WRC2021/01/29

パンク多発もピレリはWRCデビュー戦に満足

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 ラリー・モンテカルロでは新しいコントロールタイヤであるピレリのデビューが注目されたが、パンクによる被害が目立つことになったが、ピレリのラリー活動マネジャー、テレンツィオ・テストーニは、WRCでのカムバック戦についてはその総合的な評価では満足できるレベルにあったと語っている。

 優勝したセバスチャン・オジエでさえ金曜日の午後、首位で迎えたSS6でパンク、34秒を失って一時3位までポジションを下げたほか、カッレ・ロヴァンペラも最終日、3位から4位へとポジションを落としている。もっとも悲劇だったのはオイット・タナクだ。1本のスペアタイヤしか持たない状態で臨んだ土曜日の朝のループで2つのステージで連続してパンク、2本のタイヤを失ってラリーからの離脱を余儀なくされている。

 タナクは1回目のパンクのときにはペースノートになかったルースロックにヒットしたと明かしたが、オジエはパンクした直後、「僕らはこのタイヤがパンクに非常に弱いことを知っていたが、残念ながらそれは起こってしまった」と耐パンク性に当初から疑問を持っていたことを明かしている。

 こうしたパンクがどのような状況で発生したのは詳しくはわかっていないが、パンクの数が多かったことから、新しいピレリがパンクしやすいタイヤであるように見えたことは確かだ。だが、その一方でスタッドが想像以上に脱落しにくい特性を発揮していた。

 これはタナクがダブルパンクに見舞われた土曜日の朝のループにおけるヒュンダイとトヨタのタイヤ選択の違いにも見てとれる。トヨタはスタッド2本をスペアで搭載、ヒュンダイはスタッド1本のみを搭載していたが、しかもそれは使用済みの中古タイヤを主体とした組み合わせだったという。そして最初のステージこそ、ベストタイムはオジエだったが、雪とアイスがほぼ全域を覆っていた2つめのステージではティエリー・ヌーヴィルがベストタイムを奪ったが、なんとそれはオジエに42秒(!)もの大差をつけるものだった。ヌーヴィルはすでに前日、タイヤ選択のミスとスピンによって1分近くの遅れを喫していたため、5位と低迷していたが、最終的に3位の表彰台のチャンスを生むことになったのはこのステージのベストタイムであり、その速さに影響を与えたのが中古タイヤだったと言われている。

 ヌーヴィルがこのときのタイヤに関してコメントを控える一方、オジエは次のように証言している。「僕は(雪とアイスのステージでは)中古スタッドを履いた方が競争力があると感じていた。僕は5本の(中古)タイヤで行きたいと思っていたし、チームは安全な方法で行くことに決めた。僕は、エルフィン(・エヴァンス)も同じようにしたら安全な方法で行こうと言ったんだ。しかし、ミスをしてタイムを失ったが、運がいいことにドラマはなかったことは確かだ」

 この不思議な状況を生んだのは、ピレリのスタッドの脱落防止性能が優れていたことが考えられている。もしアスファルトの路面が露出していれば新品のスタッドタイヤのゴムのほうがグリップを生んだだろう。しかし、SS10でドライバーたちが経験したのはほぼ全域が雪に覆われていた。このステージではゴムが摩耗し始め、スタッドが新品時よりも多く突出した中古タイヤの方が大きなグリップを生んだ可能性があるという。

「判断は難しいし、タイヤの経験が少ないので、何がベストなのかを知るのは難しい」と証言するのはエルフィン・エヴァンスだ。彼もまたこのステージではヌーヴィルに46秒もの大差をつけられている。

「新しいタイヤの方がスタッドがしっかりしているので、よりグリップが良い場合もある。タイヤが使われると、明らかにスタッドは新品時よりゴムからはみ出すようになり、それによってグリップが増すことがある。場合によってはね」

 タイヤにとってもシーズンで最も難しいイベントと言われるモンテカルロで、テストーニはピレリが総合的には満足できるレベルだったと分析している。

「週末のすべてのデータを調査、分析し、モンテカルロの結果について我々がとても満足しているということを報告できる」とテストーニは語っている。

「この数年の雪と比較して、多量にあったコース上の氷と泥によって、グリップはこれまでにないほど低かった」

「それにもかかわらず、我々のウィンタータイヤのソットゼロは、スタッドもスタッドレス双方とも、素晴らしいレベルでのパフォーマンスを発揮し、通常のようにラリーを走ることを可能にしてくれた」

 テストーニは、デフレーションのレベルについても、ミシュランがマニュファクチュアラー・チームに供給を行なってきたこの数年とそれを一致していた、と付け加えている。

「それだけではなく、タイヤのスタッドがすべて保たれており、かなりのドライバーたちも驚いていた」

「パンクに関しては、タイヤのダメージにつながった破損したホイールリムのことを言った方が正確なのかもしれないが、このラリーでは例年と同じレベルにあったということだ」