WRC2021/07/22

タナク、タイトル逆転は不可能なのか?

(c)Hyundai

 ヒュンダイ・モータースポーツのオイット・タナクは、ラリー・エストニアのパワーステージでのボーナスポイントを自身の選手権にとっては重要なことでないと語り、母国ファンの声援を追い風に低迷してきた選手権の流れを変えるはずが、自身のタイトルを諦めることになったことを認めている。

 タナクは選手権リーダーのセバスチャン・オジエから64ポイント差でエストニアに臨んでおり、選手権のためにもホームでの勝利がほしかったのだろう。しかし、その願いはやや強すぎたと言えるだろう。タナクは金曜日、首位に立ってすぐ、SS3オテパーの右コーナーでインカットした際にパンク、タイヤをバーストさせながらもすさまじい速さをみせて26秒遅れにとどめ、まだまだ十分にトップのカッレ・ロヴァンペラに追いつける程度の被害にくい止めることに成功した。だが、続きSS4のカネピでハイスピードでオフ、すぐにコースに復帰できたものの、2本をパンクしており万事休すとなった。

 タナクは金曜日のリタイアによって2年目の母国戦では総合では31位におわったが、最終日のパワーステージでは最速タイムを叩き出して、5ポイントを獲得することになった。それでも残り5戦でオジエの148ポイントに対して74ポイントとダブルスコアにポイント差は広がっており、タナクは今季のタイトルのチャンスはこれで失われたと考えている。

「パワーステージのボーナスポイントは、残り5戦となったいま、僕にとってはもはや重要ではないようにも見えるが、チームにとっては確実に重要だ・・・」とタナクは語った。

「何も争っていない時は、いつもと同じような集中力を維持するのは困難なものだ。金曜日に早期にリタイアしてしまったため、もはや自身のために走る目的はなくなってしまったが、来年にむけて何かしら学ぶべきものがあればと気を取りなおして走った。最終日も何度かステージウィンを飾った事実を考えれば、何かを見つけたと言えるだろう。厳しいラリーになったが、僕らはこれからも戦い続ける」

 はたしてタナクの選手権の逆転はもう望みがないのだろうか? 

 残り5戦で最大獲得可能なポイントは150ポイントある。エストニアの週末を通して6連続ベストタイムを含む11SSでのベストタイムは、タナクのスピードが現役トップであることを示している。2018年にはラリー・イタリア・サルディニアを終えて72ポイントも差をつけられていたが、わずか3戦で13ポイント差にまで縮めてWRC史上最大の大逆転王者の可能性を残した実績があるだけに、完全に可能性を否定することはできないとも言える。

 しかし、この記録はラリーGBでラジエータを壊してしまい、結局幻に終わることになったように、大差がついてしまった選手権の逆転は歴史においてもそう事例があるわけではない。ちなみに、ドライバー選手権が誕生した1978年からこれまで43年間で、シーズン内でもっとも大きいポイント差を逆転したチャンピオンは、1991年に32ポイントをリードしたカルロス・サインツを最終戦で抜いて3度目の王者に輝いたユハ・カンクネンだった。