギヤボックスを交換したあとはコンスタントに9番手タイムを刻んで、44位でこの日を終えている。

「一生懸命に直してくれたチームのおかげで、マシンの調子は良くなったよ。今朝は良い経験を逃してしまったが、僕はターマックではたくさん上達する必要があるので、明日どうなるか見てみたい」と勝田は明るい表情で前向きに語っている。

 明日の最終日はリウデカニエスとラ・ムッサーラとの2つのステージをサービスをはさんで2回ループする4SS/74.14kmという短い一日となる。はたしてタナクがこのままワールドチャンピオンに輝くことになるのか。スペインの最終日は波乱が起きることでもよく知られるだけに、最後までまだまだ予断は許されない。