WRC2021/10/19

波乱ジュニアWRC最終戦、19歳のパヤリが王座に

(c)M-Sport

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 FIAジュニアWRC選手権の最終戦ラリーRACCラリー・デ・エスパーニャは、ジョン・アームストロングがタイトルにむけて力強いリードを築いていたが、濃霧に視界を阻まれてスタック、代わって首位に立ったサミ・パヤリが19歳と325日という、20年に及ぶジュニア選手権の歴史の中で、最年少かつ初のフィンランド人ドライバーの王者に輝くことになった。

 Mスポーツのフォード・フィエスタRally4でのワンメイクで争われるジュニアWRC。スペインでの最終戦を前に、パヤリが選手権を91ポイントでリード、アームストロングが3ポイント差、マルティンシュ・セスクスはさらに11ポイント差で続いているが、選手権は全5戦のうち4戦がカウントされることになるため、ダブルポイントが与えられる最終戦でのポイント獲得を前提としてドロップスコアを考慮すると、実際にはアームストロングが82ポイントでトップ、パヤリが8ポイントのビハインドでスペインをスタートする計算だ。

 北アイルランドのターマックで経験値を積んだアームストロングは、これまでのスペインでの経験を活かし、初日に3つのステージで最速タイムを叩き出して圧倒、パヤリに15.9秒差をつけることになった。

 このままのペースを刻めばアームストロングが楽々とタイトルを獲得する流れだったが、土曜日の朝、まさかのドラマが発生する。濃霧のなかで行われたSS7サヴァヤーで彼はコーナーを見失い、そのままではコーナーを曲がりきれないと判断してジャンクションをオーバーシュート、ターンしてコースに戻ろうとする。

 だが、彼はリヤをディッチに落としてしまい、観客の助けを待たなければならず、5分40秒あまりもロスして6位へと後退してしまう。「本当に悔しいよ。ステージの霧の中で、ブレーキを少し失敗してしまったんだ。逃げ切ったと思っていたのに、畑の縁でスタックしてしまった。でも最終的には脱出できたので頑張るよ。ラリーはまだ終わってないからね」

 SS8ケロールではもう一人のタイトル後方だったセスクスがクラッシュアウトしたため、これで首位のパヤリに大きくタイトルは傾くことになった。

 だが、ジュニアWRCでは通常どおりの選手権ポイントに加えてステージウィナーにステージポイントが1ポイント与えられる。セスクスのリタイアで4位へと浮上したアームストロングはオープニングSSのショックにもめげずにこのあとも猛追を開始する。全ステージでステージポイントを奪えば、このあとも上位勢にミスが発生すれば、まだまだ計算上はパヤリのポイントに肉薄することが可能であり、プレッシャーをかけることは可能となる。

 タイトルへの飽くなき野心を燃やすアームストロングはSS9、10とライバルたちを1kmあたり0.5秒も引き離す素晴らしいペースをみせる。それに気圧されたように、快適なリードを手にしたかに見えたパヤリはSS10でパンクに見舞われてしまい40秒近くもロス、2位のラウリ・ヨーナに2秒差まで詰め寄られてしまう。

 この状況はアームストロングの闘争心にさらに火をつけることになっただろう。だが、アームストロングはSS11ケロールの左コーナーで深くインカットしすぎて岩にヒット、ステアリングを壊してここで選手権のチャレンジは万事休すとなってしまう。

 パヤリもパンクのあとはふたたびペースをとりもどし、16.2秒差にリードを拡大して迎えた最終日も手堅い走りをみせて首位をがっちりキープ、最終的にヨーナに15.9秒差をつけて歓喜のゴールを迎えるとともにジュニアWRCの栄冠に輝くことになった。

「まだ信じられない気持ちだよ。うまく言えないけど、世界チャンピオンになったことは大きな意味をもつし、僕にとってはとても大きなことだ」とパヤリは語った。

「正直言って、初日、ジョン(・アームストロング)はあまりにもハイペースだったし、このままでは負けると思ったので最後の数ステージでは、狂ったようにプッシュしたんだ。でも、それでは生き残れないだろうと思った。そうしたら、ジョンが2つミスをした。そしてマルティンシュ(・セスクス)もミスをした。僕にとっては良かったが、そのあとパンクしてしまったし、それが今回起きたことだ。いろいろあったが、僕にとっては大きな意味をもつ結果となった」

 2位のヨーナにとってはクロアチアに続く2度目のポディウムとなり、エストニア出身のロベルト・ヴィルベスが34.2秒差の3位となっている。

 アームストロングは気を取りなおして最終日もベストタイムを2つ奪い、ジュニア選手権の2位でシーズンを終えており、選手権の表彰台ではパヤリにシャンパンを浴びせかけてタイトルを祝福している。