WRC2019/04/30

勝田貴元、初出場アルゼンチンでWRC2を一時リード

(c)Toyota

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 トヨタGAZOOレーシング・ラリーチャレンジプログラムの勝田貴元が、4月25日から28日に開催されたFIA世界ラリー選手権(WRC)第5戦ラリー・アルゼンチンのWRC2に、コドライバーのダニエル・バリットと共に初参戦、WRC2カテゴリーをリードしたものの、厳しいコンディションのなかでトラブルが続出したため5位のゴールを迎えることになった。

 ラリー・アルゼンチンは、渓谷に広がる砂状の道や、険しい山岳地帯の石だらけの道など、ステージによって特徴は大きく異なり、大きなジャンプやウォータースプラッシュ(川渡り)もあり、総合的なドライビングテクニックが求められる1戦だ。

 アルゼンチンの4月下旬は秋の始まりに相当し、例年天気はやや不安定となる。過去2年間は比較的ドライな路面が保たれたが、今年はラリーウィークの前半に大量の雨が降り、路面は濡れて滑りやすく、そして非常に荒れたコンディションとなり、ヨーロッパ外のWRCイベントは今回が初出場となる勝田にとっては、厳しい条件でのラリースタートとなった。

 フォード・フィエスタR5で臨んだ勝田は、市街地を舞台とするデイ1オープニングのSS1でWRカーに次ぐR5勢トップタイムを記録、翌日から始まった本格的なグラベルステージでも速さを示し、デイ1最終ステージの直前まで2つのベストタイムを刻んでWRC2首位に立ち、24.4秒のリードを築くことになった。しかし、最終ステージで左前輪のホイールが壊れてコースオフを喫し、スタック状態に陥りデイリタイアに。幸いにもクルマにはダメージがなかったため、勝田は翌日再出走をすることになった。

 巻き返しをはかるべく臨んだ土曜日、勝田は早々にパワーステアリングのトラブルに見舞われ、パワーアシストのない重いステアリングと格闘しながら午前中のステージを走行、そのため大きな遅れをとってしまう。それでも、問題を解決して挑んだ午後のステージでは2つのベストタイムを記録。競技最終日は、深い霧の中で行なったレッキにより、ペースノートに自信を持てない状態でSSをスタートしましたが、3つのSSのうち、有名な「エル・コンドル」のステージでは2回ともステージウィンを獲得、ラリー全体では7回のベストタイムを記録することになった。前日までのトラブルによる遅れが響き、最終結果はWRC 2カテゴリー5位に終わったが、勝田にとっては多くの経験を得た有意義なラリーとなった。

 勝田は初めて経験するアルゼンチンでラリーをリードできたとを喜ぶとともに、その厳しい戦いのなかでさらなる経験値を積む必要があると語った。

「自分にとっては、とても良いラリーでした。リザルトは望んでいたようなものではありませんが、元々の目標は初めてのラリーで経験値を高めることだけでした。事前にとてもタフなラリーだと聞いていましたが、何とか全てのステージを走り切ることができました」

「ステージはとても荒れていて、それなのにハイスピードなコースだったので簡単ではありませんでした。また、雨の影響でいくつかのコーナーは泥で覆われ、自分にとっては初めて経験するようなコンディションでした。最初はとても苦労しましたが、ドライビングと速さの両方を改善できたと思います」

「また、突然ホイールが破損するまで、WRC 2カテゴリーをリードできたことに関しても嬉しく思います。特に何かに当たったたわけではないので、ホイールが壊れたのはとても残念ですが、このような荒れたラリーでは十分に起こり得ることです。土曜日の午前中にはパワーステアリングの問題が起こりましたが、チームがすぐに修理をしてくれたので、以降は運転を楽しむことができました。R5カーをドライブする経験豊かな選手に対抗するためには、さらなる進化が必要ですが、このラリーに何回も出ているドライバーを相手に、何度かベストタイムを出せたのは良かったと思います」

 インストラクターのヤルッコ・ミエッティネンは次のように語った。

「今回のラリーの貴元の目標は、しっかりと完走して、この荒れたラリーで良い経験を積むことだった。貴元はとても良い走りをし、才能を証明した。例えば、SS1ではWRC 2を含むすべてのR5カーの中で最速だった。今回、貴元は非常に荒れたセクションでも生き残れるような狙い通りのペースで走っていたが、それでも問題が起こってしまうくらい、路面は荒れていた。今回のラリーもまた、貴元にとっては新たな経験となり、来るべきラリーにその経験が活かされると確信している」

 勝田の次戦は、5月9日から12日にかけて開催されるWRC第6戦ラリー・チリとなる。アルゼンチンを戦い終えた勝田はそのまま南米に留まり、次なる戦いに向けての準備を進める。