WRC2021/07/19

ラリー後会見:「僕の代わりに父が泣いてくれた」

(c)Toyota

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―カッレ、おめでとうございます。WRCで初優勝を果たし、トヨタのチーム代表であるヤリ‐マティ・ラトバラの記録を抜いて最年少で表彰台の最上段に立ちました。今の心境はいかがですか?

カッレ・ロヴァンペラ:「もちろん、とてもとても嬉しい。この順位を獲得するためにこれまで多くの仕事をしてきたし、このラリーではクレイグと良い戦いができたと思う。金曜日は彼から猛烈なプッシュがあり、彼も非常に速かったので、勝利できてうれしい」

―土曜日の朝の最初のステージで、リードが大きく開きました。その時点で、勝利するためのアドバンテージを築くという点で十分な仕事をしたと感じましたか?

ロヴァンペラ::「金曜日はかなり接戦の状況だったが、土曜日の朝、最初のステージで大きな差をつけることができ、ループのその後のいくつかのステージでも差を広げることができたので、ギャップはかなり大きくなり、それをうまく利用することができた」

―今日はギャップがあったものの、トリッキーなステージもありましたが、どうでしたか?

ロヴァンペラ:「今日は、ドライブを楽しむくらいのペースで、減速しすぎて愚かなミスをしないようにしようと思っていた。それがうまくいった。フィーリングはとても良く、驚くことに、大きなプレッシャーなどは感じなかった。コックピットの中ではずっと落ち着いていたので、楽しかった」

―あなたは若いにもかかわらず、かなり冷静な方ですが、フライング・フィニッシュに向かって勝利を確信したときの気持ちはどうでしたか?

ロヴァンペラ:「フィニッシュしたときには、ようやく勝利を手にすることができたことに非常にホッとしたし、プレッシャーから少し解放されるのも感じた。もちろん、とても嬉しいし、最高の気分だったよ。プレッシャーから解放されて良かった」

―感動の涙はありましたか?

ロヴァンペラ:「なかったと思う。でも、その役は父がうまくやってくれたよ」

―今後はさらに頻繁に勝利を狙いますか?

ロヴァンペラ:「僕もそう願っている」

―この勝利は、今後の自信につながりますね。

ロヴァンペラ:「もちろん自信にはなるが、僕たちはまだ経験がまだ足りていないので、道のりはまだまだ長い。これからも同じように、いい走りをして、クリーンなレースをして、表彰台を増やしていくしかないと思う」

―ブリーン、素晴らしい活躍です。昨年の自己最高位である2位に匹敵する成績を残しました。あなたがWRCで最後にグラベルを走ったのが昨年のこのイベントだったことを考えると、素晴らしいペースでした。このラリーで再び表彰台に上がれると思っていましたか?

クレイグ・ブリーン:「まず、ありがとう。もちろん、できる限りのことをしようという野心はあったが、ラリーの前にはいくつか不安があった。昨年、ここで好成績を収めたときは、COVIDの影響で6〜8ヵ月間、皆がストップしていた後だった。だから皆にとって少し公平だったが、しかし今年は、他の皆は3つのグラベルラリーを終えてそのままこのラリーに参戦しているので、僕にとってはより難しい課題になると思っていた。でも、最終的にはうまくいったので、とても満足している」

―カッレが言ったように、とても良いペースで金曜日を終えて土曜日に突入しました。差は僅か8.5秒で、非常に接戦になると思っていたのに、カッレは土曜日最初のステージであの走りをみせました・・・。

ブリーン:「驚いたよ!」

―土曜日の最初のステージで彼のタイムを見たとき、どう思いましたか?

ブリーン:「見事だったと言わざるを得ない。非常に印象的で、特別なものだった。僕は正直、自分のできるベストを尽くした。僕が違うことをしたとか、何か間違ったことをしたとか言っても意味はない。あの時、僕とポール(・ネーグル)にできることはそれがすべてだった。少し悔しさはあるが、このようなナローな場所で、道が少しトリッキーで未知の場所では、最後の1パーセントどころか、最後の0.5パーセントを確保することも難しく、ただ流れに身を任せるしかない。彼がそれを成し遂げた後は、僕たちは残りの時間を別の目標で過ごすことになった。驚かされたよ。ラジオで彼のタイムが表示されたとき、最初にポールに言ったのは、これは本当に本当にすごい、ということだった。だから、彼に脱帽だ」

―金曜日には、ガス・グリーンスミスのダストに巻き込まれたり、コースに飛びだしてきたマーシャルにスローダウンさせられたりしましたね。そのようなストレスの多い状況下でも、タイムを取り返しましたが、コックピットで非常に落ち着いてみえたのは、コドライバーのポール・ネーグルのおかげもありますか?

ブリーン:「公平に見て、ポールが僕をコントロールしてくれていた。金曜日は奇妙な一日で、奇妙なことがいくつも起きて、僕たちのリズムを邪魔していた。ガスのこともあったし、次のステージではガスが止まったのに、マーシャルが道路の真ん中で僕を止めようとしたので、僕は50メートルか100メートルほどロードモードになってしまった。その後、何も問題がないことに気付いたが、気持ちを100%フラットアウトに戻すのは難しい。金曜日はその点で少し不満があったが、全体的にはとても満足している。そして土曜日にはかなり期待を持って臨んだが、土曜朝のステージでこの男(カッレ)に大きな差をつけられてしまった」

―ティエリー、総合3位ですが、金曜日はパンクで午前中は難しい戦いになりましたが、午後は本当によく挽回してイベントの最後までオジエの前を走り続けました。この結果には満足していますか?

ティエリー・ヌーヴィル:「僕たちにとって厳しい週末になることは分かっていたよ。リスクを冒すことがレースの重要な部分となるこのようなハイスピードなラリーで、僕はそこまで勇敢だったとはいえないからね。だから厳しくなることは分かっていた。でも僕の最大の目標はセバスチャン(・オジエ)とエルフィン(・エヴァンス)の前でフィニッシュすることだったし、こうしてまだ選手権タイトル争いの中にいることができている。僕はチャレンジが少ない方でまだまだすべてがオープンな状態にある、だからこそ今週末はハードに戦って彼らよりも前にいるようにしたかった。残念ながら出だしは、最初の方のステージの1つでいきなりパンクするという15秒ほどを失うというあまりいいものではなかった。それでも土曜日に巻き返すことができて、今日もこうしてオジエとの差を広げて、さらにパワーステージのポイントも二人よりも多く獲得することができた」

―昨日は一日ずっとオジエを抑えることができました、今朝は彼が一歩を踏み出すことがないように、プッシュする必要があると感じていましたか?

ヌーヴィル:「僕はこれまでに何度もセバスチャンと戦ってきて、彼のことは良く分かっている。彼がまだそこそこの速さで走っているのにも驚きはなかったし、彼はそのようにしていた。僕たちは彼の速さについていくことができたし、僕は十分に状況をコントロールすることができていた。もうちょっと速く走れるような気もしていたが、それ以上リスクを冒す気にはなれなかったんだ。自分たちがやっていることで十分だった。それでも僕にとってはキツいラリーだった。今日はいくつかテクニカルな問題が発生して、クルマに多くのストレスがもたらされた、動かなくなることが2度もあって、フィニッシュの2つ前のステージでTCに遅れることになってしまった。最終的に僕たちのリードは10秒差にまで縮まっていた。(ステージエンドで戦略かどうか聞かれたが)もし何か戦略があるとしたら、セバスチャンとは10秒以上の差をつける必要があるとしか考えていなかった。なので、パワーステージも僕たちに非常に重要だった」

―タイムコントロールに遅れたのはスターターモーターのせいということですか?

ヌーヴィル:「そうだ」

―では次のイベント、あなたの母国で行われるイープル・ラリー・ベルギー、象徴的なイベントです。ところで目を気にしているようですが大丈夫ですか、ちょっと花粉症か何かですか?

ヌーヴィル:「いや違う、何か分からない。今朝から右目の痛みに悩まされているんだけど、少しは良くなってきている。見えなくなってしまったのでロードセクションではマルタイン(・ウィダーゲ)がドライブしていた。一日中調子が悪かったけど、最後には仕事はきっちりやり遂げたよ」

―それは良く頑張ったと思いますが、イープル・ラリーに向けての意気込みは?

ヌーヴィル:「とても楽しみにしているよ。またアラン・ペナスに会える、今週末は彼がチームを指揮してくれたけど、彼はすぐに戻ってきてくれるはずだ。それを楽しみにしている。イベントは難易度が高い。過去の経験からそれはよく分かっているし、WRカーでも何度か参戦している。こうした経験がこのようなチャレンジングなレースでは少しでも僕にとってアドバンテージとなればと思う。今度もまた力強い結果を目指して戦っていけることを期待したい」

―では、ヤリ-マティ・ラトバラに聞きますが、WRCで初勝利を挙げることがどれほど特別なことなのかをよく分かっていると思います。2008年のスウェーデンでポディウムの最上段に立った時、あなたは当時最年少となる22歳での優勝を手にしました。そして今度は20歳の彼がその記録を更新しましたが、あなたは、記録は破られるためにある、と話していましたね。カッレがこんなに早くそれを実現すると考えていましたか?

ヤリ-マティ・ラトバラ:「2020年の終わりにカッレのパフォーマンスを見ていてもうすでに、それはその日はいつか来ることだと感じていていたし、今シーズンの初めに、カッレが勝利する高い可能性があると思われるイベントが2つあると言っていたが、それはアークティック・ラリーとラリー・エストニアのことだった。アークティック・ラリーでは彼はとてもいい速さを発揮していたが、残念ながらクルマのセットアップ的にベストではなかったために最終的に優勝を争うまでには至らなかった。それでもカッレにとってとても厳しい4つのラリーでの経験を経て、彼のモチベーションは120パーセントとなり、初勝利を掴むための情熱で彼がシェイクダウンから全力での取り組んできた、そんな彼が勝利するのを見ることができて本当に嬉しい、そして、彼が私の記録を破ったことも、WRC最年少優勝記録がフィンランドの伝統として引き継がれることになって、本当に嬉しかったんだ」

―カッレはすべてを手中におさめているようで、すごく落ち着いていましたが、今日、見ていたあなた方にとって緊張感のある時間でしたか?

ラトバラ:「カッレが非常に落ち着いて、我慢強くやっていた姿を見て、本当に素晴らしいと思った。僕の初勝利の時はあれほど落ち着いて、我慢強くなかったことを覚えているよ。あなたが言うように彼はアイスマンのようだ、これは非常に強みであり、また彼のコドライバー、ヨンネ(・ハルトゥネン)もとても落ち着いている。彼らは二人とも素晴らしい仕事ができている、勝つことというのではなく、ステージ一つ一つに取り組みながら、ミスなく最後までやり遂げるということだ。それ以上にないものだ」

―フィンランドにとってWRC通算180勝目となり、これは素晴らしいものですが、カッレにとっては初めての勝利です。今年もっと見ることができますか?

ラトバラ:「多くの勝利の中の最初の勝利だ。でもカッレ自身が言っていたように、まだ彼が走ったことのないイベントがいくつかある。特に昨年はCOVIDのせいで、シーズンは半分に短縮され、彼ができなかったイベントが多くあった。いくつかWRC2のクルマで走っているものもあるが、WRCのクルマでの経験がない。だから彼にとってもう少し経験が必要となるイベントがいくつかあることは確かだ。それでも、ラリー・フィンランドのようにまた勝利を目指した戦いができそうなイベントも間違いなくある。きっとまたすぐに勝利するところ見ることができるだろう」

(フロアからの質問)
―カッレ、あなたはいつもとても落ち着いていますが、この勝利に不安はなかったですか。それとも自然にそうなると思っていたのでしょうか?

ロヴァンペラ:「僕たちはいくつかのラリーでは優勝争いができると感じていたので、そこに大きなプレッシャーはかけたくなかった。僕はただドライブして、最適な順位と優勝を目指して、あとは自然に任せていた。実現できてうれしいよ」

―ヌーヴィル、まだチャンピオンシップの可能性はあると思いますか?ヒュンダイのペースは良いですが、流れを変えるだけのイベントはあるでしょうか?

ヌーヴィル:「残りのラリーは5つだ。今週末に見たように、ポイントを取り戻すことは可能だ。でも、時にはもっと賢くなって、自分たちの状況を最適化する必要があるが、今回は明らかにそれができなかった。僕は自分の仕事を100%やり遂げたので、これ以上のことはできない」

―カッレ、史上最年少での優勝は、あなたにとって特別な意味を持ちますか?

ロヴァンペラ:「もちろん特別なことだが、記録とかそういうことは、僕はあまり考えたことがない。しかし、ヤリ-マティが僕のところに来て、彼は僕に記録を奪ってほしいと思っていたと言ってくれたのは、もちろん嬉しかった。そのことは僕にとって特別な意味を持っていると思う」

―ブリーン、あなたのパフォーマンスは、チームに対し、あなたがフルタイムのドライブに値するというメッセージになったと感じていますか。また、来年あなたがフルタイムのシートに座る可能性はありますか?

ブリーン:「メッセージになったと思う。僕とポールがそれを目指していることは明らかだ。僕たちは世界チャンピオンになりたいと思っているが、シーズンの半分のラリーで世界チャンピオンになれないことは数学者でなくてもわかる。もちろん、あらゆる選択肢を検討している。今のところ、ヒュンダイで居る場所には慣れているし、快適に過ごせているが、僕にはどうにもできないこともある。フルシーズンのチャンスを見つけて、それを最大限に生かす必要がある」

―若くしてWRCで成功をおさめているあなたはカッレに、成長を続けて行く上で何かアドバイスをしていますか?

ラトバラ:「彼の父親であるハリが本当に良い道を歩んできて、カッレはそんな彼とともに学んできた。そしてこれまで我々と一緒だった同じマネジャーのティミ・ヨウキが今カッレと仕事をしている。私にとっては、彼らはすべてで正しいステップを踏んできた。個人的に私は特別なことは何も言っていない、彼がいいフィーリングを持てるように心がけているのと、チームには家族のような雰囲気があるから、ステージに出る時は自信を持って、可能な限りいい仕事ができる。いつも些細なことはいつも話合ったりしているが、彼にはサファリのあとに「4回連続で結果が悪いラリーが続いても問題ない、僕ななんか5連続でダメだったんだ、だからまだそんなことは気にしなくていい」と言ってある

―チームボスとして1年目、あなたは今年の7戦すでに12回のポディアムと6勝を獲得しています。トヨタチームで特別なことは何ですか?

ラトバラ:「すごく正直にいえば、もちろん、我々は素晴らしい期間を過ごしてきたし、それはまたとてもユニークなものだった。でもパフォーマンス面においては必ずしも我々が最速ではなかったイベントもある。いくつかのイベントではヒュンダイの方が強かったことを現実的にとらえなければならない。彼らが問題を抱えていたことで我々がそのリザルトを受け継ぐ形となっていた。だがラリーの世界では、結果は最後の最後になってでるものだ。1つ挙げられるのは一貫性という要素だが、我々のもとには本当に素晴らしいドライバーたちがいて彼らが素晴らしい仕事をしてくれているが、同時に常に強く、高い競争力を持っている。基本的なことは、先にも言ったように、チームの中のスピリットだと思う、皆に良いスピリットがあれば、皆が100パーセントの力を発揮して、出来る限り最高の仕事をこなしていく。そうなればミスもしない、そしてそれは成長につながり、結果を出すことができるようになる」