WRC2019/12/22

次期ヤリスWRCはWRカー史上初のカーボンルーフ

(c)Toyota

 トヨタが2020年に発売を予定するGRヤリスは、1990年代のセリカGT-FOUR以来となるトヨタの市販スポーツ4WDモデルであると同時に次期WRカーのためのFIAホモロゲーションモデルとなる。

 トヨタは、GRヤリスを連続する12カ月間で2万5000台の生産を行ってFIAホモロゲーションを取得し、次期WRカーとRally2(現在のR5)マシンのベースモデルとすることを明らかにした。GRヤリスは、世界ラリー選手権での知見に基づき、高いレベルの運動性能を持つスポーツカーであるとともに、ラリーでの勝利を使命として理想的なベース車両として磨かれたマシンだという。

 WRカーは市販モデルをベースとして広範囲にわたる改造が認められているとはいえ、そのパフォーマンスを決定づけるのはベース車両の素性の良さだ。なかでも、ベース車両のボディ材質については基本的にはWRカーでも同一の素材を使用することが義務化されており、戦闘力の向上を目的としてカーボンなど特殊な材質におきかえて軽量化することは認められていない。そのため、GRヤリスはエンジンフード、左右のドア、リヤハッチはアルミ合金製となり、ルーフはカーボン繊維複合材料(SMC)という空前絶後の軽量ボディを生まれながらにして持っており、WRカーでは低重心化されたボディが大きな武器になりそうだ。

 また、GRヤリスのルーフは、WRカーのリヤウィングの効果を高めることを目的して後端部がなだらかに傾斜して落ち込んだ特徴的なデザインとなっている。WRカーのリヤウィングの高さはベース車のルーフのシルエットにプラス50mm高までと技術規定で定められているため、GRヤリスはリヤシートの乗車スペースを多少犠牲にしても、より大きなダウンフォースを得ることを目的としたルーフのデザインが採用されている。

 さらに、GRヤリスのサスペンションも、まさにラリーのために改造が施されている。WRカーのサスペンションはベース車両の形式かマクファーソンストラット方式しか選べないが、GRヤリスのリヤサスペンションは荷室スペースの制約が生じることを承知のうえで、ラリーカーとして理想的なストロークを求めてダブルウィッシュボーン形式が採用されている。

 GRヤリスに搭載される1.6リッターの3気筒直噴ターボエンジンは、トヨタ・モータースポーツGmbH(TMG)の協力によってこのモデル専用に開発されたものだ。Rally2マシンは4気筒よりバルブリフト量に制約を受けるものの3気筒の搭載が認められるが、現在のWRカーは4気筒エンジンのみに使用が限られており、現行のヤリスWRC もグローバルレースエンジン(GRE)規定に基づき、1.6リッターの4気筒直噴ターボとなっている。

 トヨタはハイブリッド化される将来のWRカーではモーターなどの新しいコンポーネンツでエンジンルームが制約を受けることから3気筒エンジンが認められることを望んできたが、いまのところFIAは現行を踏襲した4気筒エンジンの技術規定を継承する考えだ。それでもトヨタがGRヤリスに3気筒を採用したのは4気筒よりコンパクトで軽量なエンジンによって高い運動性能を実現するためであり、Rally2マシンあるいはプロダクションラリーカー、市販スポーツカーでもそうした恩恵を十分に受けることになりそうだ。

 GRヤリスは来年1月に行われる東京オートサロン2020年で正式に公開される。