ヨーロッパ・ラリー選手権(ERC)第5戦アソーレス・ラリーは、予想外の雨によってマディなコンディションでのスタートとなるなか、チームMRFタイヤのダニエル・ソルド(ヒュンダイi20 R5)がアンドレアス・ミケルセン(シュコダ・ファビアRally2エボ)に4秒差をつけて初日をリードしている。
アソーレス・ラリーが開催される大西洋の中央部に位置するポルトガル領のアソーレス諸島は天気が変わりやすいことで有名だが、天気予報ではサンミゲル島らしい明るい陽射しと高温になることを約束していたにもかかわらず、それとは正反対に早朝から季節外れの雨と風が荒れ狂ったため今年もドライバーたちの戦略は完全に裏切られることになってしまった。
木曜日に行われた予選ステージで上位のタイムを出したドライバーたちはみな、路面がクリーンになる後方からのスタートを選択、なかでも予選トップで15番手という最後方のポジションを選んだサンテロック・ジュニア・チームのアレクセイ・ルクヤヌク(シトロエンC3 Rally2)にとっては厳しいスタートとなってしまった。
ルクヤヌクはオープニングステージのSS1グラミンハイスで左フロントタイヤをパンクしてしまう。左コーナーのライン上にあった石を避けきれずにヒット、残念ながらスローパンクではなく、すぐに空気が抜けてしまい、止まって交換しなければならなかったために早くも1分48秒もの遅れを喫して14位となってしまう。
また、ERCレギュラーメンバーのシュコダ・ラリーチーム・ハンガリーのノルベルト・ヘルツィグ(シュコダ・ファビアRally2エボ)がコースオフ、ニル・ソランス(シュコダ・ファビアRally2エボ)もクラッシュするなど大荒れのスタートとなるなか、地元のリカルド・モウラ(シュコダ・ファビアRally2エボ)がベストタイムで首位に立ち、2012年にアソーレスで優勝経験をもつミケルセンが4秒差の2位で続くことになった。
しかし、ミケルセンは続くSS2でワイパートラブルのために視界に苦しんで50秒を失って5位へと後退するなか、過去10度アソーレス・チャンピオンに輝き、2016年にERCアソーレスを制しているモウラは、アソーレスの複雑な天候と路面を熟知しており、SS2では2番手タイム、SS3では2つめのベストタイムを奪い、2位へと浮上したソルドに27.8秒差をつけて朝のループを終えることになった。
ポンタ・デルガダでのサービスを挟み、午後のループの最初のステージはミケルセンの素晴らしいタイムで始まることになった。サン・ミゲル島の天候は刻々と変化しており、雨が上がり路面は急速に乾きはじめるなか、SS4グラミンハイスでは朝のループを首位から46秒遅れで終えたミケルセンが圧巻のベストタイムで31.4秒遅れの3位へと浮上、2位につけるソルドの2.3秒後方へと迫ることになった。
しかし、ソルドもSS5トロンケイラではミケルセンに4.3秒差をつけるベストタイムで首位のモウラに6.4秒差まで近づいている。
ソルドはこの日最後のSS6グルーポ・マルケスのスーパースペシャルではモウラを逆転、初日を首位で終えることになったが、ここでベストタイムを奪って彼の4秒後方へと迫っているミケルセンと明日以降も厳しい戦いになるだろうと予想している。「霧や雨など、非常にトリッキーなコンディションで走りにくかったが、初日をトップで終えられたこと、ステージ最速タイムを獲得できたことに満足しているよ。たくさんの観客によろこんでもらえ、そしてチームやMRFのタイヤにもとても満足だ。明日はミケルセンに対抗するのは難しいと思いうが、頑張るよ」
ミケルセンは、前週のアクロポリスに続き新しいコドライバー候補のエリオット・エドモンドソンとのコンビネーションをこの週末も試しているが、SS4とSS6で最速タイムを記録し、ここまではワイパーのトラブル以外、ノーミスのラリーが続いていることを喜んだ。
「今朝は信じられないようなコンディションだった」とミケルセンは語った。「今朝は、霧が出ていて、雨もたくさん降っていたので、ワイパーの速度が足りないほどだったが、SS2の狭いセクションの途中でワイパーが作動しなくなり、何も見えないので時速5kmで走行しなければならなかったんだ。でも、僕らはまだゲームに参加しているし、明日はおもしろいことになるだろう。絶対にいい戦いができるはずだ」
トリッキーなコンディションとなった朝のループで速さをみせたモウラは、ソルドとミケルセンのペースには追いつけず、さらにこの日最後のSS6では巻き上げられたダストに視界を阻まれてしまいペースダウン、ミケルセンの0.3秒差の3位で初日を終えている。
「かなりのロスをしてしまった」とモウラは悔しがった。「彼らのペースにはかなわないことはわかっていたが、プレッシャーに負けないようにしてがんばってきたが、ここではダストのせいで何も見えず、止まらなければならない場所もあった。残念だよ」
4位にはミケルセンと同様にワイパートラブルに見舞われたエフレン・ヤレーナ(シュコダ・ファビアRally2エボ)、5位には前戦バルム・チェコ・ラリー・ズリーンで最終ステージのクラッシュまでラリーをリードしたエリック・ツアイス(フォード・フィエスタRally2)、6位のORLENチームのミコワイ・マルツィック(フォード・フィエスタRally2)が続いている。
ルクヤヌクはSS1のパンクで14位に後退したあと7位まで順位をもどしてきた。それでもSS3でフロントを大きくクラッシュするなど、フラストレーションが溜まる週末となっており、首位からは1分37秒遅れとなっている。
不機嫌な彼に代わってコドライバーのアレクセイ・アルノトフがマシンのダメージについて説明している。「右コーナーにオーバースピードで進入し、何度かスピンして、バンクにぶつかったが、幸いにもロールしなかったし、再び走り出すことができた。原因は僕のミスなのか、それともアレクセイが聞き間違えたのか、それはわからない・・・・」
フランス・チャンピオンのヨアン・ボナート(シトロエンC3 Rally2)はSS3でジャンプのあとコースオフ、横転してしまい、マシンを大破させてリタイアとなっている。