WRC2023/12/29

【TOP10-第6位】セバスチャン・オジエ

「勝利のためのチャレンジ」

(c)Toyota

Sebastien Ogier
Toyota GAZOO Racing WRT

セバスチャン・オジエの2023年シーズンは彼にとってのホームともいえるモンテカルロでの9度目の勝利とともに始まった。

オジエはスウェーデンをスキップ後、メキシコで7度目の優勝を飾って選手権リーダーへと浮上、さらにサファリでは最終日にオーバーヒートの問題を抱えながらも今季3勝目を飾り、限定的な参戦にもかかわらず9度のワールドチャンピオンさえ可能にも見えた。

セミリタイアしたドライバーが選手権をリードするというねじれた状況ではあったが、もちろん、オジエのこれらの勝利は選手権をレギュラーで争うライバルたちよりより有利な路面コンディションで成し遂げたものだったと言えるだろうし、彼がタイトル争いから解放されてリラックスした状況にも助けられたことはたしかだろう。

オジエはただ自身の勝利のためにスペアタイヤの数もタイヤチョイスもより攻めた戦略が可能だったし、モンテやケニアで2位に終わったカッレ・ロヴァンペラが自身とともにチームの選手権のために走っていたことを思えば、けっしてイコールな条件での優勝争いではなかったことはたしかだ。

オジエはシーズンを通してピレリの脆弱性に不満を述べることになったが、たしかにパンクさえなければ彼は今季、もっと多くの勝利を飾ることもできたはずだ。クロアチアではピレリのレインタイヤに多くの問題が発生、オジエもわずか2つめのステージでタイヤ交換を強いられて優勝争いから脱落したが、彼のホイールリムは大きく破損しており、けっしてタイヤだけの問題だったわけではない。

サルディニアでのクラッシュは、泥がついたまままのレーシングシューズでマシンに乗り込んだためブレーキペダルから足が滑ってしまったことが原因だったが、そのステージのスタート直前でリヤタイヤにパンクがあることが見つかり、あわてて交換作業を行ったことがこのミスにつながってしまった。

波乱が続出したギリシャのとびきり大きなドラマはシーズン4度目の勝利に向けてラリーをリードしてオジエのリタイアだった。オジエはロヴァンペラに対して12.4秒差をつけていたが、双方ともに引く気配はなくペースはかなり上がるなかでオジエはタイヤ2本をパンク、サスペンションにも致命的な破損が及んでおり、リタイアとなってしまった。

サルディニアでもギリシャでも少なからずパンクによってオジエは勝利を失ったわけだが、完璧に見えたシナリオは狂わせたのは、いずれも後方から追い上げていたロヴァンペラが明らかに速かったこともあっただろう。

オジエは初開催セントラル・ヨーロッパでも勝利に意欲を見せたが、金曜日のパンクでそれもノーチャンスとなってしまった。どん欲に勝利を目指して、ぎりぎりを攻めている明かしではあるが、彼らしくないミスが続くのは、やはりフルタイムの参戦を離れたことが大きいからなのだろうか。

狙おうと思えば、9度のワールドチャンピオンのチャンスはいくらでもあることは今季もふしぶしで証明されたように思う。それだけに彼が来季も限定的な参戦にとどまり、タイトルを狙わないという選択をしたことは残念なことだ。

オジエは1月末のモンテカルロで新シーズンをスタート、記録的な10勝目を目指す。

■セバスチャン・オジエ
生年月日:1983年12月17日(39歳)
タイトル:WRC(2013、2014、2015、2016、2017、2018、2020、2021)
選手権ランキング:5位
獲得ポイント:133点
ベストリザルト:1位
優勝回数:3回
2位の回数:1回
3位の回数:0回
表彰台回数:4回
出場回数:8回
ベストタイム回数:37回
リードしたステージの数:62SS
リタイア数:0回
リスタートの回数:2回
パワーステージ勝利数:1回
パワーステージ獲得ポイント:17点