ERC2021/06/20

ルクヤヌクがレグ1首位、グリアジンは悪夢Wパンク

(c)ERC

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 2021年ヨーロッパ・ラリー選手権(ERC)開幕戦のラリー・ポーランドは、40秒近くもラリーをリードしていたニコライ・グリアジン(フォルクスワーゲン・ポロGTI R5)が終盤にダブルパンクのためにリタイアとなり、ディフェンディングチャンピオンのアレクセイ・ルクヤヌク(シトロエンC3 Rally2)がレグ1の首位となっている。

 前夜に行われたオープニングステージのミコワイキ・アリーナのスーパーSSでベストタイムを奪ったグリアジンは、気温が30度に達した土曜日の朝、いきなりSS2シウィエンタイノ・ステージでルクヤヌクに13.3秒差をつけるベストタイムで発進することになった。18.20kmのこのステージで1kmあたり0.73秒もの大差をつけた計算だ。

 グリアジンは、この日のスタート順位を決める予選ステージで、深いわだちが刻まれたコーナーでフロントをクラッシュ、ラジエーターにつまったグラベルを取り除いたために大きくタイムを失っており、ラリーリーダーながら土曜日のセクション2を39番手の走行ポジションでスタートしていた。これほどの後方のポジションではダスティなルースグラベルが掃除されてクリーンな有利な路面になることは確かだが、その一方で、柔らかい路面のコーナーではわだちが生まれ、かき出された石がトラブルの原因となるリスクも併せ持つ。

 グリアジンはSS3でも7.2秒差をつけるベストタイム、さらにSS4でもさらに13秒も引き離す3連続でのベストタイムを刻み、朝のループを終えて2位のルクヤヌクに早くも35.9秒差をつけることに成功、ライバルより路面のコンディションが良かったかどうかははっきりとしないが、スタートはうまくいっていると語った。

「スタートはうまくいっている。(SS3で)干し草のベイルにぶつかり、いくつかのコーナーで大きく遅れてしまったが、特別なことは何もなかった」とグリアジンは語った。「まだグリップしない場所もかなりあったので、(路面のポジションが良いので)よりグリップがあったとは言えないが、タイムは悪くないので、このままいけば少しでも差を広げられると思う。しかし、ステージは非常に高速でトリッキーだ。レッキではダストの中で良いペースノートを書くのが難しかったので、ノートの修正にも力を入れる必要があった」

 35秒もの大差をつけられたルクヤヌクだが、これは仕方ないことだと冷静だ。「グリアジンの方が断然きれいな道を走っているからね。ここまでのステージは良かった。もっと道をめいっぱい使いたいが、ラインの真ん中をキープしなければならない。午後になったら路面は荒れるだろうからクリーンに行かなければならない」

 ルクヤヌクは火曜日のテストで本番車をクラッシュさせてしまい、サンテロック・ジュニアチームは急遽、代わりのマシンを準備することになったため、ブレーキバランスやフロントガラスのワイパーが動かないといった問題を抱えながらのスタートとなったが、それでもトーク・スポーツのアンドレアス・ミケルセン(シュコダ・ファビアRally2エボ)に16.3秒差をつけている

 また、チームMRFタイヤのクレイグ・ブリーン(ヒュンダイi20 R5)は朝のステージではミケルセンを上回る速さをみせて一時3位につけていたが、SS4で右リヤタイヤをパンクしてしまい1分20秒近くをロス、7位へとポジションを落としてしまう。

 午後のループでは照りつける日射しのなか、気温は35度まで上昇、タイヤにもマシンにも厳しいコンディションとなっていた。朝のループで完全な走りをみせたグリアジンはSS5でもベストタイムを奪い、リードを40.5秒へと広げてみせる。

 だが、SS6ではルクヤヌクがグリアジンを0.1秒上回る初めてのベストタイムを奪い、反撃を開始したかのようにも見えたが、彼は路面コンディションの悪化を訴える。「セットアップはとてもうまくいっていて、マシンをより信頼できるようになってきた。ステージはかなりダメージを受けているので、プッシュすることはできないが、プレッシャーをかけ続けなければならない」

 2回目のループでは大きなわだちが生まれるなど路面は大きく荒れており、SS7では波乱のドラマが多発することになる。パンクのあと5位まで順位を戻してきたブリーンがクラッシュ、サスペンションを壊してリタイアしたほか、なんとグリアジンもタイヤ2本をパンクしてしまい51秒をロス、10.6秒差で首位から陥落しただけでなく、スペアをこれ以上もたない彼はステージエンドでラリー続行を諦めることになってしまう。

 2018年に続く2度目のポーランドの勝利のチャンスを断たれたグリアジンは、バーストしたタイヤが壊したフロントフェンダーを眺めながら首をうな垂れた。

「タイヤが破壊したようだ。このステージでは砂埃の中を走り、道が見えないほどだった。フロントタイヤが何かにぶつかったのかと思ったが、(サスペンションの)ボルトから起こったようだ。そういうこともある、という感じだ。スペアが1つしかないので、片方のタイヤがない状態で走ることは禁じられている。どうすることもできないよ」

 グリアジンのリタイアによって首位に立ったルクヤヌクは、この日の最終ステージのミコワイキ・アリーナを終えて、ミケルセンに29.7秒の差をつけてトップで土曜日を終えることになった。

「いいフィーリングだった。午後の戦略にも満足しているよ。素晴らしい一日をありがとう。グラベルに戻ってこられたのは素晴らしいことだ。いいクルマ、いいセットアップだったよ」とルクヤヌクは語っている。

 慎重なペースで初日を2位で終えたミケルセンは、「タイヤには厳しい状況だった。とくにSS7ではいくつかのコーナーでマシンが本当に跳ねるくらいにわだちと石が転がり、タイヤを壊さないようにしなければならなかったほどだった」とふり返っている。

 ミケルセンから45.9秒差の3位にはORLENチーム・シュコダ・ポーランドのミコワイ・マルツィック(シュコダ・ファビアRally2エボ)、さらに30秒離れた4位にはヴォイチェフ・フファワ(シュコダ・ファビアRally2エボ)と、二人の地元強豪が続いている。

 5位にはラリー・チーム・スペインのニル・ソランス(シュコダ・ファビアRally2エボ)、6位にはシュコダ・ラリー・チーム・ハンガリーのノルベルト・ヘルチグ(フォルクスワーゲン・ポロGTI R5)、7位にはCHLスポーツオートのヨアン・ボナート(シトロエンC3 Rally2)といった各国の選手権チャンピオンたちが続いている。

 また、朝のループを終えて6位につけていた3度のドイツ・チャンピオンのファビアン・クライム(フォルクスワーゲン・ポロGTI R5)は、ミコワイキのサービスに向かうロードセクションで技術的な問題のためにリタイアとなっている。

 予選5番手タイムで注目されたモータースポーツ・アイルランド・ラリー・アカデミーのデヴァイン(フォード・フィエスタRally2)はギヤボックスに問題を抱えて13位にとどまったほか、シモーネ・カンペデリは、金曜日に悩まされたパワーステアリングの問題が再発したため、今朝のサービスでラリー続行を諦めている。

 新たにRally3マシンの選手権に生まれ変わったERCジュニアは、ジョン・アームストロング(フォード・フィエスタRally3)がリード、昨年のERC3王者のケン・トルン(フォード・フィエスタRally3)はイグニッショントラブルのため4分50秒遅れとなっている。また、2輪駆動マシンによるERC3ジュニアでは、サミ・パヤリ(フォード・フィエスタRally4)がトップに立っている。