Raid2021/03/29

ローブ、居心地のいい場所から出る必要があった

(c)RedBull Content Pool

 セバスチャン・ローブは、アルザス地方紙デルニエール・ヌーベル・ダルザス(DNA)のインタビューで、今年のダカール・ラリーを詳細に検討した結果、ダニエル・エレナとのコンビの解散を自身が決定したと説明した。
 
 ローブとエレナは23年にわたってコンビを組み、二人は世界ラリー選手権で9度のワールドチャンピオンに輝き、79回の勝利を達成しているが、バーレーン・レイド・エクストリーム(BRX)チームのデビュー戦となった今年のダカールで幾多のトラブルを受けて、チームを運営するプロドライブとの話し合いのなかでローブはこの重大な決定を下している。

 ローブは、DNAのインタビューのなかで、今年のダカールが厳しかったとふり返り、まだ果たしていない勝利のために、居心地のいい場所から出なければならなかったと説明している。

「今年のダカールは難しいものだったが、そうなることはわかっていた」とローブは語った。

「新しいチーム、新しい環境、新しいナビゲーションシステム、前夜の事前準備もなく、多くの課題があり、単純ではない戦いだった」

 エレナは、自身のソーシャルメディアに投稿した動画の中で、いくつものマシントラブルが招いたことで不振な結果となったことを自身のナビゲーションミスに問題をすり替えたとしてプロドライブのチーム代表であるデビッド・リチャーズを批判した。これに対して、リチャーズは、エレナとの決別に至った経緯については説明をしなかったが、ダカール・ラリーの新しいロードブックレギュレーションでは、ステージ開始10分前にルートが記載された電子タブレットが配布されるため、最高の結果を出すためにはラリーレイドのスペシャリストが必要だと語っている。

「ナビゲーションに関しては、かなりの数のミスがあったことは確かだ。時々、ダニエルは僕が信じられないようなことを指示することがあった」とローブは語った。

「もちろん彼が正しいときに僕が頑固になってしまうこともあった。過去にはなかった緊張や衝突もあった。誤解もあったし、お互いに不信感を抱いたこともあった。彼を責めるつもりはないが、僕らは道に少し迷うことになった」

 新しいデジタルロードブックのレギュレーションが導入された2021年のダカールで、ナビゲーションミスに悩まされたのはローブとエレナだけではなく、3度の優勝経験を持つカルロス・サインツとルーカス・クルスも前半戦に大きな苦戦を強いられた。だが、その一方で、新しいナビゲーターのエドゥアール・ブーランジェと一緒に初めてのダカールを戦ったステファン・ペテランセルは、ブーランジェがデジタルロードブックを使いこなしたことが、記録を伸ばす14回目の勝利を勝ち取った重要な要因であると評価している。

 ローブは、新しい時代のダカールではステージや危険に対する反応の速さこそが、勝利につながると考え、エレナとの別れを決めることになったと説明している。

「新しいロードブックのルールでは、コドライバーやドライバーの瞬間的な路面分析、高速走行時でも路面を読み、判断する力が要求される。かつてダニエルは、ステージ前日の夜遅くまでロードブックに取り組み、他のコドライバーの平均を大きく上回っていたと言っていい。そのおかげで、彼は道路を分析する能力に長けていた。しかし今は、ナビゲーションがより正確に、より鋭くなってきており、そこがラリーレイドのスペシャリストの強みになっている」

「エレナへの説明については何度も考えたし、その結果、ここまで長引かせてしまった。彼を傷つけるようなことは言いたくなかった。これまで僕はキャリアの中でずっとダニエルを手元に置いておこうと常に戦ってきたが、彼と率直に話さなければならなかった。いままでは居心地のいい場所だったが、そこから出て、(ダカールで)前進するチャンスを最大限に活かすためには、そうする必要があったんだ」