WRC2024/01/26

エヴァンスが初日をリード、ヒョンデ勢はトラブル

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 2024年世界ラリー選手権(WRC)第1戦のラリー・モンテカルロが1月25日に開幕、トヨタGAZOOレーシング・ワールドラリーチームのエルフィン・エヴァンス(トヨタGRヤリスRally1)が初日に行われた2つのナイトステージを制してトップに立っており、2位につけるティエリー・ヌーヴィル(ヒョンデi20 N Rally1)に15.1秒差をつけている。

 3年ぶりにギャップにベースを戻して開催されるラリー・モンテカルロ。しかし、スタートセレモニーは伝統に従ってモナコのカジノ前広場で行われ、めずらしく陽が落ちる前にスターティングフラッグがふり下ろされるなかラリーカーはモナコをあとにして最初のステージとなるSS1トアール〜サン・ジェニエ(21.01km)へと向かう。

 トアール〜サン・ジェニエは有名なシステロン・ステージのショートバージョンであり、なかでも例年は雪と氷に閉ざされたアップダウンのきついセクションをもつフォンベル峠はモンテカルロのときだけ冬季の通行止めから開放され、多くのドラマの舞台となってきた。

 ステージがスタートする時点ではすでに日は暮れているが、スタート地点の気温は11度とそれほど寒くない。雪と氷のステージになることが期待されたが、ここでもコースはほぼドライコンディションで、ところどころ湿ったところもある。すべてのドライバーがウィンタータイヤを選ぶことなくソフトタイヤを4本とスーパーソフト1本あるいは2本を組み合わせている。

 オープニングステージをベストタイムでスタートしたのは一番手でコースに臨んだエヴァンス。彼はステージエンドで自身のペースに自信をもてない様子だったが、後方のドライバーたちがスプリットで遅れていることを知らされるや笑顔をみせている。「グリップは本当に高くて、正直言ってそれを十分に使えていたのかどうか分からなかった。スタートでここまでグリップが高いとトリッキーだけど、すべて大丈夫。問題ない」

 エヴァンスから5.2秒遅れの2番手で続いたのは、ヒョンデに復帰後最初のラリーとなるオイット・タナク(ヒョンデi20 N Rally1)だが、彼はスロットルにやや問題があるとして不満気な様子だ。「ステージの中盤で、スロットルに問題が出始めていた。アクセルペダルを離しても燃料がフルな状態だった。ステージそのものはとても一貫性のある、いいステージだった。でも僕たちのセットアップは全然ソフトすぎる、まるでスノーのようだ、ドライターマックとは思えない」

 タナクから3.1秒差の3番手にはチームメイトのティエリー・ヌーヴィル(ヒョンデi20 N Rally1)が続く。彼はフロントに1本だけスーパーソフトを選んでいるが、そのせいかタイヤがややオーバーヒート気味だったと訴えた。「とても慎重だったとは言わないが、タイヤが動き回っている。最初からオーバーヒートさせないように心がけたんだけどね。もう少しなんとかできたとは思うが、まだ最初のステージで、まだまだラリーが始まったばかりだからね。今はタイヤの様子を見ていく必要がある」

 ここでは後方のスタートになるほどインカットによって路面が汚れてしまい、タイムタイムを落としてしまうことになった。9度のモンテカルロ・ウィナーであるセバスチャン・オジエ(トヨタGRヤリスRally1)も9.8秒遅れの4番手タイムにとどまった。トップのエヴァンスからは1kmあたり0.47秒も遅れた計算だ。それでもオジエはここでの遅れは予想できていたと涼しい表情だ。「すでに路面が(かき出された)グラベルでいっぱいになっている。カットがとても多かったからね。でも、あまり驚いていないよ」

 24.3秒遅れの6番手タイムにとどまった勝田貴元(トヨタGRヤリスRally1)もどんどん路面が汚れてきていたと認めている。「まだまだこのラリーはこれから長いし、毎ステージ、最大限までプッシュするわけではない。すべてのステージを通して、一歩一歩前進していくことが必要だ」

 SS2ベイヨン〜ブレジエ(25.19km)はオープニングステージより気温は下がり、スタート地点のベイヨン村での気温は4度まで下がっている。狭いヘアピンが連続して1184mのコル・デ・サーニュまで上りのセクションにはおびただしい数のファンが待ち受け、花火や発煙筒でモンテのナイトステージを最高に盛り上げる。

 ここでもエヴァンスが連続してベストタイム、2位へと浮上したヌーヴィルに15.1秒差をつけて初日をリードすることになった。エヴァンスは速さをみせたことに満足しながらも、正確なグリップをつかみかねていたと認めた。「難しいよ・・・。どれくらいの速さで行くべきなのか判断するのが本当に難しい。コンディションは極めてミックスされた状況だけど、他のみんながどんな走りをするのかを様子を見ていく必要がある」

 2位につけていたタナクは、前ステージで見舞われていたアクセルオフしたときの燃料噴射の問題にふたたび悩まされてペースダウン、ヌーヴィルとオジエに抜かれて4位へと後退。エヴァンスから6.8秒遅れの2番手タイムで続いたヌーヴィルが2位で初日を終えることになったが、彼もまたチームメイトと同じくスロットルの反応に問題を抱えている。「わからないが、チームメイトたちと同じような問題だ。どうしてなのかわからないが、チームがみてくれるはずだ。まだ始まったばかりなので様子をみなければならない」

 オジエもまたトラブルを抱えているタナクを抜いて3位に浮上したもののトップからは21.6秒遅れだ。彼は自身の走りには満足しているものの、コースの汚れのために思った以上に遅れてしまったと認めていた。「僕たちにとっては難しい状況になっているようだが、それについてはちょっとは予想はできていた。こういうコンディションでは前方にいる方がいい。僕たちはまともな走りはできた。リズムは掴んでいる、でも言ったように、路面はだいぶ汚れてきているし、それもかなりの勢いでだ」

 アドリアン・フールモー(フォード・プーマRally1)が5位と健闘しており、7.3秒差で勝田が6位で続いている。勝田は「湿ったコーナー慎重になりすぎた。まだまだ先は長いので、明日はもっと良い走りができるよう、しっかり集中していきたい」とふりかえっている。

 Rally1カーのデビュー戦となったアンドレアス・ミケルセン(ヒョンデi20 N Rally1)はマシンを学びながらの初日となったが、彼もまた最初のステージからチームメイトと同じ問題に悩まされている。「一歩一歩だ。このクルマで走ることは大きな違いだし、いろいろなことに慣れていく必要がある」

 金曜日はギャップを舞台とした6ステージが予定されているが、こちらも雪と氷はほとんどなかったと報告されている。オープニングステージのサン・レジェ・レ・メレーズ〜ラ・バティ・ヌーヴは、現地時間8時51分(日本時間16時51分)のスタートが予定されている。