ERC2020/11/08

ミケルセンがハンガリー首位快走、ブリーン2番手

(c)ERC

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 ヨーロッパ・ラリー選手権(ERC)第4戦ラリー・ハンガリーは、レグ1を終えてトップスカーズ・ラリーチームからスポットで参戦するアンドレアス・ミケルセン(シュコダ・ファビアRally2エボ)がラリーをリードしており、選手権リーダーのアレクセイ・ルクヤヌク(シトロエンC3 R5)はタイムコントロールに早着するミスによって表彰台は不可能なポジションまで転落している。

 ラリー・ハンガリーの土曜日のオープニングステージとなったSS2ウイウタでベストタイムを奪ってラリーをスタートしたのは、サンテロック・ジュニアチームのルクヤヌクだ。前日の雨がところどころ路面を湿らせているが、「滑りやすいところでは慎重に、速いところでは速く、という感じで、ペースをうまく管理できている。いいスタートになったよ」と彼は満足した笑みをみせることになった。前夜のスーパーSSではスタートでエンジンをストールさせるミスによって5.3秒ものビハインドを喫したが、一気に2番手まで浮上することになった。

 SS2を終えてルクヤヌクを0.3秒差ながら上回ってラリーをリードすることになったのはミケルセンだ。昨年12月のモンツァ・ラリーショー以来のラリー参戦となった彼は、ラリー最長となる23.90kmのSS3フュゼールではスピンを喫してリバースギヤを使うことになったために10秒あまりをロスしたにもかかわらずトップタイムをマークして首位をキープしてみせる。

 ルクヤヌクはSS3ではミケルセンから0.2秒遅れ、SS4でも0.5秒後塵を拝して少しずつだが引き離されることになる。さらにSS5マッドではボンネットピンが破損して少しずつ視界を妨げることになり、5.1秒遅れで朝のループを終えることになった。

 ブリーンは、SS2のステージ終盤に差し掛かったジャンクションでブレーキをロックさせてエンジンをストール、10秒ほどタイムを落とし、さらにSS3ではスピン、SS4ではスペアタイヤが緩んで動き回る問題に見舞われながらも朝のループを15秒遅れの3位につけている。

 午後のループも上位勢の接戦が期待されたが、SS6のスタート時間が現地時間の15時20分から8分遅れのスケジュールに変更されるというわずかな問題が選手権リーダーのプランを台無しにすることになる。

 トップを争っているミケルセンよりも10秒も遅れたタイムでフィニッシュしたルクヤヌクは憮然とした表情で、「5分早着してしまった」と言葉少なくコメントする。タイムコントロールに早くチェックインした場合、1分ごとにラリータイムに1分のペナルティが加算されることになる。5分という致命的な遅れを喫した彼は何があったのか聞かれて、「僕のミスではない」と答え、今年から新しいコドライバーとなったドミトリー・エレメーフに指示のミスがあったことを認める。

 ルクヤヌクのミスによってこのステージでベストタイムを奪ったブリーンが首位のミケルセンから14.3秒遅れの2位へと浮上する。しかし、それ以上に注目されることになったのは3位につけるオリヴァー・ソルベルグ(シュコダ・ファビアRally2エボ)の存在だ。

 ソルベルグはERC1ジュニアをリードするとともにERCの総合タイトル争いでもルクヤヌクから42ポイント差の2位で続いていたが、ルクヤヌクが今やポイント圏外の26位まで転落してしまったことから、タイトル争いでも挽回する大きなチャンスが到来したからだ。

 朝のループではタイヤのミスもあって4番手にとどまったソルベルグだが、午後のループで反撃を開始してSS6では3番手タイムで3位に浮上していた。だが、彼はせっかくいい流れを活かしきれない。SS7でストローベイルにヒットしてパンクを喫して5位まで後退、さらに彼はSS9では2度目のパンクを喫して2分36秒あまりも遅れた9位へと転落、挽回を逃すことになった。

 首位のミケルセンはこうした後続のトラブルなど関係ないかのように安定したペースを刻み、土曜日の8ステージのうち5ステージでベストタイムを奪い、2位のブリーンに対して23.6秒差をつけてこの日を終えることになった。

「とても良い一日だった。僕らは攻めたが、マシンは限界にとどまっていた。そして明日にむけていいギャップを保っている。これ以上のことは望めない」とミケルセンはステージエンドで語った。

 選手権リーダーのルクヤヌクは18位まで挽回してはいるものの、トップ10までポジションを戻すのはもはや不可能な状況だ。2位につけるブリーンは、選手権では68ポイント差と大きく遅れてはいるものものの、このままルクヤヌクがノーポイントになった場合には、シーズンは2戦残されているだけにタイトルの可能性も出てくる。それでも彼は、まずは目の前の難しい一戦をゴールすることに集中する考えだ。「僕らにとっては表彰台に上がれたら最高だ。パンクやミスをしないようにしなければならない」とブリーンは語っている。

 しかし、ルクヤヌクにとって選手権の最大のライバルであるソルベルグがトラブルに見舞われたことは好都合であり、彼は最終ステージのあと「どうするか今夜考える」と意味深なコメントを残し、日曜日のステージを走ることなく、このままリタイアする可能性をほのめかしていた。

 ソルベルグの後退によって、ERC1ジュニア選手権についてもリーダーが変わる可能性がでてきた。7ポイント差でERC1ジュニア2位につけるグレゴワール・ムンスター(ヒュンダイi20 R5)はSS7の小さなオフに続いてSS8ではマディな高速コーナーで全開でコースオフ、「人生で最も大きな瞬間を過ごした」と彼はふり返ったが、幸いなことに立ち木の間をすり抜けてマシンがストップしたためダメージなくコースに復帰、初日を終えてブリーンから57.7秒差の総合3位、ERC1ジュニアをリードすることになった。

 チームMRFタイヤのエミル・リンドホルム(シュコダ・ファビアRally2エボ)は表彰台へ猛チャージしていたが、暗闇のなかで行われたこの日の最終ステージでコースオフ、そのままリタイアを喫し、4度のハンガリー・チャンピオンであるノルベルト・ヘルチグ(フォルクスワーゲン・ポロGTI R5)に4位を譲ることになっている。ヘルチグは3位のムンステルからは35秒遅れとはいえ、前戦ラリー・ファフェ・モンテロンゴで初めてERC表彰台に立っているだけに、その勢いを維持して母国ラウンドでも初表彰台のチャンスを狙う。

 昨年のERC3ジュニア王者であるエフレン・ヤレナ(シトロエンC3 R5)はSS3の泥だらけのヘアピン出口でスピンし、6位から8位にポジションを落としたが、その後は安定したペースで5位につけている。

 ニコラス・マイヤー-メルンホフ(フォード・フィエスタRally2)は、SS6でコースオフしてスタックしたにもかかわらず6位に浮上するなど上位キープが期待されたが、このときのオフでマシンにいくつかの技術的な問題を抱えてしまい終盤にペースダウン、ERCジュニア王者のマリヤン・グリーベル(シトロエンC3 R5)に6位を譲り、7位へと後退している。

 また、チェコ期待の若きスター、エリック・ツアイス(フォード・フィエスタRally2)は金曜のスーパースペシャルで4位につけていたが、SS2でオフしてスタックしたために4分近く遅れて40位まで後退してしまったが、その後はSS9で2番手タイムを奪うなど巻き返すペースをみせて13位まで挽回している。

 前戦のERCラリー・ファフェ・モンテロンゴで2位に入ったフランス・チャンピオンのヨアン・ボナート(シトロエンC3 R5)は、金曜日のスーパースペシャルではスタートのミスから20秒を失った後、挽回が期待されたが、朝の滑りやすいターマックで苦戦することになった。SS3ではスタックして観客に助けられたほか、SS5ではパンクに見舞われた彼は午後になると少しずつペースをつかみ、15位までポジションを戻している。

 金曜日の夜に開催されたスーパースペシャルでトップタイムをマークして初めてラリーリーダーとなったミコワイ・マルツィック(シュコダ・ファビアRally2エボ)にとって失望の朝となってしまった。彼はこの日のオープニングSSからリヤデフがオーバーヒート、わずか2つのステージで1分あまりをロス、さらに午後のループでもパンクによるタイヤ交換を強いられて、初日は16位となっている。

 ERC2では、地元のヒーローであるティボール・エルディJr(三菱ランサーエボリューション)が選手権のライバル、ゼリンド・メレガリ(スバルWRX STI)に4分あまりの大差をつけてラリーをリードしている。ERC3ジュニアでは選手権リーダーのケン・トルン(フォード・フィエスタRally4)がSS5のパンクで首位を選手権のライバルであるペップ・バッサス(プジョー208 Rally4)に一度は譲ったが、再びトップに浮上しており、27.9秒の差をつけてレグ2に臨む。