ERC2024/04/15

テンペスティーニが逆転でERCハンガリー優勝

(c)RedBull Content Pool

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 2024年ヨーロッパ・ラリー選手権(ERC)開幕戦のラリー・ハンガリーは、最終日に波乱のドラマが続出することになり、元ジュニアWRCチャンピオンのシモーネ・テンペスティーニ(シュコダ・ファビアRS Rally2)が素晴らしいフィニッシュを果たし、ERC初優勝を飾った。

 ラリー・ハンガリーは、初日を終えてミッコ・ヘイッキラ(トヨタGRヤリスRally2)がリード、これを2.3秒差でマルティンシュ・セスクス(トヨタGRヤリスRally2)が追い掛ける展開となっていたが、最終日になってペースを上げてきたテンペスティーニが二人に迫ることになった。

 ルーマニア選手権で8度のタイトルの経験を持つテンペスティーニにとって、今回、新しいファビアRS Rally2での2戦目のラリーとなったが、彼はじわじわとペースをつかみ、トップから6.3秒差の3位で土曜日を終えて下り、最終日のオープニングSSでセスクスを捕らえて2位へと浮上することになった。

 それでも首位のヘイッキラは朝から連続してベストタイムを刻み、リードを10.1秒まで拡大、ERC初勝利へと近づいているかに見えた。

 しかし、ヘイッキラはSS10の高速セクションを走行中に左のフロントホイールのディスクが破損、タイヤが外れてしまう! さらに直後のクレストをそのままのスピードで飛んでタイヤのないマシンで着地したためサスペンションも完全に脱落して万事休すとなってしまった。

 ヘイッキラは昨年のERC開幕戦ラリー・デ・ファフェでも最終ステージのパンクで勝利を失っており、2年連続でERC初勝利の夢が砕け散ることになった。

「いつもこんな感じだ。何が起こったのかはわからない。まずリムが割れて、それから全部を失った。このような道ではいろいろなものにぶつかるものだが、ホイールがなくなったのは何にぶつかったからなのかわからない。慎重にドライビングしていたし、特別なことはないのに、なぜホイールを失うのか、まったく理解できない。僕は速いし、すべてがうまくいけばトップに立てることはわかったが、この結果はがっかりだ」とヘイッキラは首をうな垂れている。

 このステージでは、セスクスがトップタイムを奪い、2.1秒差でテンペスティーニを捕らえて首位に立つことになった。「前の2つのステージではフィーリングがよくなかったのでセーフティに走ったんだ。でも、調整したことですごく良くなった」とセスクスは語り、開幕戦の勝利へ意欲をみせることになった。

 最終ループになると、いっそう路面は荒れ、タイヤにも厳しいコンディションとなっていく。セスクスは6.8秒をリードして迎えた最後から2つ目のステージの7.8km地点の高速左コーナーで突然リヤのグリップを失ってスナップオーバーステア、コーナー脇の木のポストと岩に激突し、左リヤにダメージを負ってマシンを止めてしまった。

 セスクスがクラッシュしたことで、テンペスティーニが首位へと浮上、2位につけるディフェンディングチャンピオンのヘイデン・パッドン(ヒョンデi20 N Rally2)に7.7秒のリードを手にしてパワーステージに挑むことになった。

 テンペスティーニにとってパッドンは恐るべき存在だったが、パッドンもまたここまでタイヤの摩耗に苦しみ、なかなかペースを上げられず、タイヤ2本が完全に擦り切れたような状態で最終ステージをスタートするしかなかった。

 パッドンはスタートして間もなくタイヤがリムから脱落、彼は51秒をロスして2位から4位へと後退、常に堅実なペースでラリーをコントロールしてきたテンペスティーニがERC初勝利を飾ることになった。

「本当に、本当に素晴らしい気分だ」と29歳のテンペスティーニは語った。コドライバーは、同じくルーマニア出身のセルジウ・イトゥが務めた。「僕たちはすごくいいラリーができた。セルジウのペースノートも良く、彼は完璧だった。ERCでこのマシンに乗って初めてのラリーで勝利できたことは本当にうれしいし、とても幸せだ」

 パッドンの後退によってマティユー・フランセスキ(シュコダ・ファビアRS Rally2)が総合2位へと浮上、ERC初表彰台を獲得した。フランセスキはSS3の横転で10位まで後退したあと、4つのベストタイムを奪って追い上げており、彼は苦労のあとの感動的なゴールを喜んだ。

 地元ヒーローの地元ハンガリー出身のミクローシュ・ツォモシュ(シュコダ・ファビアRally2エボ)は、SS10で左リヤに大きな衝撃を受け、SS11では一時2輪走行となるも、フランチェスキから12.9秒遅れの総合3位でフィニッシュした。

 SS8でジャンクションをオーバーシュートして土手に乗り上げタイムを落としたエリック・ツァイス(シュコダ・ファビアRS Rally2)は、SS11でオーレンチームのミコワイ・マルツィック(シュコダ・ファビアRS Rally2)を抜き、総合5位となった。

 マルツィックは最終ステージでスローパンクに見舞われたものの、アンドレア・マベリーニ(シュコダ・ファビアRS Rally2)、ERC3チャンピオンのジョン・アームストロング(フォード・フィエスタRally2)、シモン・ワグナー(シュコダ・ファビアRS Rally2)を抑えてトップ6入りを果たした。

 前日のSS3でラジエーターにダメージを負ってストップした2022年ERCチャンピオンのエフレン・ヤレーナ(シュコダ・ファビアRS Rally2)は、第2レグをスタートできなかった。

 また、ERCジュニアではマックス・マクレー(プジョー208Rally4)が初優勝を飾っている。

 WRCの次のラウンドは、5月2日から4日にかけてスペインのグラン・カナリア島で開催される第48回ラリー・イズラス・カナリアスだ。今季の5つのターマックラウンドのうちの最初の一戦となる。