WRC2021/07/18

ロヴァンペラがWRC初優勝、20歳の最年少勝者誕生

(c)Toyota

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 2021年世界ラリー選手権(WRC)第7戦ラリー・エストニアは7月18日に最終日を迎え、トヨタGAZOOレーシングWRTのカッレ・ロヴァンペラ(トヨタ・ヤリスWRC)がWRC初勝利を挙げた。この勝利はチーム代表であるヤリ-マティ・ラトバラが持っていた22歳10カ月でのWRC最年少記録を更新する20歳9カ月で達成されたメモリアルウインとなった。

 ラリー最終日は、タルトゥ南部に設けられたネールティ(7.82km)、エルヴァ(11.72km)、タルトゥ・ヴァルド(6.51km)の3ケ所のステージをリフューエルを挟んで2回ループする合計6SS(52.10km)をノーサービスで走る。最後のタルトゥ・ヴァルドの2回目の走行がパワーステージとなる。

 最終日の出走順も前日のリザルトのリバースで3分間隔スタート。ガス・グリーンスミス(フォード・フィエスタWRC)、オイット・タナク(ヒュンダイi20クーペWRC)、ピエール-ルイ・ルーベ(ヒュンダイi20クーペWRC)、テーム・スニネン(フォード・フィエスタWRC)、エルフィン・エヴァンス(トヨタ・ヤリスWRC)、セバスチャン・オジエ(トヨタ・ヤリスWRC)、ティエリー・ヌーヴィル(ヒュンダイi20WRC)、クレイグ・ブリーン(ヒュンダイi20WRC)、ロヴァンペラの順だ。グリーンスミスはパルクフェルメでエンジンの始動に手間取り、タイムコントロールに遅着したため、オジエの後方6番手で最初のステージをスタートすることになった。タイヤ選択は首位グループのロヴァンペラ、ブリーン、ヌーヴィルとルーベがソフト6本を選択。オジエ、エヴァンス、スニネン、タナク、グリーンスミスはソフト5本を選んだ。

 最終日のオープニングステージはSS19ネールティ。このステージは新しいコースで、道幅は狭く、テクニカルな区間が多い。またジャンピングスポットも多く、トリッキーなキャラクターだ。1回目の走行では、ヌーヴィルとタナクのヒュンダイ・デュオがベストタイムを分け合った。ヌーヴィルは「目標はオジエより上の順位に居続けることだ。マシンの感触もかなり良かったし、良いスタートを切れた。スリッパリーでナローだったが、楽しいドライブができたよ」と語った。0.2秒遅れの3番手タイムを記録したオジエは、「トリッキーなステージで、短かった。僕たちにとってはパワーステージのポイントが重要だ。少しでも多くのポイントを得たいので、うまくやる必要がある」と冷静に自身のポジションを見つめている。

 ラリーをリードするロヴァンペラは「ドライビングを楽しみながら、ごく普通の運転ができるのはうれしいけれど、注意深く、確実に行くことを心がけた」とこちらも冷静だ。2位のブリーンとのタイム差は51.2秒ある。

 SS20のエルヴァは2020年も使用されたフォーマットで走る唯一のステージ。路面、グリップの変化に富んでおり、コース中盤の4km地点には4カ所の壮大なジャンプ台がある。一貫して高速コースだが、最後にラリークロス・トラックのツイスティなターマック区間が用意されている。ロヴァンペラもブリーンももはやポジションキープの走りに徹するなか、このステージでは連続してヌーヴィルとタナクが最速タイムを分け合った。

 SS21のタルトゥ・ヴァルドは、サービスパークに隣接するラーディ飛行場の滑走路からスタート。特設されたグラベルコースにはタイトターンやジャンプがいくつもあり、木曜日のスーパーSSで使われたコースに合流してフィニッシュする。ヌーヴィルが3連続ベストタイムを獲得したが、パワーステージを見越してプッシュしたオジエも0.1秒遅れのセカンドベストタイムを刻んでみせた。

 リフューエルを挟んで2回目の走行となるSS22ネールティ。2回目の走行ということもあって路面は轍が深くなっており、スニネンはゴール直前で轍に弾かれてスピンしかかる場面もあった。首位を守るロヴァンペラはステディに4番手タイムを記録。「かなり轍ができていたが、コンディションは十分だった。轍に気を配っていくのはかなりトリッキーだが、大丈夫だ」とWRC初勝利へとひた走る。

 SS23のエルヴァの2回目ではちょっとした異変があった。ステージスタート直前のタイムコントロールにヌーヴィルが遅着。10秒のペナルティを課せられることになったのだ。ヌーヴィルはこのステージでこの日4つめのベストタイムを記録したが、ステージエンドで遅着した理由が戦略だったか聞かれた彼は、むっとしたように「これがどんな得のある戦術となり得るのか、よく分からない」と答える。なにかの技術的な問題があるかどうか判然としないが、ペナルティが加算されたことでオジエとのタイム差は1ステージを残して10.7秒となる。

 ラリーのフィナーレとなるタルトゥ・ヴァルドのパワーステージを前に、首位ロヴァンペラ、54.6秒差の2位にクレイグ・ブリーン、24.5秒差の3位にヌーヴィル、10.7秒差の4位にオジエ、エヴァンス、スニネン、ルーベというオーダーだ。

 注目のパワーステージ、まずタナクが1回目の走行でヌーヴィルが記録したタイムよりも6.2秒速い暫定ベストを記録する。「ベストタイムになりそう?」という問いかけにタナクは「そうは思わない。もはや僕にとってそれほど重要なことではないけれど、チームにとっては大切だからね」と語った。とはいえ、コースは轍が掘れてコンディションが荒れており、後続ドライバーは苦戦している。「まるで電車を走らせているように轍が深かった」とオジエも4位でラリーを終えたものの、タナクのタイムには届かない。

 ヌーヴィルもタナクに2.7秒遅れの2番手タイム。「最善を尽くしたと思う。 再び僕たちにとって厳しい日曜日だった。多くの技術的な問題もあって、すべてをより複雑にするけれど、それもまたゲームの一部だ。今は、このラリーでチームを去るアラン・ペナスに感謝したいと思う。彼はチームのためにたくさんのことをしてくれた」とラリーを振り返った。

 ブリーンもステディに走り切って、ヒュンダイにとって値千金の2位を得た。「良い週末だった。僕は十分に楽しんだし、このリザルトは嬉しい。アラン(・ペナス)に感謝したい。アダモは僕にチャンスを与えてくれたが、それを紹介してくれたのはアランだった」と語った。

 そして記録の掛かったゴール。ロヴァンペラは、プレッシャーを感じさせることなくWRC初勝利をもぎ取る。「ここまでたしかに難しいシーズンだった。初めてのWRC勝利をエストニアで手に入れたのはナイスだよ。ここはほとんどホームラリーみたいなものだから。ここまでのシーズンでなかなか結果に恵まれなかったけれど、自分たちのペースが正しかったことをようやく証明できて、結果を持ち帰ることができた」と、若きフライングフィンは勝利を噛み締めるように淡々とコメントしていたが、ポディウムで彼の到着を待っていた彼の父ハリは感極まり、チーム代表のラトバラと抱き合ってこの歴史的な勝利を涙で喜びあった。

 後半戦の最初のイベントとなったラリー・エストニアを終え、ドライバー選手権ではランキングトップのオジエが148ポイントへとポイントを伸ばして、2位のエヴァンスとの差を34ポイントから37ポイントへと拡大している。ヌーヴィルは2ポイント縮めたものの、そのビハインドは52ポイントとまだまだ大きいものだ。

 マニュファクチャラー選手権では今季6度目の勝利を飾ったトヨタが315ポイントとなったが、2-3位を守りきったヒュンダイも256ポイントとしたため、トヨタのリードは59ポイントのままとなっている。

 次戦のWRC第8戦イープル・ラリー・ベルギーは3週間後、8月13日にスタートする。