ERC2023/08/20

ERCチェコはコペツキがリード、ツァイスは不運

(c)RedBull Content Pool

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 FIAヨーロッパ・ラリー選手権(ERC)第7戦のバルム・チェコ・ラリー・ズリーンのレグ1を終え、地元のヤン・コペツキ(シュコダ・ファビアRS Rally2)がスリリングなトップ争いを制して、12回目の母国ラウンド勝利に向けてリードを広げている。

 バルム・チェコ・ラリーは金曜日の夜にズリーン市街地で行われたスーパーSSで開幕、オーストリア・チャンピオンのシモン・ワグナー(シュコダ・ファビアRS Rally2)がラリーをリードすることになった。しかし、土曜日に郊外のトリッキーな高速ターマックに舞台を移すや、すぐにリーダーボードの上位は地元チェコのドライバーたちによって占拠されることになった。

 SS4でトップタイムを奪ってラリーをリードしたのは、ズリーンに住む若手のエリック・ツァイス(シュコダ・ファビアRS Rally2)だ。彼はこの地元戦で2021年に最終ステージでクラッシュするまでラリーをリードしており、昨年も最終ステージのパンクで表彰台のチャンスを失っており、今年は3度目の正直になることが期待されていた。

 だが、SS5の前に通り雨が降り、一番手でラリーをスタートしていたツァイスが不運に見舞われる。もっとももウェットだったコンディションで8.9秒を失った彼は首位をコペツキに譲り、4.3秒差の2位へと後退することになった。「一番手でスタートすることに不利があるとすれば、それは今だ」とツァイスは語った。「最初のセクションの半分は完全に濡れていて、2つめのセクションは半分乾いていた。外気温は35度で、だいぶ乾いてきている。後ろが有利なのは間違いない」

 さらにSS6でもツァイスの不運は続く。オープニングループでもこのステージでは序盤の右コーナーで大きくスライドしてバンクに接触した彼は、今度はスタートして1.5km地点の左コーナーでグラベルパッチに突っ込み、左フロントタイヤにダメージを負ってしまう。「僕のミスだ。そこはグラベルの多いコーナーで僕らは速すぎた。でもそれがレースだし、今日はレースをしたかったんだ。チームには申し訳ない」。2分近くもの遅れを喫した彼は14位へと後退、今年も地元戦での勝利は絶望的となった。

 ライバルの後退で今年もラリーの主導権を握ることになったコペツキもまたこのステージではトラブルに見舞われている。スタートから3km地点の右コーナーは、1回目の走行でツァイスが大きくスリップした同じ場所だ。「完全にオフしてリアエンドをディッチに落としてしまった」と報告し、1994年以来使用されていないこのステージを「非常にトリッキーだった」と表現した。

 それでもコペツキはこのSS6でトップタイムをマーク、さらにこの日の最終ステージでも連続してトップタイムを奪い、2位につけるハンガリーのミクローシュ・チョモス(シュコダ・ファビアRally2エボ)に14.9秒差をつけて初日を終えることになった。

「バルムの初日でトップに立てるとは思っていなかったよ」とコペツキは語っている。「昨年もSS1では、1台目が大雨に見舞われた。バルムではよくあることだけど、他のステージはドライだったから、ペースはすごく良かった。でも15秒のリードなんてここではないも等しい。明日の第1ステージはクレイジーだ。目を覚まして全開で行かなければならない」

 チョモスはSS3を制した後、一時0.2秒差でラリーをリード、最終的は2位で初日を終えることになったが、このチェコの高速ステージでコペツキに続くポジションで初日を終えたことに興奮した様子だ。「すごいよ、すごく速いんだ。テンポが普通じゃない。1日の終わりに2位になれたことはとてもうれしい。とてもうれしいよ」

 13.8秒後方の3位にはオーストリアのシモン・ワグナー(シュコダ・ファビアRS Rally2)、12.5秒差で地元のアダム・ブジェジーク(シュコダ・ファビアRally2エボ)が続いている。

 選手権をリードするヘイデン・パッドン(ヒョンデi20 N Rally2)は5位につけており、タイトルを争うマルティンシュ・セスクス(シュコダ・ファビアRS Rally2)が13位と後方に沈んでいるだけに明日の結果次第ではERCタイトルの栄冠を手にする可能性がある。

「明日はもっとトリッキーになるし、なんとか無事に帰りたい」とパッドンは語っている。「今日の午後もマシンはうまく機能しているから、愚かなリスクは冒さず、明日のためにそれを維持しようと思っている。バンピーなターマック・ラリーは初めてだけど、多くのことを学んでいる。ウェットじゃなくてよかった! 明日の夜、みんなと一緒にパーティーができることを願っている」

 ダブル・ヨーロッパ・チャンピオンのアレクセイ・ルクヤヌク(シュコダ・ファビアRS Rally2)は土曜日のオープニングステージで勝利して一時僅差でトップに立ったが、その後は技術的なトラブルのため後退、トップから3分近く遅れた15位となっている。

 マッズ・オストベルグ(シトロエンC3 Rally2)でチェコ・デビューを飾ったが、ドライブシャフトの破損によりSS5でリタイアとなってしまった。「残念だけど、今年に始まったことじゃないし、これまでいい週末を過ごせていたし、楽しんでいただけにちょっと残念だ」と彼は声を落としていた。

 不運だったのは2019年ERCチャンピオンのクリス・イングラム(フォルグスワーゲン・ポロGTI R5)も同じだ。朝のサービスでギアボックス交換を余儀なくされた彼は、20秒のタイムペナルティが課せられ、さらにSS3ではパワーステアリングトラブルに見舞われた。トップ争いから脱落したイングラムは、10月に開催されるERC最終戦のラリー・ハンガリー選手権に集中するため、ミッドデイサービスでリタイアすることを選択した。

 ERC3ではすでに王座が確定しているジョン・アームストロング(フォード・フィエスタRally3)がSS6でアクシデントに見舞われたが、幸いにもクルーに怪我はなかったと報告されている。代わってポーランドのイゴール・ウィドワック(フォード・フィエスタRally3)がラリーをリードしている。

 また、ERCジュニアは、ティモ・シュルツ(オペル・コルサRally4)がリード、2位にマックス・マクレー(オペル・コルサRally4)が続く展開となっている。

 バルム・チェコ・ラリー・ズリーンは日曜日が最終日となり、伝説的なセメティンやピンデューラ・ステージなど難しい6SS/92.40km残されている。